2021/03/04 粉飾決算の“対価”

金融庁は(2021年)2月26日、中小型液晶パネル大手で現在経営再建中のジャパンディスプレイ(東証一部)に対する21億6333万4996円の課徴金納付命令を決定したことを公表した。これは、ジャパンディスプレイが架空の期末在庫の計上による売上原価の過少計上、販売見込みのない在庫の評価損未計上による売上原価の過少計上、収益の認識基準を満たしていない売上の計上、固定資産の過大計上などの粉飾をしていたことが、2016年3月期第3四半期以降に提出した四半期報告書および有価証券報告書等の虚偽記載(金融商品取引法違反)にあたるとの判断によるもの(同社の粉飾について調査した第三者委員会の調査報告書(2020年4月公表)はこちら。また、同社の粉飾の内容と原因については【失敗学第75回】ジャパンディスプレイの事例 を参照)。

ジャパンディスプレイに対する約22億円の課徴金は、金融商品取引法に基づく課徴金としては、東芝の約73億円日産自動車の約24億円に次ぐ史上3番目に多い額となる。課徴金の額がここまで膨れ上がったのは、同社が2016年12月21日に450億円の新株予約権付社債の募集をしており、その際に提出した有価証券届出書に虚偽記載があったとして、450億円の4.5%に相当する20億2500万円が課徴金に加算されたことが主因。

ジャパンディスプレイは納付命令を受けた課徴金の全額を支払う予定としつつも、既に2020年3月期第4四半期において、不適切会計関連費用の“一部”として22億円を特別損失の「その他」に見積計上済みであり、2021年3月期決算の損益への影響は軽微であるとしている。

実は、ジャパンディスプレイの粉飾の“対価”はこれだけでは収まらない。まず・・・

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2021/03/04 粉飾決算の“対価”(会員限定)

金融庁は(2021年)2月26日、中小型液晶パネル大手で現在経営再建中のジャパンディスプレイ(東証一部)に対する21億6333万4996円の課徴金納付命令を決定したことを公表した。これは、ジャパンディスプレイが架空の期末在庫の計上による売上原価の過少計上、販売見込みのない在庫の評価損未計上による売上原価の過少計上、収益の認識基準を満たしていない売上の計上、固定資産の過大計上などの粉飾をしていたことが、2016年3月期第3四半期以降に提出した四半期報告書および有価証券報告書等の虚偽記載(金融商品取引法違反)にあたるとの判断によるもの(同社の粉飾について調査した第三者委員会の調査報告書(2020年4月公表)はこちら。また、同社の粉飾の内容と原因については【失敗学第75回】ジャパンディスプレイの事例 を参照)。

ジャパンディスプレイに対する約22億円の課徴金は、金融商品取引法に基づく課徴金としては、東芝の約73億円日産自動車の約24億円に次ぐ史上3番目に多い額となる。課徴金の額がここまで膨れ上がったのは、同社が2016年12月21日に450億円の新株予約権付社債の募集をしており、その際に提出した有価証券届出書に虚偽記載があったとして、450億円の4.5%に相当する20億2500万円が課徴金に加算されたことが主因。

ジャパンディスプレイは納付命令を受けた課徴金の全額を支払う予定としつつも、既に2020年3月期第4四半期において、不適切会計関連費用の“一部”として22億円を特別損失の「その他」に見積計上済みであり、2021年3月期決算の損益への影響は軽微であるとしている。

実は、ジャパンディスプレイの粉飾の“対価”はこれだけでは収まらない。まず同社は、2020年3月期第4四半期に不適切会計関連費用として約38億円を計上している(粉飾についての調査報告書が公表されたのは2019年12月24日)。同社が「不適切会計関連費用」の内訳を開示していないため、約38億と約22億円の差額の約16億円の内訳は不明だが、大半は不正調査に費やした費用および決算訂正に費やした費用と思われる。不正発覚後の調査・決算訂正には億単位、場合によっては十億単位のコストがかかることが改めて裏付けられた格好だ(2017年11月24日のニュース「不正発覚後の調査コスト、8億円計上のケースも」を参照)。

さらに同社は2020年7月10日、東京証券取引所(以下、東証)からも上場契約違約金6,240万円の徴求を受けている(ジャパンディスプレイのリリースはこちら)。これは、同社は2014年3月の東証一部上場に先立ち、粉飾していた決算書に基づき上場申請を行っており、東証に対する株主および投資者の信頼を毀損したことを理由とするもの。

極めつけが株主代表訴訟だ。東証から上場契約違約金の徴求を受けた6日後の7月16日には、過年度決算における不適切な会計処理により損害を被ったとして、同社の株主1名および当該株主が代表取締役を務める国内法人株主2名より、同社ならびに同社の取締役10名(元取締役も含む)に約38億円の損害賠償を請求する株主代表訴訟が提起されている(ジャパンディスプレイの2020年10月2日のリリース「当社及び当社元・現役員に対する損害賠償請求訴訟について」参照)。

そして、ジャパンディスプレイの粉飾決算は、「経営陣の指示により不正会計を行っていた」と会社に告発した経理・管理統括部長の自殺という痛ましい結末を招いたことも忘れてはならない。

粉飾決算はいずれ綻びが生じて必ず発覚する。その代償はあまりにも大きいことを、ジャパンディスプレイのケースは示していると言えよう。

2021/03/03 業務提携に向けた会合の内容が「重要事実」に該当する時点

株主と目線を合わせるという観点から、上場企業の取締役等が自社の株式を購入するケースは珍しくない。その場合に細心の注意を払う必要があるのが、インサイダー取引規制への抵触だ。仮にインサイダー取引規制上の「重要事実」を知りながら、その公表前に株式を購入すれば、インサイダー取引に該当することになる。もっとも、重要事実に該当するかどうか、判断が微妙なケースも少なくない。例えば、・・・

重要事実 : 投資判断に著しい影響を及ぼす会社情報

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2021/03/03 業務提携に向けた会合の内容が「重要事実」に該当する時点(会員限定)

株主と目線を合わせるという観点から、上場企業の取締役等が自社の株式を購入するケースは珍しくない。その場合に細心の注意を払う必要があるのが、インサイダー取引規制への抵触だ。仮にインサイダー取引規制上の「重要事実」を知りながら、その公表前に株式を購入すれば、インサイダー取引に該当することになる。もっとも、重要事実に該当するかどうか、判断が微妙なケースも少なくない。例えば、「業務提携」だ。

重要事実 : 投資判断に著しい影響を及ぼす会社情報

業務提携に至るまでには何段階かのステップを踏むのが通常であり、長い期間を要することもある。このプロセスの途中での株式の購入がインサイダー取引に該当するかどうかを巡り争われていたのが、東証マザーズに上場するモルフォの事例だ。金融庁は、モルフォの取締役が、自社とデンソー(東証1部)が業務提携を行うことを決定をしたという「重要事実」を知りながらその公表前に自社の株式を買い付けたとして、取締役に対し133万円の課徴金納付命令を課したところ、この処分を不服とした取締役が提訴、今年(2021年)1月26日には東京地裁で取締役(以下、原告)が勝訴する判決が下されている。この判決結果自体は一部新聞等でも報じられたところだが、このほど判決内容の詳細が当フォーラムの取材により判明した。

モルフォは画像処理技術の研究開発を手掛けており、その技術を車載機器に活かしたいデンソーは、共同研究を視野に同社との協議を開始した。両社が初めて打ち合わせの機会を持ったのが2015年6月15日である。モルフォ側の出席者には同社の代表取締役(同社の創業者であり、発行済み株式総数の約1割を保有する筆頭株主)も含まれていた。初打ち合わせを経て、両社は7月29日に秘密保持契約(NDA)を締結。8月4日の打合わせでは、デンソー側から「2〜3か月で終了する小規模のプロジェクトを複数行い、その結果を見てから技術的に共同開発が実現できるか否かを今年度末までに判断したい」との希望が伝えられた。

原告が自社の株式を購入したのが、それから約3週間後の8月24日および26日だ。原告は両日で合計400株の株式を買い付けている。その後、9月11日の打合わせでは、デンソーがモルフォに対し、出資および中長期的な協業を検討していることを伝えた。そして12月11日、モルフォはディープラーニングによる画像認識技術の車載機器への適用に関する基礎的研究などを内容とする業務提携、および第三者割当増資により、デンソーに対しモルフォの普通株式26万1,800株を割り当てる内容の資本提携を行うことを取締役会で決議し、リリースを出すに至った。

本裁判で最大の争点となったのは、金融商品取引法が「重要事実」の一つとして挙げる「業務上の提携」(同法166条2項1号ヨ、同法施行令28条1号)を「行うことについて決定をした」(同法166条2項1号柱書き)のが“いつ”なのかという点だ。上述のとおり、原告が自社の株式を購入した8月24日および26日の前には、①両社が秘密保持契約(NDA)を締結し(7月29日)、②デンソー側から「2〜3か月で終了する小規模のプロジェクトを複数行い、その結果を見てから技術的に共同開発が実現できるか否かを今年度末までに判断したい」との希望が伝えられた(8月4日)、という事実が生じていた。すなわち、NDAを締結し、共同開発の可否に向けた検討を開始した状態が金融商品取引法に規定される「業務上の提携」として「重要事実」に該当するかどうかが裁判の核心と言える。

この点について金融庁は、「最高責任者である代表取締役は、デンソーがモルフォの事業・経営方針と合致する相手先として適切な会社と考えたからこそ、本件提携に前向きな意向を示し、デンソーとの最初の面談である6月15日の打合せにわざわざ出席したのである。その後両者のやりとりは密になっていき、本件提携の核心部分である事項は、遅くとも平成27年8月4日までの時点において、具体的な検討や準備等が開始されていたといえる。」と指摘。これに対し原告は、「8月26日の打合せに係るモルフォ議事録によれば、デンソーにおいては、モルフォの画像処理技術をどのように使うかについてこれから社内で議論する程度の状況であった。8月26日の打合せの時点でさえ、デンソーは、モルフォの技術をどのように使うか決めていない状況だったのであるから、これより20日以上前の8月4日の打合せの時点で『業務上の提携』の準備・検討が行われ、合意したとはいえない。」と反論した。

両者の主張を踏まえ東京地裁は、判例(最高裁平成11年6月10日第一小法廷判決)に沿う形で、「業務上の提携」を「行うことについて決定をした」とは、「業務執行を決定する機関において、仕入れ・販売提携、生産提携、技術提携及び開発提携等、会社が他の企業と協力して一定の業務を遂行することの実現を意図して、『業務上の連携』又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされることが必要であり、『業務上の連携』の実現可能性があることが具体的に認められることは要しないものの、『業務上の連携』として一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度に具体的な内容を持つものでなければならない」とした。そのうえで、「8月4日の打合せではデンソーからモルフォに対して業務提携の規模や内容に関する話がされた形跡はないことなどを踏まえると、同日時点でモルフォにおいて、業務上の連携について一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容の決定がされたということはできない」との判断を示し、業務執行機関がデンソーと業務上の提携を行うことについての決定が「8月4日」に行われたとは認められないと結論付けている。

また、本裁判では、モルフォの代表取締役が「業務執行を決定する機関」に該当するか否かも争点となった。これは、金融商品取引法では、「重要事実」に該当する要件として、それが「業務執行を決定する機関」が決定した事項であることを求めているため(同法166条2項1号柱書き)。上述のとおり、モルフォとデンソーの業務提携および資本提携は、少なくとも形式的には「12月11日」の取締役会で決議されていることから、原告による8月24日および26日の株式購入がインサイダー取引に該当するためには、6月15日の初打合せに出席していた代表取締役が「業務執行を決定する機関」と言える必要がある。

この点について金融庁は、「代表取締役はモルフォの創業者であり、同社の設立以降、代表取締役を務めている。モルフォにおける代表取締役の立場、提携の検討や準備等の進め方、本件公表に至るまでの経緯を併せ考えれば、同社において代表取締役は、本件提携について実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことができる機関であったといえる。」と主張した。これに対し原告は、「原告が取締役に就任して以降、原告と代表取締役は、新規事業部門の立ち上げ、業務プロセスの大幅改善など、事業面の需要な業務方針については合議してモルフォの方針を決定していた。モルフォにおいて事業面の業務執行を決定するのは、代表取締役と原告の合議体であったというべきであり、代表取締役が『業務執行を決定する機関』に該当するとはいえない。」と反論した。

両者の主張を踏まえ東京地裁は、「代表取締役はモルフォの創業者であり、代表取締役を務めていたこと及び同社の発行済み株式総数の約1割を保有する筆頭株主であったことからすると、他の取締役と比較して意思決定に大きな影響力を有しているとし、本件業務提携において『業務執行を決定する機関』に該当する」との判断を示している。

裁判の勝敗としては、デンソーと業務上の提携を行うことについての決定が「8月4日」にが行われたとは認められないとされ、国(金融庁)が敗訴しているが、創業社長が「業務執行を決定する機関」とされた点は気になるところだ。これは、社内で絶対的な権限を有する者が会議に出席していた場合、そこでの決定事項はインサイダー取引規制上の「重要事実」に該当し得ることを示している。オーナー色の強い上場企業にあっては要注意だろう。

なお、国(金融庁)は東京地裁の判断を不服として控訴したことが確認されている。東京高裁が地裁の判断を踏襲するのか、注目される。

2021/03/02 大手メーカーで本格化する環境負荷低減に向けた動き

企業に対し環境への配慮を求める声は強まる一方だが、こうした中、人々が長年慣れ親しんできた・・・

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2021/03/02 大手メーカーで本格化する環境負荷低減に向けた動き(会員限定)

企業に対し環境への配慮を求める声は強まる一方だが、こうした中、人々が長年慣れ親しんできたペットボトルにも焦点が当たっている。背景にあるのは、プラチックごみ問題だ。

コカ・コーラは先月(2021年2月)中旬、植物をベースにした炭酸飲料(商品名:AdeZ)を「紙製ボトル」で今年第2四半期に販売することを発表した。まずはハンガリーのオンラインスーパーで2,000本を限定販売し、紙製ボトルの実用性や消費者の反応を探る。

紙製ボトルを使用する動きは他の大手メーカーにも広がっており、米国のカールスバーグ、ペプシで知られる米国大手飲料のペプシコ、ギネスビールで知られる英国の飲料大手のディアジオ、バランタインやシーバスリーガルなどで知られるフランスの飲料大手ペルノ・リカール、さらに飲料メーカーにとどまらず、英国の日用品・食品大手ユニリーバ、フランスの化粧大手ロレアルなども、紙製ボトルの開発に乗り出している。

このうちペルノ・リカールはコカ・コーラと同様、あくまで“試験的”に、同社のウォッカブランドであるアブソルート(Absolut)の炭酸飲料の紙製ボトルを 2,000本を英国とスウェーデンで販売することを明らかにしているが、ディアジオは200年もの歴史を持つ主力商品のジョニーウォーカーを2021年中に紙製ボトルで販売する。また、ペプシコやユニリーバも今年中に紙製ボトルの商品を発表する方向。こうした流れは、紙製ボトルへの移行が決して一過性の動きではないことを示していると言えよう。

もっとも、飲料用等としての紙製ボトルの本格的な開発はまだ始まったばかりであり、技術的な模索はまだまだ続くことになる。コカ・コーラ、カールスバーグ、ペルノ・リカール、ロレアルは、デンマークのスタートアップ企業「Paboco The Paper Bottle Company」と、ディアジオ、ペプシコ、ユニリーバは、ディアジオが英国の経営コンサルティング会社Pilot Liteと共同で設立した紙製ボトル開発のジョイント・ベンチャー「Pulplex」と紙製ボトルの開発を進めているが、このうち「Paboco The Paper Bottle Company」社の紙製ボトルは、液体の漏れを防ぐため、紙製の本体の内側には薄いプラスチックを張り付けている(ただし、プラスチック部分は、ボトル使用後、本体から剥がしてリサイクル可能)。また、ボトルのキャップにはプラスチックや金属が使われている。同社は、将来的には本体内側には生物由来の素材を、キャップには紙またはバイオ複合材を使い、一本まるごと紙としてリサイクルできるボトルを作ることを目指しているという。一方、「Pulplex」社の紙製ボトルにはプラスチックや金属は使われておらず、本体内側は樹脂でコーティングされている。

製造コストが安く、既にリサイクル技術が発達しているプラスチック製のペットボトルに紙製ボトルがプラスチックに取って代わることについては専門家から懐疑的な声も聞かれ、紙製ボトルは当面はプラスチックボトルを“補完”する存在にとどまることになろう。しかし、世界的な飲料メーカー等が続々と紙製ボトル製ボトルの導入に乗り出しているという事実は、飲料メーカー等にとどまらず、企業に対する環境負荷低減の要求がますます高まっている証と言える。経営陣には、環境負荷低減のための研究開発コスト等の増加を念頭に置いた事業計画の検討が求められよう。

2021/03/01 ペーパーレス化、リモートワーク普及に向けたボトルネックが解消へ

コロナ禍で「脱ハンコ」の流れが加速しており、この1年で電子契約書だけでなく稟議書などの社内文書にも電子印鑑を導入する企業が相当増えてきた(【役員会 Good&Bad発言集】押印手続きの見直し を参照)。国も2021年4月1日以後に提出する税務関係書類(一部()を除く)から押印を不要にしたり(国税庁ウェブサイトの「税務署窓口における押印の取扱いについて」を参照)、公認会計士の監査報告書の押印を廃止したりする(デジタル社会形成関係法律整備法の中で公認会計士法の改正が予定されている)などの制度改正に取り組んでおり、民間の脱ハンコを後押ししている。

 下記の書類は2021年4月1日以後も例外的に押印が必要とされる。
(1) 担保提供関係書類および物納手続関係書類のうち、実印の押印および印鑑証明書の添付を求めている書類
(2) 相続税および贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類

脱ハンコが順調に進展する一方で、脱ハンコと密接な関係にあるペーパーレス化はなかなか進んでいない。その理由の一つが・・・

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2021/03/01 ペーパーレス化、リモートワーク普及に向けたボトルネックが解消へ(会員限定)

コロナ禍で「脱ハンコ」の流れが加速しており、この1年で電子契約書だけでなく稟議書などの社内文書にも電子印鑑を導入する企業が相当増えてきた(【役員会 Good&Bad発言集】押印手続きの見直し を参照)。国も2021年4月1日以後に提出する税務関係書類(一部()を除く)から押印を不要にしたり(国税庁ウェブサイトの「税務署窓口における押印の取扱いについて」を参照)、公認会計士の監査報告書の押印を廃止したりする(デジタル社会形成関係法律整備法の中で公認会計士法の改正が予定されている)などの制度改正に取り組んでおり、民間の脱ハンコを後押ししている。

 下記の書類は2021年4月1日以後も例外的に押印が必要とされる。
(1) 担保提供関係書類および物納手続関係書類のうち、実印の押印および印鑑証明書の添付を求めている書類
(2) 相続税および贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類

脱ハンコが順調に進展する一方で、脱ハンコと密接な関係にあるペーパーレス化はなかなか進んでいない。その理由の一つが税務調査への対応だ。税務署職員は原則として原本を確認させるよう求めてくるため、会社としても税務調査に備え「紙」を保存せざるを得ない。そのためには、印刷やファイリングの手間、書庫や外部倉庫といった物理的なスペースの確保が不可欠となってくる。業務フローの中に「紙」が存在することは、業務遂行のために「紙」の保管場所に赴かざるを得ないことを意味し、リモートワーク普及の足かせにもなっている。

「国税関係書類(*1)の電子帳簿等保存制度(*2)」や「スキャナ保存制度(*3)」を利用すれば、「紙」の印刷や保存といったわずらわしさからは解放されるが、両制度は誰でも、いかなる場合でも利用できる制度にはなっていないのが現状だ。

*1 契約書、発注書、納品書、請求書など。
*2 国税関係帳簿書類の保存義務者は、国税関係帳簿の全部または一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、税務署長の承認を受けた場合には、記録の真実性および可視性等の確保に必要となる所定の要件の下で、その電磁的記録の備付けおよび保存をもってその(紙の)帳簿の備付けおよび保存に代えることができるという制度。
*3 取引の相手先から受け取った請求書等および自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類について、税務署長等の承認を受けた場合には、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められる制度。

まず、現行法上、両制度とも、利用するためには税務署長による事前承認が必須となる。

また、電子帳簿等保存制度は、同制度が求める検索機能や訂正削除履歴の記録機能を備えたシステムを使うことを条件としており、低コストのクラウド会計ソフト等では電子帳簿等保存制度の利用は認められない。

スキャナ保存制度にも様々な要件が課されている。「領収書」を例にとると、領収書を受領した本人がスキャンする場合は、領収書に自筆で署名したうえで、スマートフォン等を用いてスキャナ保存し、スキャンした結果(電子画像データ)と原本を照合のうえ、スキャンにより作成した電子画像データにタイムスタンプの付与を受けるまでのすべての手続きをおおむね3営業日以内に行わなければならない。さらに、税務調査でスキャンしたデータを検索しやすいよう、電子帳簿等保存制度と同様、データの検索可能条件が詳細に指定されており、その機能を満たすシステムを用いる必要がある。このほか、国税関係書類の作成または受領等にあたって必要とされる適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査、不正が起きた場合の再発防止策などを定めた社内規程の整備等をいう)の遵守も必須となっている。

タイムスタンプ : 自社が契約したタイムスタンプ事業者から 暗号を用いた「認定タイムスタンプ」を得ることにより、認定タイムスタンプを得た時刻以前に当該電子ファイルが確実に存在していたことと当該時刻以降に当該電子ファイルが改ざんされていないことを立証する仕組み。

以上のような両制度の利用のハードルの高さを嫌い、これまではその利用申請に及び腰となっていた企業が大半だった。

つまり、電子帳簿等保存制度やスキャナ保存制度の利用のハードルの高さがペーパーレス化の阻害要因となっていたわけだが、いよいよその時代も終わりを告げようとしている。というのも、現在国会で審議中の「所得税法等の一部を改正する法律案」が可決されれば、「2022年1月1日以降」は電子帳簿等保存制度やスキャナ保存制度が劇的に使いやすくなるからだ。まず、電子帳簿等保存制度やスキャナ保存制度の利用にあたって大きな障害となっていた「税務署長による承認」という要件が廃止される。現行制度では公益社団法人日本文書情報マネジメント協会がお墨付きを与えた電子帳簿ソフトであれば、電子帳簿等保存制度の利用承認申請を簡略化することができるが、そもそも税務署長による承認自体が不要となるため、このお墨付きも不要となる。つまり、新制度の要件を満たすシステム()を使用する限り、何の申請もすることなく、電子帳簿保存を導入しようと決めたその時に、紙保存からの切り替えが可能というわけだ。

 モニター、説明書の備付け等の最低限の要件を満たす電子帳簿であればよく、訂正履歴が残らない格安のクラウド会計ソフトも対象になる。

また、スキャナ保存してからタイムスタンプを付与するまでの期間が現行の「3日以内」から「最長約2か月以内」に延長される()とともに、領収書等の受領者等がスキャンを行う際に求められていた国税関係書類への自署も不要となる。このほか、電磁的記録について訂正または削除を行った事実および内容を確認することができるシステム(そもそも訂正または削除ができないようになっているシステムを含む)にその電磁的記録を保存することをもって、タイムスタンプの付与に代えることができることとなる。さらに、適正事務処理要件も廃止され、領収書等の受領者等以外の者が電子画像データを原本と照合する定期検査も不要となる。つまり、領収書などの原本は、スキャン後直ちに廃棄することが可能になるわけだ。

EDIなどの電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に係るタイムスタンプの付与期間も同様に「3日以内」から「最長約2か月以内」に延長される。

EDI : Electronic Data Interchangeの略で、「電子データ交換」と訳される。EDIは主に企業間で利用され、受発注や納品の際に、紙の帳票や請求書は発行せず、インターネット等を通じて電子データをやりとりする。電子データは、企業間で標準化された書式を用いる。

現行のスキャナ保存制度が求める検索要件も簡素化され、検索項目が取引等の年月日、取引金額および取引先に限定される。さらに、国税局や税務署の職員の質問検査権の行使に応じて納税者(企業)側がスキャンした結果の電子データのダウンロードを行うことを条件に、範囲指定および項目を組み合わせて設定できる検索機能の確保が不要となる。要するに、日付や金額等の範囲指定・組み合わせ(例えば、「●月●日~■月■日」の「▲円以上」の「交際費」といった検索範囲を組み合わせて指定した検索)ができる検索機能を備えているとの要件は課さないということだ。

このように2022年1月1日以降は、電子帳簿等保存制度やスキャナ保存制度の利用のハードルが劇的に下がることにより、ペーパーレス化が進展し、経理部門をはじめとする社内全体の事務効率の向上が期待される。その結果、テレワークの導入が一層進むことも予想される。経営陣は、2022年に向け、新制度を前提にした事務フローの見直しに着手すべきだろう。

2021/02/28 【2021年3月の課題】独立社外取締役1/3又は過半数の選任に向けたロードマップ

2021年3月の課題

今春に改訂されるコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場企業に対し、独立社外取締役の3分の1以上の選任、さらに、経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、「過半数」の選任を検討することが促される方向となっています(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(5))。
こうした中、独立社外取締役を確保する難易度は高まっており、一部の著名な候補者を巡っては”争奪戦”も起きている状況です。
社外取締役の選任までに1年程度を要するケースは珍しくなく、残された時間はそれほど多くありません。
一方で、独立社外取締役の割合を高めるために、社内取締役の人数を減らすことを検討している企業もあります。
社外取締役の割合に関する改訂CGコードの適用開始が想定される新市場への移行後(2022年4月4日以降)の最初の定時株主総会までに独立社外取締役の割合を高めるためにとり得る自社としての対応を考えてみて下さ
い。

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2021/02/27 【役員会 Good&Bad発言集】経営陣幹部の選解任の方針と手続

JASDAQ上場企業のJ社(監査役会設置会社。執行役員制度を採用)は、2022年4月4日から実施される東京証券取引所における新市場への移行に伴い、スタンダード市場に移行する予定です。同社はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の基本原則のみ適用されていますが、スタンダード市場に移行したのちは原則および補充原則も適用されることになるため、CGコードへの対応方針(原則・補充原則のそれぞれについてコンプライするのか、それともエクスプレインするのかの方針の決定、コンプライする場合は何が足りないのかなどの検討)を検討中です。【原則3-1.情報開示の充実】の(ⅳ)「取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続」の解釈に関する次の3人の発言のうち誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「『経営陣幹部』は取締役・監査役を指していると思いますので、『経営陣幹部の選解任』と『取締役・監査役候補の指名』は同じことを指しているということですよね。」

取締役B:「『経営陣幹部』の定義は会社法か取引所規則に書いてあったかと思います。確か、執行役員も含む概念だったかと思います。『選解任』と『指名』は前者が解任を含み、後者は含まないという違いだと思います。『方針』と『手続』は同じことを指しているように見えますね。」

取締役C:「『経営陣幹部』は各社が実態に応じて定義するのだと思います。当社の『経営陣幹部』はCEOやCFOなどの『CxO』であると定義してはいかがでしょうか。また、『方針』は選解任・指名の要件であり、『手続』は選解任・指名にあたっての具体的なプロセスを指しているのではないでしょうか。」

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