2019/03/27 顧客情報にも匹敵する“健康情報”の適正な管理が来月1日から義務化

個人情報を漏洩させてしまった企業は、ブランドの失墜、社会からの非難や顧客の離反など様々なダメージを受けることになる。個人情報の漏洩というと、一般的には「顧客名簿」の流出などが思い浮かぶところだが、来月(2019年4月)1日から新たに“健康情報”を個人情報として保護することが求められる。

政府が進める働き方改革の一環で労働安全衛生法が改正され、いよいよ来月1日から施行されるが、この改正労働安全衛生法で、「時間外労働の上限規制」の導入、「産業医の権限強化」などとともに事業者に求められているのが、「労働者の心身の状態に関する情報」(本稿ではこれを“健康情報”と呼ぶ)の適正な管理だ。

労働安全衛生法 : 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律(昭和47年10月1日施行)。労働者の安全と衛生についての基準が定められており、事業者にはこれらの基準を守ることや、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにすることなどが求められる。
時間外労働の上限規制 : 原則として、時間外労働は月45時間、年間360時間を超えてはならない。臨時的な特別な事情がある場合は年720時間まで許容されるものの、単月で100時間を超えてはならない。また、45時間を超えていいのは年に6回までとなる。さらに、複数月の平均を80時間以下としなければならない。時間外労働が月80時間(従来は100時間)を超えた場合、産業医による面接指導の対象となる。
産業医の権限強化 : 事業者は、長時間労働者の労働時間の状況や業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を産業医に提供するとともに、産業医から職場環境の改善等について勧告を受けた場合、これを尊重し、勧告の内容を事業場内の衛生委員会に報告しなければならない。

健康情報のほとんどが個人情報保護法でいう「要配慮個人情報」に該当する情報であることから、万が一これが流出すれば、個人情報保護法上の罰則(違反した従業員に対しては最大6月の懲役または30万円の罰金、会社に対しては最大30万円の罰金)が科されるほか、被害者となった従業員に対する損害賠償が必要になる場合もあろう。個人情報保護法上の罰金や従業員一人当たりに対する損害賠償金は大きな金額ではないかもしれないが、仮に社員数が多い企業で大量の健康情報が流出したとなれば、損害賠償額も巨額に上る可能性があるほか、冒頭で述べたようなブランドの失墜などの社会的ペナルティは避けられない。

要配慮個人情報 : 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等が該当し、あらかじめ本人の同意を得ないで取得することが禁止されている。

では、「健康情報の適正な管理」とは具体的に何をすればよいのだろうか。・・・

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2019/03/27 顧客情報にも匹敵する“健康情報”の適正な管理が来月1日から義務化(会員限定)

個人情報を漏洩させてしまった企業は、ブランドの失墜、社会からの非難や顧客の離反など様々なダメージを受けることになる。個人情報の漏洩というと、一般的には「顧客名簿」の流出などが思い浮かぶところだが、来月(2019年4月)1日から新たに“健康情報”を個人情報として保護することが求められる。

政府が進める働き方改革の一環で労働安全衛生法が改正され、いよいよ来月1日から施行されるが、この改正労働安全衛生法で、「時間外労働の上限規制」の導入、「産業医の権限強化」などとともに事業者に求められているのが、「労働者の心身の状態に関する情報」(本稿ではこれを“健康情報”と呼ぶ)の適正な管理だ。

労働安全衛生法 : 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律(昭和47年10月1日施行)。労働者の安全と衛生についての基準が定められており、事業者にはこれらの基準を守ることや、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにすることなどが求められる。
時間外労働の上限規制 : 原則として、時間外労働は月45時間、年間360時間を超えてはならない。臨時的な特別な事情がある場合は年720時間まで許容されるものの、単月で100時間を超えてはならない。また、45時間を超えていいのは年に6回までとなる。さらに、複数月の平均を80時間以下としなければならない。時間外労働が月80時間(従来は100時間)を超えた場合、産業医による面接指導の対象となる。
産業医の権限強化 : 事業者は、長時間労働者の労働時間の状況や業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を産業医に提供するとともに、産業医から職場環境の改善等について勧告を受けた場合、これを尊重し、勧告の内容を事業場内の衛生委員会に報告しなければならない。

健康情報のほとんどが個人情報保護法でいう「要配慮個人情報」に該当する情報であることから、万が一これが流出すれば、個人情報保護法上の罰則(違反した従業員に対しては最大6月の懲役または30万円の罰金、会社に対しては最大30万円の罰金)が科されるほか、被害者となった従業員に対する損害賠償が必要になる場合もあろう。個人情報保護法上の罰金や従業員一人当たりに対する損害賠償金は大きな金額ではないかもしれないが、仮に社員数が多い企業で大量の健康情報が流出したとなれば、損害賠償額も巨額に上る可能性があるほか、冒頭で述べたようなブランドの失墜などの社会的ペナルティは避けられない。

要配慮個人情報 : 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等が該当し、あらかじめ本人の同意を得ないで取得することが禁止されている。

では、「健康情報の適正な管理」とは具体的に何をすればよいのだろうか。改正労働安全衛生法では、事業者は健康情報を労働者の健康確保に必要な範囲内で収集し、その目的の範囲内で保管・使用しなければならず(同法104条1項)、健康情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない(同2項)と規定している。また、厚生労働省は昨年9月に「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」を公表している。同指針では、上述のとおり健康情報のほとんどが個人情報保護法にいう「要配慮個人情報」に該当する機微な情報(センシティブ情報)であることから、各事業者は「健康情報取扱規程」を策定し、取扱いを明確化することが必要であるとしたうえで、取扱規程の内容・策定方法・運用等にまで踏み込んで解説している。また、労働者が健康情報の収集・使用等に同意しないことや健康情報の内容を理由として労働者に不利益な取り扱いをすること(解雇、雇い止め退職勧奨、配置転換、職位変更等)も禁じている。

雇い止め : 有期雇用契約を更新しないこと
退職勧奨 : 会社が従業員を退職させるために退職を勧めること。最終的に会社を退職するかどうかの判断は、労働者が判断するため、「解雇」とは異なる。

同指針で示されている健康情報の具体的な取扱いは下記のとおり。
(1)法令に基づき事業者が直接取り扱えるもの(本人の同意は不要)
 その目的の達成に必要な範囲を踏まえて取り扱う
 例)健康診断の受診・未受診の情報、面接指導の申し出の有無等
(2)本人の同意は不要だが取扱規程により適正に運用することが適当であるもの
 事業場の状況に応じて、情報を取り扱う者を制限する、情報を加工する等の措置を定め、また、本人に対し丁寧な説明を行う等、納得性を高める措置を講じるのが望ましい。
 例)健康診断の結果(法定項目)、再検査の結果(法定項目と同一のもの)等
(3)予め本人の同意を得ることが必要であるもの
 事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要がある
 例)健康診断(法定外の項目)・保健指導・精密検査・がん検診の結果、医師の意見書等

「改正労働安全衛生法」および「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」の施行日である来月1日以降、同指針が行政指導の根拠となるのは間違いない。まだ健康情報取扱規程の策定等、健康情報の管理体制が十分に整備できていないという企業は、健康情報の流出が顧客情報の流出にも匹敵し得るインパクトを持つことを認識したうえで、早急に取り組むべきだろう。

※3月28日、厚生労働省から「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」が公表されました。「取扱規程の雛型」も掲載されているなど、健康情報取扱規程を策定するうえで参考になる内容となっておりますのでご参照ください。

2019/03/26 従業員の不正行為で揺れる企業の代表訴訟が和解、D&O保険の保障対象に(会員限定)

欧米の大手金融機関の多くが投資銀行部門に力を入れる中、伝統的な商業銀行のスタンスを崩さないまま、長らく米国金融界トップの時価総額を誇ってきたのが、ウェルズ・ファーゴだ。しかし、サブプライムローンに関連して従業員が顧客の同意なしに口座を開設するなど不祥事が相次いで発覚して以降、同社のコーポレートガバナンス体制は厳しい批判にさらされてる。今月(2019年3月)12日には、同社のCEOが米国議会下院の公聴会に呼ばれ、実に4時間にもわたって数々の不祥事の温床となった同社のコーポレートガバナンス体制について、与野党を問わず徹底的に問い詰められている。公聴会では同社の規模が大きすぎるがゆえに従業員の管理が十分にできていない旨の指摘があり、同社の規模の縮小や現経営陣の解任にまで話が及んでいる。

サブプライムローン : 信用力の低い個人向け住宅融資

もっとも、公聴会に先立ち、株主代表訴訟を提起されていたウェルズ・ファーゴの経営陣は株主との間で2億4,000万ドルの和解金を会社に支払うことで合意している。この株主代表訴訟は、経営陣が、従業員の一部が顧客の同意なしに口座を開設しているという事実を認識していたか、認識しながら意図的に無視していたことが問題視されたもので、現CEOや前CEOを含む20人の経営陣を対象に提訴された。2億4,000万ドルという和解金はこれまでの株主代表訴訟の中でも最高額と思われるが、注目されるのは、当該和解金がD&O保険(会社役員賠償責任保険)によって賄われる見込みとなっているということだ。

D&O保険(会社役員賠償責任保険) : 役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずる損害を塡補する保険。第三者訴訟で役員が損害賠償責任を負った場合に支払われる「普通保険約款」と、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合に支払われる「株主代表訴訟補償特約(自動で付与される)」がある。

ここで誤解しないようにしたいのは、役員が不正を認識しながら行った行為については、どこの保険会社であっても、D&O保険の支払い対象にはならないということだ。
本件においてD&O保険が支払われることとなった経緯は不明だが、同様のケースにおいてD&O保険が支払われるパターンを一般論としてみてみよう。

まず、不正を認識していたのが一部の役員のみで、残りの役員は不正の存在に気づいていなかったケースだ。不正を認識していたかどうかは各役員個別に判断されることになるため、不正を認識していない役員が“巻き添え”的に株主代表訴訟に巻き込まれた場合、当該役員はD&O保険の補償対象となる可能性がある。

あるいは、より単純なケースも想定される。「不正を認識していた」という株主の主張に対し、当然ながら、役員は「認識していなかった」と反論することになる。両者の主張が対立する中で「不正を認識していた」という証拠が出てこなければ、結局両者が和解し、保険金が支払われるということは十分にあり得る。ウェルズ・ファーゴの一件も、保険金が支払われることとなった以上、同様の展開を辿った可能性はあろう。

いずれにせよ、CEOが議会に呼ばれるという事態に至りながらも保険金が支払われることとなったという点、日本企業の役員にとっても参考になる事例と言えそうだ。

2019/03/25 取締役会の国際性不足をエクスプレインしていた企業の海外関連会社で不正

東証が(2019年)2月19日に公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2018年12月末日時点)によると、【原則4-11.取締役・監査役会の実効性確保のための前提条件】コンプライ率は東証一部上場企業で69.9%と、2017年7月比でマイナス27.0ポイント、同じく東証二部上場企業では64.5%でマイナス30.3ポイントと、大幅に低下している(4ページ参照)。これは、昨年(2018年)6月に実施されたコーポレートガバナンス・コードの改訂により、本原則が取締役会に求めている「多様性」の前に「ジェンダーや国際性の面を含む」との文言が付されたことを受け、主に女性取締役を選任していない上場企業の多くがエクスプレインに転じたことによる。

エクスプレインした企業の中でその内容が特徴的なのが・・・

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2019/03/25 取締役会の国際性不足をエクスプレインしていた企業の海外関連会社で不正(会員限定)

東証が(2019年)2月19日に公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2018年12月末日時点)によると、【原則4-11.取締役・監査役会の実効性確保のための前提条件】コンプライ率は東証一部上場企業で69.9%と、2017年7月比でマイナス27.0ポイント、同じく東証二部上場企業では64.5%でマイナス30.3ポイントと、大幅に低下している(4ページ参照)。これは、昨年(2018年)6月に実施されたコーポレートガバナンス・コードの改訂により、本原則が取締役会に求めている「多様性」の前に「ジェンダーや国際性の面を含む」との文言が付されたことを受け、主に女性取締役を選任していない上場企業の多くがエクスプレインに転じたことによる。

エクスプレインした企業の中でその内容が特徴的なのが大和ハウス工業だ。同社は既に女性の社外取締役を選任済みだが、下記のとおり、ジェンダーではなく「国際性」の観点から同原則をエクスプレインしている(同社のコーポレートガバナンス報告書はこちら)。

当社は、取締役会を専門知識や経験などのバックグラウンドが異なる多様な取締役で構成することを基本としており、社外取締役3名の内1名を女性としておりますが、現時点におきましては、国際性の面を十分に考慮したと言えるだけの構成にはなっておりません。今後、取締役会の実効性評価の結果や経営戦略の観点も鑑み、ジェンダーだけではなく国際性の面も含む多様な取締役を選任できるよう努めてまいります。

同社の2018年3月期の有価証券報告書における【役員の状況】を確認すると、取締役19名のうち社内取締役が16名で社外取締役は3名、男性は18名と圧倒的多数を占めるものの、上述のとおり女性が1名いる。一方、国籍については、氏名から判断する限り全てが日本人となっているが、海外事業の経験者として、代表取締役社長COOの芳井氏、同専務執行役員の土田氏がおり、また社外取締役の木村氏は外資が経営権を握る日興コーディアル証券の元会長である。このように、女性取締役がおり、かつ国際経験豊富な取締役もいることを以って、同社が原則4-11を「コンプライ」しているとしたとしても決して不自然ではない。

このように、一定の国際性を備えた取締役会を擁する同社だが、(2019年)3月13日付で「中華人民共和国の関連会社における不正行為に関するお知らせ」と題するリリースを公表した。持分法適用会社の合弁会社である大連大和中盛房地産有限公司において、合弁相手から派遣されている役職員3名によって不正に会社資金が引き出され、全額回収できない場合の被害総額は約234億円、大和ハウス工業の持分法投資損失は約117億円に達するという。

持分法 : 投資先の財政状態に変動があれば、その持分相当額だけ関係会社株式の価値を増減させるという連結手法。通常の連結決算(フル連結)と異なり、一行連結ともいわれる。関連会社や非連結子会社に適用する。
持分法投資損失 : 持分法適用会社で生じた最終損失に持分比率を乗じた額

リリースでは第三者委員会を設置して事件の解明と再発防止策の検討を行うとともに、「リスク管理委員会」の機能強化を打ち出している。同委員会は従来、国内グループ会社を対象にリスクマネジメント活動を推進してきたが、海外グループ会社については必ずしも対応していなかった模様。同社は今後について、「海外のグループ会社においても平時のリスクマネジメントに加え、有事の際の危機管理にも対応させ、適宜、リスク管理委員会の事務局である弊社法務部に報告する体制を構築します」としている。

大連大和中盛房地産有限公司は持分法適用会社とはいえ、大和ハウス工業による持分比率は83.65%にも達しており、連結業績に対する影響度を勘案すると、今回の一件が起きた背景にはリスクマネジメントに不備があったと言わざるを得ない。適切な内部統制システムを構築していなかったという面で、同社取締役会は責任を免れないだろう。一方で、改訂コーポレートガバナンス・コードに基づくコーポレートガバナンス報告書において「自社の取締役会は国際性が欠けている」旨を説明していたことは、結果的に正しい認識だったとも言える。その意味では、取締役会の機能向上も含め、同社においては今後実効的な再発予防策の構築が期待できそうだ。

大連大和中盛房地産有限公司は持分法適用会社とはいえ、大和ハウス工業による持分比率は83.65%にも達しており、連結業績に対する影響度を勘案すると、今回の一件が起きた背景にはリスクマネジメントに不備があったと言わざるを得ない。適切な内部統制システムを構築していなかったという面で、同社取締役会は責任を免れないだろう。一方で、改訂コーポレートガバナンス・コードに基づくコーポレートガバナンス報告書において「自社の取締役会は国際性が欠けている」旨をエクスプレインしていたことは、結果的に正しい認識だったとも言える。その意味では、取締役会の機能向上も含め、同社においては今後実効的な再発予防策の実施が期待できそうだ。

2019/03/22 金融庁が「好事例集」と「開示原則」公表、記述情報充実に向けた環境整う(会員限定)

有価証券報告書(以下、有報)は、簡素化が進んだ決算短信と異なり情報量が豊富で、かつ、決算情報には監査人の監査意見も付されることからその信頼性も高い。このため、有報を投資判断の際の“最重要資料”の一つに位置付ける投資家は少なくない。それだけに有報の信頼性の確保・維持は投資家保護の観点から必須となっており、それを実現すべく、金融庁は毎年「有報レビュー()」を実施している。

 有報レビューでは、下記の3種類の審査が行われる。
・過年度の有報レビューの審査結果を踏まえて今期重点的に行う審査(重点テーマ審査)
・当該年度において新たに改正された開示事項に対して行う審査(法令改正関係審査)
・適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して行う審査(情報等活用審査)

昨年(2018年)は1月に開示府令が改正され、2018年3月期の有報から【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】や【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の開示内容の充実が図られている(2018年1月26日のニュース『新しい有報では「経営者の視点」への注目必至』参照)が、これに関する有報レビュー(法令改正関係審査)の結果、有報提出会社に対して次のような指摘が行われていたことが分かった(平成30年度有報レビューの「審査結果」から抜粋)。

(1) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等があるにもかかわらず、その内容が記載されていない事例
(2) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等があるにもかかわらず、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして経営者が経営成績等をどのように分析・検討しているか(例えば、経営成績等の達成度合いや必要な対応)を全く記載していない、あるいは一部の指標についてのみ記載している事例
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報(例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかなど)について、キャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したもののほかに、当該事項に関する記載がない事例

指摘事項のうち(1)と(2)では、中期経営計画などで経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(いわゆるKPI)を開示しているにもかかわらず、有報でKPIに触れていない企業がターゲットになった模様。また、(3)では、資本の財源及び資金の流動性に関する情報として、いまだに従来型のキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものしか開示していない企業が審査でやり玉に挙げられた格好だ。これらの指摘を受けた企業は、訂正報告書の提出や次年度以降の有報で指摘事項への対応が求められる。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

こういった“開示後進企業”にとって参考になるのが、金融庁が(2019年)3月19日に公表した「記述情報の開示の好事例集」(以下、好事例集)だ。これは上場企業各社の有報の記述情報の中から他社の参考になると思われるもの(ベストプラクティス)をピックアップした開示事例集であり、いわば記述情報の“模範解答”と言える。好事例集には、有報における開示事例に加え、統合報告書などの任意の開示書類における開⽰事例のうち有報の記述情報としても参考になりうるものも含まれている。

好事例集では、それぞれの開示事例に、金融庁がベストプラクティスとして選定した理由が付されている。金融庁が有報における記述情報のベストプラクティスとして選定した企業名と選定理由は下表のとおり。

項目 企業名 ベストプラクティスとして選定した理由(「好事例として着目したポイント」をもとに当フォーラムが一部加筆)
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 三井物産 ・ 「➁中期経営・計画の進捗状況」において、財務KPIも含め重点施策の進捗状況をセグメント単位で記載
・記述情報に加え、図を用いて分かりやすく記載
・「(2)経営環境」において、事業全体の経営環境に加え、セグメントごとの経営環境を記載
・「(3)2019年3⽉期における取組み」において、経営⽅針・経営戦略等を、認識した経営環境と関連付けて記載
・業績予想を数値で提示するとともに、「②2019年3⽉期連結業績予想における前提条件」において、その重要な仮定について、前提を示しつつ、実績が仮定と乖離した場合に当期利益に与える影響を記載
・経営者がどのような考えで「重要な指標」を設定しているかについて記載
ANAホールディングス ・「(2)➀戦略の全体像」において、財務KPI(売上高と営業利益)を記載
・市場の状況等の経営環境を踏まえて経営方針・経営戦略等を記載
・財務情報で開示しているセグメント情報の単位よりも詳細な経営方針・経営戦略等の説明に適した単位(「FSC事業」、「LCC事業」等)で記載
・対処すべき課題と経営方針・経営戦略等の関連性について、記述情報に加え図を用いて分かりやすく記載
・経営方針・経営戦略等の具体的な内容を記載

FSC事業 : LCCのようなサービスの簡素化をしない、従来型の航空機運行事業。フルサービスキャリアの略。

キリンホールディングス ・市場の状況等の経営環境に関連付けて対処すべき課題を記載
・対処すべき課題を解決するための経営方針・経営戦略等を記載
味の素 ・記述情報に加えて図を用いて分かりやすく記載
・経営者がどのような考えで財務指標を設定しているかについて記載
・財務指標(事業利益、事業利益率、ROEROAEPS成長率、海外売上成長率)の達成状況を時系列に分かりやすく記載
・セグメント単位の経営成績等の記載に加え、各セグメントの収益状況を記載
・業績の振り返りについて、記述情報に加え図を用いて分かりやすく記載

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)。実務上、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産))。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
EPS : 1株当たり当期純利益

日本航空 ・経営方針・経営戦略等と関連付けてKPIを記載
・財務KPIに加え、経営者が重視している非財務KPI(航空事故件数、重大インシデント件数、顧客満足度等)についても記載
事業等のリスク 三菱商事 ・エネルギー資源や金属資源における価格変動リスクについて、価格変動が損益に与える影響を示しつつ具体的に記載
・ 「➅ 重要な投資案件に関するリスク」において、個々の重要な投資案件の潜在的なリスクを具体的に分かりやすく記載
ソニー ・経営戦略に関連する潜在的なリスクを具体的に分かりやすく記載
日本郵船 ・安全航行のための人員確保など、経営課題に対する対応が十分に行われなかった場合のリスクについて、過去のリーマン・ショックの実例も踏まえ、具体的に記載
ANAホールディングス ・航空機の納入遅延や発着枠の割当て数といった経営戦略に影響を与える外部要因に基づくリスクをそれぞれ具体的に記載
・原油価格変動によるリスクや運航リスクについてリスク内容を具体的に記載するとともに、当該リスクへの対応策も記載
日本航空 ・整備業者や空港職員のアウトソーシングやアライアンスといった経営戦略上のリスクについて、分かりやすく記載
・市況変動に関するリスクを、その性質ごとに「燃油価格の変動に関わるリスク」「為替変動に関わるリスク」「資金・金融市場に関わるリスク」の3つに分類して、分かりやすく具体的に記載
・燃料価格の変動および為替変動に関するリスクへの対応策について具体的に記載
楽天 ・事業等のリスクを性質ごとに分類して分かりやすく記載
・各サービス固有の事業等のリスクをサービスごとに分かりやすく記載
・「直販型のサービス」について、事業等のリスクが顕在化した場合に財務諸表のどの勘定科目に影響が生じ得るか、具体的に記載(例えば「商品については、・・・(中略)・・・商品価格が大きく下落する場合は、棚卸資産として計上されている商品の評価損処理等を行う可能性があります。」)
日本たばこ産業 ・事業等のリスクを性質ごとに分類して分かりやすく記載
・事業等のリスクが顕在化した場合の影響を数値(のれんおよび無形資産の連結総資産に占める割合)も用いて具体的に分かりやすく記載
・経営戦略に関連する潜在的なリスクを具体的に分かりやすく記載
・事業に関する規制の内容および規制の改正状況について具体的に記載するとともに、規制が経営成績に与える影響を記載
三井化学 ・有報提出日(2018年6月26日)直前に生じた事象(2018年6月21日に発生した同社の大阪工場火災事故)について具体的に記載
住友化学 ・重要な海外投資案件に係る潜在的なリスクを具体的に分かりやすく記載し、当該リスクへの対応策についても分かりやすく記載
三井物産 ・経営戦略に関連する潜在的なリスクを具体的に分かりやすく記載
・財務諸表に影響を及ぼす可能性がある気候変動などの環境リスクを具体的に分かりやすく記載
MD&Aに共通する事項 花王 ・財務情報におけるセグメント単位に加え、経営⽅針・経営戦略等の説明に適した単位(「化粧品」、「スキンケア・ヘアケア製品」等、より詳細な事業別セグメント情報を所在地別に分解)で記載
・為替変動の影響を除いた実質数値(実質増減率)について、前期との期間比較分析を実施
丸井グループ ・「ⅲ. 具体的な取り組み」において、脅威となる経営環境の変化に対する経営方針・経営戦略等をセグメント単位で記載
・記述情報に加え図を用いて分かりやすく記載
トヨタ自動車 ・営業利益の主な増減要因を記載
・当期の業績について、販売台数や販売シェアの情報も用いて分かりやすく記載
・財務情報におけるセグメント単位に加え、経営⽅針・経営戦略等の説明に適した単位(所在地別セグメント)で記載
・セグメント単位の経営環境および経営成績に影響を与えるリスク要因を記載
・「a. 自動車市場環境」において、販売台数や販売シェアの情報を⽤いて経営成績を分かりやすく記載
住友金属鉱山 ・財務情報に加えて、重要な指標(銅・金・ニッケルの海外相場や為替相場)の前期比較情報を記載
ファーストリテイリング ・財務情報におけるセグメント単位に加え、経営方針・経営戦略等の説明に適した単位(「メンズ」、「ウィメンズ」等、より詳細な単位)で記載
・財務情報に加えて、その理解に有用な指標(1㎡当たり売上収益や1⼈当たり売上収益)の前期比較情報を記載
リクルートホールディングス ・財務情報におけるセグメント単位に加え、経営方針・経営戦略等の説明に適した単位(「住宅分野」、「結婚分野」等の単位)で記載
・財務情報に加えて、その理解に有用な指標(「ネット予約人数累計」、「ネット予約件数累計」、「新設住宅着工戸数」等)を時系列で記載
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容等 三井物産 ・「(3) 2019年3⽉期における取組み ③キャッシュ・フロー配分の実績及び最新見通し(中期経営計画3年間累計)」に、株主還元への支出の目標とする水準を記載
・「(5) 流動性と資金調達の源泉」に、成長投資、手許資金、株主還元の方針と資金需要に対する資金調達の方法について、経営者の考え方を記載
日本航空 ・「1)財務戦略の基本的な考え⽅」に、
➀ 成長投資、手許資金、株主還元の方針に関する経営者の考え⽅を記載
➁ 設備投資の水準に関する経営者の考え⽅を記載
・「2)経営資源の配分に関する考え方」に、緊急の資金需要のために保有する金額の水準を記載
・「3)資金需要の主な内容」に、資金需要の内容について具体的に記載
重要な会計上の見積り ソニー ・見積り方法法と、見積りに使用した仮定について具体的に記載
・将来見積キャッシュ・フローについて、報告単位の中期計画や永続成長率などに基づいている旨を具体的に記載
・永続成長率の前提や利用している割引率(類似企業の加重平均資本コストにより算定)について具体的に記載
・割引率や永続成長率に公正価値を低下させる変動が生じた場合、減損損失が発生する可能性について記載
・評価性引当金を計上している納税主体をそれぞれ計上金額も含めて記載
・評価性引当金の取崩しの判断において重視されるポイントを記載
・税制や税率の改正、移転価格税制の改正を含む経営環境の変化による税務戦略の見直しなど、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性がある事象について具体的に記載

移転価格 : 企業グループ内の取引価格のこと。例えば、日本企業が税率の低い国にある海外の販売子会社に、通常よりも低い金額で商品を卸すことにより、日本企業に生じるはずの利益を海外関連企業に移転させ、日本企業およびグループ全体の税負担を軽減することが可能になる。このため、移転価格には各国の税務当局が関心を持っており、「移転価格税制」を設けている。移転価格税制とは、グループ取引において低税率国から高税率国への輸出価格を不当に高くし、グループ全体の税負担を減らすような租税回避を防ぐため、通常の取引価格が行われたと仮定して課税を行う制度である。

三菱商事 ・「➀金融商品の公正価値測定」において、マーケット・アプローチインカム・アプローチコスト・アプローチ等の公正価値の算定方法を具体的に記載
・「➁償却原価で測定される債権の減損」において、債権管理方法を記載し、各債権に対する貸倒引当金の見積り方法を記載

マーケット・アプローチ : 同一または類似の資産または負債の市場取引から生み出される価格とその他の関連する情報を用いて評価する方法
インカム・アプローチ : 将来の金額を単一の現在価値に割り引いて評価する方法
コスト・アプローチ : 資産の用役能力を再調達するために現時点で必要となる金額を反映する方法
減損 : 資産の将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上する損失のこと

トヨタ自動車 ・セールス・インセンティブという商慣行が貸倒引当金の見積りに与える影響を具体的に記載
・見積りの要素である損失発生頻度または予想損失の程度が変動した場合に経営成績に与える影響について具体的に記載
京セラ ・見積り方法について、見積りに用いた仮定を含め、経営戦略に関連付けて具体的に記載
・実績が見積りと乖離した程度を記載し、見積りの正確性について記載
三井物産 ・見積りに用いた仮定(割引率)について、どのような指標を利用しているのかを具体的に記載
・経理の状況の従業員給付の注記だけでは不足している情報を、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」に記載
・従業員給付の注記において、従業員給付の見積りに用いられた割引率の変動が財政状態に与える影響を具体的に記載
・記載内容が重複する項目について、他の箇所を参照する旨を記載

金融庁のコメントを見ると、やはり「図を用いて具体的に分かりやすく」という説明資料の鉄則は有報にも当てはまることが分かる。なお、MD&Aに関しては、当フォーラムでも【特集】MD&Aにおける「資本の財源及び資金の流動性」の開示事例において、「何を」「どのように」書けばよいのか、下記のテーマに関する実際の開示事例を紹介しているので、あわせて参考にしていただきたい。

MD&A : 「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

① 資金調達・財務政策の基本方針
② グループファイナンスに係る方針
③ 資金需要
④ 資金の源泉・資金調達手段
⑤ 信用格付け
⑥ 流動性の状況
⑦ 有利子負債の状況
⑧ キャッシュ・フローの状況

こういった開示事例に加えて、記述情報を記載するうえでの理論的な支柱となるのが、金融庁が好事例集とともに3月19日に公表した「記述情報の開示に関する原則」(以下、記述情報開示原則)だ。記述情報開示原則は記述情報の開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたものであり、総論と各論から構成されている。

総論では、記述情報には「取締役会や経営会議の議論」を適切に反映したうえで「重要性(マテリアリティ)」に従って重要なものを分かりやすく開示することを求める一方、各論では「法令上記載が求められている事項」ごとに、その「考え方」と「望ましい開示に向けた取組み」が示されている。要するに、総論は開示にあたってのスタンスや基本的な考え方を明確にしたものであり、各論は、開示事項を定めた開示府令の規定をより具体的に補足・説明するものとなっている。もっとも、記述情報開示原則はプリンシプルベースのガイダンスにすぎず、新たな開示事項を追加するものではない。金融庁では、開示書類の作成・公表に関与する者(例えば、経営者、作成事務担当者、IR 担当者等)が、この原則に沿った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することや、投資家が企業との対話を行う際に利用することを想定しているという。

プリンシプルベース : 大まかな原理・原則だけを定め、細かな運用は現場の判断に任せるという規制方法のこと。プリンシプルベース(原則主義)の反意語は「ルールベース(細則主義)」である。

有報の記述情報の開示の充実は今回にとどまらない。既報のとおり、2会計年度にわたり(3月決算企業の場合、今3月期(2019年3月期)決算と来3月期(2020年3月期)の2会計年度)、有報における記述情報の開示が段階的に拡充される(今3月期決算の有報に関する改正については2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」、来3月期決算の有報に関する改正については2019年2月22日のニュース「事業等のリスク、取締役会での議論が必須に」参照)。裏を返せば、上場企業においても記述情報の充実に向けた取り組みは今後も続くことになるが、記述情報開示原則と好事例集の公表で、ひとまず記述情報開示の充実に向けた環境は整った。金融庁は、今後の開示事項の充実に対応するべく好事例集を随時更新する予定。上場企業側も相次ぐ改正に対応できるよう、記述情報原則に基づく体制整備に加えて、アップデートされた好事例集を参考にしながら、自社にとってあるべき開示内容を模索する必要があろう。

2019/03/22 金融庁が「好事例集」と「開示原則」公表、記述情報充実に向けた環境整う

有価証券報告書(以下、有報)は、簡素化が進んだ決算短信と異なり情報量が豊富で、かつ、決算情報には監査人の監査意見も付されることからその信頼性も高い。このため、有報を投資判断の際の“最重要資料”の一つに位置付ける投資家は少なくない。それだけに有報の信頼性の確保・維持は投資家保護の観点から必須となっており、それを実現すべく、金融庁は毎年「有報レビュー()」を実施している。

 有報レビューでは、下記の3種類の審査が行われる。
・過年度の有報レビューの審査結果を踏まえて今期重点的に行う審査(重点テーマ審査)
・当該年度において新たに改正された開示事項に対して行う審査(法令改正関係審査)
・適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して行う審査(情報等活用審査)

昨年(2018年)は1月に開示府令が改正され、2018年3月期の有報から【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】や【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の開示内容の充実が図られている(2018年1月26日のニュース『新しい有報では「経営者の視点」への注目必至』参照)が、これに関する有報レビュー(法令改正関係審査)の結果、有報提出会社に対して次のような指摘が行われていたことが分かった(平成30年度有報レビューの「審査結果」から抜粋)。

(1) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等があるにもかかわらず、その内容が記載されていない事例
(2) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等があるにもかかわらず、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして経営者が経営成績等をどのように分析・検討しているか(例えば、経営成績等の達成度合いや必要な対応)を全く記載していない、あるいは一部の指標についてのみ記載している事例
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報(例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかなど)について、キャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したもののほかに、当該事項に関する記載がない事例

指摘事項のうち(1)と(2)では、中期経営計画などで経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(いわゆるKPI)を開示しているにもかかわらず、有報でKPIに触れていない企業がターゲットになった模様。また、(3)では、資本の財源及び資金の流動性に関する情報として、いまだに従来型のキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものしか開示していない企業が審査でやり玉に挙げられた格好だ。これらの指摘を受けた企業は、訂正報告書の提出や次年度以降の有報で指摘事項への対応が求められる。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

こういった“開示後進企業”にとって参考になるのが、・・・

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2019/03/20 人材獲得に影響も 従業員の“ドレスコード”

コートのいらない日が多くなった。気象庁は、東京では1週間後に桜が満開になるとの予想を出している。それからさらに約1か月後のGW明けには、クールビズを開始する企業も多いことだろう。近年は地球温暖化の影響で暑さが長期間にわたり続くことが多く、もはやクールビズは必須となっているが、一部の企業では、暑さ以外の観点からも、従業員の「服装規程(ドレスコード)」の見直しが経営課題の一つとなりつつある。

一般に・・・

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2019/03/20 人材獲得に影響も 従業員の“ドレスコード”(会員限定)

コートのいらない日が多くなった。気象庁は、東京では1週間後に桜が満開になるとの予想を出している。それからさらに約1か月後のGW明けには、クールビズを開始する企業も多いことだろう。近年は地球温暖化の影響で暑さが長期間にわたり続くことが多く、もはやクールビズは必須となっているが、一部の企業では、暑さ以外の観点からも、従業員の「服装規程(ドレスコード)」の見直しが経営課題の一つとなりつつある。

一般に金融機関の従業員の服装は“堅め”と言われるが、米国の金融大手ゴールドマン・サックスは今月(2019年3月)5日、全従業員に対し、服装規程を緩和する旨を通知した。どのような服装ならOKあるいはNGなのかが具体的に示されているわけではないが、「フレキシブルなドレスコード」にするという。

同社が服装規程の緩和に踏み切った背景の一つにあるのが、優秀な人材の確保だ。既にIT企業やヘッジファンドでは、従業員がカジュアルな服装で勤務することは当たり前のようになっている。また、同社従業員の3/4以上は、“ミレニアル世代”(1980年代~90年代半ば生まれ)やその下の“Z世代”(1990年代後半〜2010 年頃生まれ)となっており、これらの世代では、服装を含めカジュアルな職場環境が好まれる。その傾向は世代が下がるにつれて強まることが予想される。同社は、こうした若い世代の優秀な人材の獲得競争においてIT企業やヘッジファンドに勝るためには、服装規程も彼らが好むものに改めるべきだと考えたものとみられる。

ミレニアル世代 : 米国で、2000年代に成人・社会人になった世代(すなわち、1980年代~2000年代初頭生まれ)を指す。インターネットが普及した環境で育った最初の世代で、情報リテラシーに優れているのが特徴。ミレニアル(millennial)とは「千年紀の」という意味。
Z世代 : 2000年代に成人・社会人になったミレニアル世代の次の世代で、「ポスト・ミレニアル世代」とも呼ばれる。Z世代は子どもの頃からインターネットに囲まれて育ったため、ミレニアル世代よりもさらに情報リテラシーが高く、SNSによる情報発信にも積極的であるため、企業によるマーケティング対象として注目を集めている。ちなみに、「Z世代」と呼ばれるのは、米国で1960年~1974年生まれの世代が「X世代」と呼ばれたことに始まる(X世代の次がY世代)。

日本でも、IT系の新興上場企業の役員などは、接客時を含めジーンズにジャケットというカジュアルな服装でいることが珍しくない。また、最近は大手企業においても、従来の「カジュアル・フライデー」に加え、水曜日もカジュアルな服装を認めるところが出てきた。カジュアルな服装は、優秀な若手人材の獲得という観点のみならず、地球温暖化防止や、「働きやすさ」という意味で、現在政府が推進している「生産性の向上」の観点からも正当化され得る。業種(例えば金融機関)や部門(例えば営業)によってはいきなり全面的にカジュアルな服装を認めるわけにはいかないかもしれないが、少なくとも外出や来客がない日はカジュアルな服装での勤務を認めるなど、段階を踏んで服装規程を緩和することは十分検討に値する。職場の雰囲気も明るくリラックスしたものへと大きく変わり、「コストをかけない従業員のモチベーションアップ策」となることも期待できそうだ。