既報のとおり、議決権行使助言会社最大手のISSは2020年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定に向けた「グローバル・サーベイ(ISS Opens Global Policy Survey for 2020)」を実施、2020年版の日本向けポリシーについては、(1)株式持ち合い、(2)ROE基準の2つに関連した論点を提示し、機関投資家や公的機関などからオープン・コメントを募集していたが(2019年7月29日のニュース『ISS、株式持合を「日本で最も深刻なガバナンスの問題」と指摘』参照)、9月11日、その調査結果が公表された(株式持ち合いについては17ページ~、ROE基準については25ページ~参照)。それぞれについて調査結果の内容をお伝えする。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)。実務上、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。
(1)株式持ち合い(株式持ち合いで縛られた不適切な資本配分=Misallocation of Capital Tied Up in Cross-Shareholdings)
ISSは株式持ち合いが資産の相当割合に達する企業の経営トップの選任議案に反対するべきか、その場合の「相当割合」とは株主資本の何%が適当か、意見を求めていた。
Misallocation : 不適正配分
新基準の導入に対しては機関投資家の62%、投資家以外(公的機関など)の54%が賛成した。株式持ち合いを日本の資本市場における最も深刻な問題(one of the most serious corporate governance problems in Japan)と捉えるISSの方針に、回答者の過半数が同調したことになる。問題視する割合は「株主資本の10%」が最も多くなっている。
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投資家 |
投資家以外 |
| 株主資本の5% |
31% |
32% |
| 株主資本の10% |
32% |
42% |
| 株主資本の20% |
16% |
13% |
| 場合による/その他 |
21% |
13% |
上記調査結果を踏まえると、あくまでも当フォーラムの推測ではあるが、「政策保有目的で保有していると判断されたる株式が自己資本の5%を超える場合、経営トップである取締役の選任議案に原則として反対を推奨する」といった基準が新設される可能性は高い。もっとも、こうした基準が2020年版のポリシーから適用されるとは限らず、猶予期間(1年など)や除外規定(ROEが一定水準をクリアしているなど)を伴うことも想定される。
(2)ROE基準(ROEと指名委員会等設置会社=ROE and Three-Committee System Companies)
ISSは今回のサーベイで、過去5年間の平均および直近期のROEが5%未満である企業の経営トップに反対するという基準を、指名委員会等設置会社には適用しないことを問うていた。
指名委員会等設置会社を“特別扱い”することについて、投資家の7割近く、投資家以外の9割超が賛成の意思表示をした。ただし、下表のとおりいずれも大部分の回答者が、適用除外に際しては一定の条件を付すことを求めている。最も支持を得た条件は「過半数が独立社外取締役」であり、次いで「指名委員の全員が独立社外取締役」と「指名委員長が独立社外取締役」が拮抗している。
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投資家 |
投資家以外 |
| 無条件で適用除外 |
11% |
33% |
| 条件付きで適用除外 |
56% |
60% |
| 適用除外しない |
33% |
7% |
これも当フォーラムの推測ではあるが、2020年版のISS日本向けポリシーにおけるROE基準には、「株主総会後の取締役会の過半数が独立社外取締役である場合を除く」といった注記が付される可能性が高いだろう。業績不振企業を中心に、指名委員会等設置会社に移行するインセンティブとなることも予想される。