2019/01/09 東証の市場構造の変化がもたらすCGコードへの影響(会員限定)

2013年7月に東京証券取引所(以下、東証)と大阪証券取引所の株式市場が統合してから、はや5年半が経過した。統合以来、東証は、第一部・第二部・マザーズ・JASDAQの四つの市場(及びプロ投資家向けの東京PROマーケット)を運営しており、市場ごとに異なる上場要件や上場廃止基準を設けてきた。その間、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が実施されるなど上場企業を巡る環境は大きく変化したが、株式市場そのものは統合時のままとなっている。

「そもそも4つも市場が必要なのか」という声は株式市場の統合時から存在しており、こうした声を受け東証は昨年末(2018年12月21日)、現在の株式市場の大幅な見直しを提言する「市場構造の在り方等の検討に係る意見募集(論点ペーパー)」を公表している。本論点ペーパーでは、マザーズとJASDAQ(グロース)を「新興企業向け市場」、市場第二部とJASDAQ(スタンダード)を「実績のある企業向け市場」、市場第一部を「ステップアップ先の市場」とグルーピングし、それぞれの形式基準や上場廃止基準の在り方を検討していくことが必要であるとしている(パブコメの募集は2019年1月末まで)。

ここで気になるのは、取引所の各種ルールの適用範囲への影響だ。現行の制度上、東証1部と東証2部の両市場は「本則市場」と位置付けられており、市場のルールもこの本則市場という括りに対して適用されるものがある。CGコードはまさにその典型と言える。周知のとおり、CGコードには「基本原則」「原則」「補充原則」があり、本則市場に上場している企業にはその全ての原則が適用される(マザーズ、JASDAQ上場企業には基本原則のみ適用)。そこで、上述のとおり東証2部が「実績のある企業向け市場」、東証1部が「ステップアップ先の市場」と位置付けられた場合、CGコードのように現状「本則市場」に適用されているルールの適用範囲が変更されるということも考えられなくはない。

もちろん、市場構造が変更されても、CGコードの適用範囲は現状のままという可能性もある。ただ、同じ「実績のある企業向け市場」に上場している企業であるにもかかわらず、旧東証2部上場企業にのみCGコードの全ての原則が適用され、旧JASDAQ(スタンダード)企業には基本原則のみ適用されるというのは不自然とも言える。そこで、現行CGコードは東証1部上場企業にのみに適用することとし、東証2部上場企業用にはマザーズやJASDAQ上場企業と同様、「基本原則」のみを適用するというシナリオもあり得るが、これは東証2部上場企業会社のガバナンスを弱めることになりかねないため、東証としても採用しづらいはずだ。

上記論点ペーパーの1ページ目の「はじめに」では、「上場会社の企業価値の維持向上をより積極的に動機付け、国内外の多様な投資者からのより高い支持を得られるものとなるよう検討していくことが、資本市場の持続的な発展、ひいては日本経済全体の発展に寄与していく観点から重要」という記述を、わざわざ下線を引いて強調している。少なくとも赤字部分からは、ガバナンスの後退につながるような施策(例えば現行CGコードの適用範囲を狭める)を視野に入れているとは考えにくい。むしろ、例えば「ステップアップ先の市場」の上場企業に対しては一層のガバナンス強化が求められる可能性もあろう。

CGコードの取扱いは市場構造の在り方が固まってからの議論となるが、さらなる厳格化が図られるのか、あるいは現状維持にとどまるのか、動きがあり次第、続報したい。

2019/01/08 数字が証明するエンゲージメントの意義

エンゲージメントという言葉が使われ始めた数年前、企業のみならず機関投資家からも、「それほど意味があるとは思えない」「やれと言われているのでやっている」といった趣旨の発言を耳にしたことがあったが、我が国でもエンゲージメントは着実にその意義を高めているようだ。・・・

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2019/01/08 数字が証明するエンゲージメントの意義(会員限定)

エンゲージメントという言葉が使われ始めた数年前、企業のみならず機関投資家からも、「それほど意味があるとは思えない」「やれと言われているのでやっている」といった趣旨の発言を耳にしたことがあったが、我が国でもエンゲージメントは着実にその意義を高めているようだ。

日本投資顧問業協会は昨年(2018年)12月19日、「日本版スチュワードシップ・コードへの対応等に関するアンケート(第5回)の結果について」(同協会の会員225社を対象に9月下旬から10月下旬にかけて実施し、218社が回答。回答基準日:2018年8月末 以下「報告書」という)を公表したが、スチュワードシップ・コード全体をカバーし83ページにも及ぶ膨大な報告書の中で、エンゲージメントの実効性の高まりを示したのが下記の問いに対する投資家の回答だ(40ページ参照)。

(7)上記<設問4-⑤>の「会社提案議案に対する賛成・反対・棄権・白紙委任」について、エンゲージメント活動の結果、会社からの事前説明を受けて賛否等を変更した議案がありますか。<設問4-⑦>

この問いに対し「変更した議案がある」と回答した投資家(日本株投資残高がある投資家に限る)は33.0%となっている。逆に67.0%の投資家は「変更した議案はない」と回答しており、この数字だけを見ると、エンゲージメントによって議案の変更に至る投資家は少数派にとどまっているとの見方もできなくはない。しかし、投資家(運用機関)が自らの議決権行使ガイドラインと異なる判断を下すということには、運用受託先への重い説明責任が伴う。この点を考慮すると、3割超の投資家が賛否を変更したという事実は、エンゲージメントの意義を十分に肯定するものと言えよう。しかも、前年調査では「変更した議案がある」と回答した投資家は21.7%となっており、エンゲージメントの効果が大きく向上していることが分かる。

では、企業と投資家はエンゲージメントの場で具体的に何がテーマとされたのだろうか。これを投資家に聞いたのが次の問いだ(31ページ参照)。

(11)エンゲージメント活動における企業との対話において、投資先企業と多く議論した事項を下記からお選び下さい(複数回答可)。<設問3-⑮>

この問いでは20個の選択肢の中からの回答を求めている。投資家(日本株投資残高がある投資家に限る)の回答数が多かった上位5つの選択肢を抽出したのが下表だ。「企業戦略」「企業業績及び長期見通し」というファンダメンタルズに直結するテーマが上位にあるのは、アクティブ投資家を中心にエンゲージメントを銘柄選別に直結させている投資家が少なくないことを示していると言えるだろう。また、「ガバナンス体制」が2番目にランクされ、かつ昨年の64.9%から約5ポイントの上昇となっている点も注目される。いずれも議決権行使にエンゲージメントの結果を反映させようという上記設問4―⑦の回答結果にも通じる結果と言えよう。

ファンダメンタルズ : 売上高や利益などの業績や、資産・負債などの財務状況等、株式の本質的価値を決める指標
アクティブ投資家 : 銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法(以下、アクティブ運用)をとる投資家のこと。アクティブ運用はパッシブ運用の対極の概念であり、運用担当者(ファンド・マネージャー)が、株式市場や投資銘柄などを調査し、今後の動向を予測することでポートフォリオを決定する。市場の平均的な収益率をベンチマークとし、これを上回る運用成果を上げることを目標にすることが多い。

議論のテーマ 本テーマを選択した投資家の数 本問に回答した投資家数に占める割合
企業戦略(除く株主還元策) 65社 87.8%
ガバナンス体制(取締役会構成や資本構造を含む) 53社 71.6%
企業業績及び長期見通し 49社 66.2%
株主還元策 46社 62.2%
リスク要因(社会・環境問題に関連するリスクを除く) 34社 45.9%

上記の質問<設問3-⑮>はこれまでのエンゲージメントで取り上げられたテーマだが、エンゲージメントを促進するために投資家が重要と考えるテーマについて聞いたのが下記の問いだ(67ページ参照)。

8・企業との建設的な対話の促進に向けて重要と思われる事項を下記からお選び下さい(複数回答可)。さらに、その具体的な情報(開示)の内容についてご記入下さい。<設問6-②>
※当フォーラムにて簡略化

この問いでは、回答の選択肢が、昨年(2018年)6月28日に金融庁から公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」の中の「Ⅱ.建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供」を踏まえた5つに限定されているが、これらの選択肢を、選択した投資家(日本株投資残高がある投資家に限る)の数が多い順に上から並べたのが下表である。投資家の最大の関心事が「政策保有株式」であることは予想通りとも言えるが、それに次ぐテーマとして役員報酬が挙げられていることは注目に値する。本来、企業戦略を反映しつつその達成度を高める役割を果たすという機能を持つ役員報酬は、グローバル投資家の間ではかねてから主要関心事に挙げられてきたが、国内投資家においても同様の意識が高まってきたということであろう。

企業との建設的な対話の促進に向けて重要と思われる事項 選択した投資家の数 本問に回答した投資家数に占める割合
政策保有株式 58社 55.2%
役員報酬 49社 46.7%
一体的開示 45社 42.9%
会計監査情報の拡充 44社 41.9%
その他 21社 20.0%

一体的開示 : 事業報告等と有価証券報告書の開示内容を共通化し、両者を一体化すること。

なお「その他」では、「コーポレート・ガバナンス(経営戦略、資本政策、取締役等)関連」「非財務情報(ESG情報)の開示関連」「英語での開示・コミュニケーション等」の3つの選択肢が挙げられていたが、このうち最も多くの投資家が選択したのは「コーポレートガバナンス(経営戦略、資本政策、取締役等)関連」であり、前述の設問3-15エンゲージメントの議論のテーマ)で「ガバナンス体制」が2位にランクインしたことと整合する。2019年の株主総会シーズンを約半年後に控え、各社においてはコーポレートガバナンスの一層の充実が求められていると言えそうだ。

ESG : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

2018/12/27 【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項(会員限定)

改訂CGコードへの対応経験を改正開示府令への対応にも活かす

周知のとおり、金融庁は2018年11月2日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令)の改正案を公表しています(改正の全体像は2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』参照)。一部の改正事項には施行時期が異なるものもありますが、多くの改正事項は「2019年3月31日以後に終了する事業年度」の有価証券報告書から適用され、企業にはこれまで以上に様々な情報の開示が義務付けられることになります。

その中でも企業の関心が高いのが、政策保有株式に関する開示と役員報酬に関する開示についての改正です。

政策保有株式を含む「株式の保有状況」の開示の改正では、開示義務を負う企業の範囲に変更はありませんが、表1のとおり、「政策保有株式全体に関する記載」においては開示項目が大幅に追加され、「政策保有株式の個別銘柄に関する記載」においては開示対象銘柄が拡大されるとともに開示項目も追加され、「保有目的が純投資目的である投資株式に関する記載」においては開示項目が若干追加されています。

また、役員報酬については、表2のとおり、役員報酬額等の決定方針、業績連動報酬、役員報酬等に関する株主総会の決議、報酬委員会等の活動内容などに関する開示項目が拡充されます。なお、日産自動車のカルロス・ゴーン会長の金融商品取引法違反による逮捕(違反の詳細については2018年11月21日のニュース『「従業員によるガバナンス」の有効性を示した日産事件』参照)を受け最近注目度が高まっている役員ごとの報酬の個別開示については大きな変更はありません。

これらの改正事項への対応に頭を悩ませている企業も少なくないと思われますが、効率的な対応を図るために是非活かしたいのが、2018年6月1日から施行された改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)への対応での経験です。改訂CGコードに基づくコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)は2018年12月末までの提出が求められていたところですが、その作成過程で経験したことは、改正開示府令への対応でも大いに活かせるはずです。以下、具体的に見てみましょう。

政策株式保有株式に関する改正事項、改訂CGコードよりハードルが高い部分も

政策保有株式を含む「株式の保有状況」に関する開示府令の改正内容と改訂CGコードが政策保有株式について(CG報告書での)開示を求める内容を比較したのが表1です(参考に「投資家と企業の対話ガイドライン」(以下、対話ガイドライン)の対応箇所も掲載)。これを見ると、開示府令の改正内容の中には、改訂CGコードに対応していれば既に実質的な対応が済んでいると考えられるものが多いことが分かります。例えば保有方針、保有の適否に関する検証の内容については、改訂CGコードでも同様の開示が求められているわけですから、有価証券報告書における開示でもこれを活かすことができるでしょう。

ただし、改正開示府令の方が改訂CGコードよりも開示のハードルが高くなっているところもあるので要注意です。例えば、改正開示府令では「政策保有株式の個別銘柄に関する記載」として「提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容およびセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合はその旨)」の記載を求めています。一方、東証は改訂CGコード案に対するパブリック・コメントへの回答の中で、保有の適否に関する検証結果の開示について「必ずしも個別の銘柄ごとに保有の適否を含む検証の結果を開示することを求めるものではありません。」との考えを示しています(東京証券取引所『フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」に寄せられたパブリック・コメントの結果について提出された意見とそれに対する考え方』54ページ参照)。もっとも、たとえCG報告書上は個別銘柄ごとの開示が不要だとしても、保有の適否の検証自体はあくまで「個別銘柄」ごとに行っているはずですから、この検証結果を有価証券報告書の開示においても活用することができるでしょう。

また、やはりCGコードでは開示を求めていない事項として、改正開示府令では、株式を相互に保有している場合には相手方の保有状況も開示することを求めています(表1中、「政策保有株式の個別銘柄に関する記載」の「記載事項」の⑦「当該株式の発行者による提出会社の株式の保有に関する情報」の部分)。これは、ディスクロージャーワーキング・グループの会合において、「投資先企業の株式が政策保有目的の株主に保有されている状況、すなわち、A社がB社の株式を政策目的で保有している場合にB社もA社の株式を持っているという“持ち合い”の状況も検証する必要がある」旨の意見(「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第8回) 議事録【三瓶委員】の発言の5段落目参照)に応えたものです。

これまで、開示を要する政策保有株式はB/Sにおける計上額が大きい上位「30銘柄」でしたが、今回の開示府令の改正によりこれが一挙に倍の「60銘柄」になります。これは、日経500社における政策保有株式の銘柄数の中央値が「63.0」であることなどを考慮したものです(ディスクロージャーワーキング・グループ報告 14ページの脚注36参照)。この結果、今後は上場企業の大部分が、全ての政策保有株式について開示を求められることになるでしょう。上述のとおり、改訂CGコードへの対応として行った個別銘柄ごとの検証結果を利用しながら、有価証券報告書における開示作業を効率的に進めたいところです。

日経500社 : 東京証券取引所第一部に上場する銘柄のうち、過去3年間の売買高、売買代金、時価総額のランキング上位500銘柄。

表1
開示府令改正案(下線部は追加された開示事項) コーポレートガバナンス・コードおよび対話ガイドライン
(政策保有株式全体に関する記載事項)
○ 保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方
○ 保有目的が純投資目的以外の目的である株式投資の
・ 保有方針、保有の合理性を検証する方法
・ 個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容
・ 非上場株式、それ以外の区分ごとの銘柄数
・ 非上場株式、それ以外の区分ごとの貸借対照表計上額の合計額
・ 非上場株式、それ以外の区分ごとに、最近事業年度における株式数が前事業年度における株式数から変動した銘柄に関して
(a) 株式数が増加(減少)した銘柄数
(b) 株式数の増加(減少)に係る取得(売却)価額の合計額
(c) 増加の理由

(政策保有株式の個別銘柄に関する記載)
○ 対象銘柄:保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(非上場株式)及びみなし保有株式のうち、
① 銘柄別による投資株式の貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の1%を超えるもの
② ①に際して、該当する銘柄数が60未満の場合は貸借対照表計上額の大きい方から60銘柄
③ ②に際して、60銘柄の中にみなし保有株式が11銘柄以上含まれる場合は、みなし保有株式を、貸借対照表計上額が大きい方から10銘柄、特定投資株式を、貸借対照表計上額が大きい方から50銘柄
④ ③に際して、特定投資株式が50銘柄未満の場合は、60から当該特定投資株式の銘柄数を減じた数のみなし保有株式
○記載事項
① 銘柄
② 株式数
③ 貸借対照表計上額
④ 保有目的
⑤ 提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合は、その旨)
⑥ 株式数が増加した理由(最近事業年度における株式数がその前事業年度における株式数より増加した銘柄に限る。)
⑦ 当該株式の発行者による提出会社の株式の保有に関する情報

(保有目的が純投資目的である投資株式に関する記載事項)
○ 非上場株式、それ以外の区分ごとに、
① 最近事業年度とその前事業年度における銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
② 最近事業年度の受取配当金、売却損益、評価損益のそれぞれの合計額

(最大保有会社に関する規定)
※変更なし。

CGコード【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

CGコード 補充原則1-4①
上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。

CGコード 補充原則1-4②
上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。

対話ガイドライン4-1
政策保有株式について、それぞれの銘柄の保有目的や、保有銘柄の異動を含む保有状況が、分かりやすく説明されているか。
個別銘柄の保有の適否について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、取締役会において検証を行った上、適切な意思決定が行われているか。そうした検証の内容について分かりやすく開示・説明されているか。
政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な基準が策定され、分かりやすく開示されているか。また、策定した基準に基づいて、適切に議決権行使が行われているか。

対話ガイドライン4-2
政策保有に関する方針の開示において、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方を明確化し、そうした方針・考え方に沿って適切な対応がなされているか。

対話ガイドライン4-3
自社の株式を政策保有株式として保有している企業(政策保有株主)から当該株式の売却等の意向が示された場合、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げていないか。

対話ガイドライン4-4
政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行っていないか。

(出所)金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正案(平成30年11月2日)、株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2018 年6月1日)および金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」(平成30年6月1日)をもとに筆者が作成

役員報酬に関する事項の開示対象、開示府令の改正でCGコードとの違いが拡大

改正開示府令が求める役員報酬に関する開示でも、改訂CGコードへの対応経験がかなり活かせるはずです。例えば開示府令が(報酬額等の決定方針)で求める「提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針」は、CGコード【原則3-1.情報開示の充実】(ⅲ)が取締役会に求める「経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続」と重なるところが多くなっています。

ここで開示が求められる項目の一つとして「方針の決定に関与する委員会が存在する場合はその手続の概要」(④)がありますが、これも改訂CGコード補充原則4-10①が求める「取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置」していれば説明に困ることはないでしょう。

一方、CGコードへの対応実態から見て、改正開示府令の要求に応えることが困難な企業が多そうなのが、業績連動報酬に関する開示です。表2の(業績連動報酬)に示したとおり、改正開示府令は、①業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針の内容、②当該業績連動報酬に係る指標、③当該指標を選択した理由、④当該業績連動報酬の額の決定方法、⑤最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標、実績――の開示を求めています。このうち業績連動報酬に係る指標(②⑤)については既に有価証券報告書やCG報告書で開示している会社がかなりあるため、各社の実情に合った参考事例を探し出すことは容易でしょう。指標としては(連結)営業利益、(連結)経常利益、ROEなどがよく見受けられ、また、これらを含む複数の指標が用いられることも珍しくありません。業績を向上させるための動機付けとして説明しやすいのは、シンプルに会計的手法によって測定した企業業績と報酬を連動させることでしょう。株価と連動させることも考えられなくはありませんが、金銭での報酬を株価に連動させる必要性は低いと思われます。というのも、経営陣に株価への関心を喚起するという目的は、ストック・オプションや譲渡制限付株式報酬(リストリクテッド・ストック)、その他の株式報酬を与えることで達成できるからです(株式報酬の種類については、経済産業省「「攻めの経営」を促す役員報酬」13~14ページ「(参考)報酬の種類」参照)。ESG要素を報酬に関連付けることも考えられます。確かに、例えばエネルギー効率の改善や従業員満足度などの指標を経営者の報酬と連動させることにより、株主以外のステークホルダーにも貢献しようという企業の姿勢を示すことができますが、これらの指標を正確に計測するのは難しいという問題があります。

譲渡制限付株式報酬(リストリクテッド・ストック) : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬で、企業が株式を無償取得することとなる事由(没収事由:例えば所定の期間勤務を継続しない、目標の業績に未達など)が定められているものを指す。リストリクテッド・ストック(restricted stock)という呼称も定着している。
ESG : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

CGコードでは、「経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう」(補充原則4-2①)、「経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続」(原則3-1)と、報酬の支払い対象の呼称が原則によって微妙に異なっていますが、CG報告書では、主に「社内取締役」を念頭に置いて報酬に関する開示文書が作成されることが多いようです(「経営陣幹部」とは文字通り「経営陣の中の幹部」を指し、単なる「経営陣」よりも狭い概念、一方、「経営陣」とは取締役でない執行役や執行役員を含む取締役会よりも広い概念であると理解されています。詳細は新用語・難解用語辞典の「経営陣幹部」参照)。これに対し開示府令は、表2のとおり、これまで報酬額等を「役員の区分ごとに開示」することと、「役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針の内容、決定方法方針を定めていない場合はその旨」((報酬額等の決定方針)①)を開示することを求めていましたが、今回の改正では、後者について新たに「役職ごとの方針を定めている場合は、その内容」を開示することを求められています(同②)。したがって、CGコードに対応するだけでは、「役員の区分ごと」や「役職ごと」の開示を求める(改正)開示府令には十分に対応できない可能性があります。

各社とも現実に「役職ごと」に差異のある報酬を支払っているのですから、そこには何らかの方針や考え方はあるはずですが、自覚的にそれらを文書化している企業ばかりではないでしょう。役員報酬の額またはその算定方法の決定に関する基本的な方針としては、(1)役割や責任に応じた報酬体系とするとともに、(2)株主をはじめとするステークホルダーと利益を共有するため、業績や企業価値を向上させるインセンティブとするという設計の趣旨を示すことになります。また、優秀な人材を確保する必要性や、他社の報酬水準との比較を盛り込むことも考えられます。「役職ごとの方針」をどこまで細分化するかは各社の実態(企業規模や役職者の種類・数など)によって異なることは当然あり得ますが、例えば常勤の取締役とそうでない取締役では報酬額が異なっているのが通常でしょうから、その違いの根拠となる方針を定めているのであれば、それを「役職ごとの方針」に記載する必要があります。

社外役員の報酬の額またはその算定方法の決定に関する方針の記載内容を検討する際には、経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)が示しているCGSガイドライン(コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針)が参考になります。CGSガイドラインでは社外取締役の報酬水準について、「報酬水準に関しても、社外取締役として期待される役割・機能を果たすために相当な時間や労力を費やすこともあるため、それに見合っているか否かという観点から検討することも必要である。」(78ページの一番下の〇参照)とし、「役割・機能」や「時間や労力」といった考慮要素を挙げています。また、社外取締役には業績連動報酬や株式報酬はふさわしくないとの考え方が有力とされる中、CGSガイドラインは、「インセンティブ付与の観点から、固定報酬に加えて、業績によって付与数が変動しない自社株報酬など、インセンティブ報酬を付与することも考えられる。」(78ページ冒頭参照)との考えを示しています。

表2
開示府令改正案(下線部は追加された開示事項) コーポレートガバナンス・コードおよび対話ガイドライン
(役員の区分ごとに開示)
① 報酬等の総額
② 報酬等の種類別(例えば、固定報酬、業績連動報酬及び退職慰労金等の区分)の総額
③ 対象となる役員の員数
役員の区分
● 取締役(監査等委員、社外取締役を除く)
● 監査等委員(社外取締役を除く)
● 監査役(社外監査役を除く)
● 執行役
● 社外役員(社外取締役、社外監査役等)
(報酬額等の決定方針)
提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について
① 提出日現在における方針の内容、決定方法方針を定めていない場合はその旨
② 役職ごとの方針を定めている場合は、その内容
③ 方針の決定権限を有する者の氏名または名称、その権限の内容、裁量の範囲
④ 方針の決定に関与する委員会が存在する場合はその手続の概要
(業績連動報酬)
提出会社の役員の報酬等に、業績連動報酬が含まれる場合は
① 業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針を定めているときは、その方針の内容
② 当該業績連動報酬に係る指標
③ 当該指標を選択した理由
④ 当該業績連動報酬の額の決定方法
⑤ 最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標、実績
(その他)
① 提出会社の役員の報酬等に関する株主総会の決議が
(a) ある場合は、当該決議年月日
(b) ない場合は、提出会社の役員の報酬等について定款に定めている事項の内容
② 最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における提出会社の取締役会、委員会等の活動内容
CGコード【原則3-1.情報開示の充実】
上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社の意思決定の透明 性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、(本コードの各原則において開示を求めている事項のほか、)以下の事項について開示し、主体的な情報発信を行うべきである。
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

CGコード【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)】
また、経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである。

CGコード 補充原則 4-2①
取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

CGコード 補充原則4-10①
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

対話ガイドライン3-5.
経営陣の報酬制度を、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた健全なインセンティブとして機能するよう設計し、適切に具体的な報酬額を決定するための客観性・透明性ある手続が確立されているか。こうした手続を実効的なものとするために、独立した報酬委員会が活用されているか。また、報酬制度や具体的な報酬額の適切性が、分かりやすく説明されているか。

(出所)金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正案(平成30年11月2日)、株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2018 年6月1日)および金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」(平成30年6月1日)をもとに筆者が作成

CG報告書と有価証券報告書の記載内容の矛盾・相違に要注意

以上のように、改正開示府令に基づく政策保有株式、役員報酬に関する開示に対応するうえでは、改訂CGコードへの対応経験を活かし、開示実務の効率化、時間短縮を図ることが可能です。ただし、それは同時に、両者が相当部分において連動しているということを示しています。CG報告書と有価証券報告書で開示内容に濃淡が出ることはあり得ますが、改正開示府令に基づく有価証券報告書を作成する際には、CG報告書との間で矛盾や相違が生じないよう、注意深く両者を比較する必要があります。

2018/12/27 【2018年12月の課題】最適な資金調達方法の決定

2018年12月の課題

企業は運転資金、設備投資、M&A等の資金需要を満たすために資金調達を行いますが、資金調達の方法によっては既存の株主に重大な影響を及ぼすことになります。そこでコーポレートガバナンス・コード【原則1-3.資本政策の基本的な方針】【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】では、資本政策の基本的な方針について説明するよう求めています。実際に上場企業で見られる複数の資金調達方法を比較しつつ、自社にとって最適な資金調達方法を検討してみてください。

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2018/12/27 【役員会 Good&Bad発言集】内部通報制度の利用状況(会員限定)

<解説>
注目を集める内部通報制度の利用状況

日産自動車のゴーン会長の逮捕(2018年11月21日のニュース『「従業員によるガバナンス」の有効性を示した日産事件』を参照)やホシザキの連結子会社における売上原価の付け替え不正の発覚(2018年12月26日掲載の【失敗学第55回】ホシザキの事例を参照)に内部通報制度が一役買ったことが広く知られたこともあり、内部通報制度の有効活用に向けて役員・従業員や投資家の目が向けられ始めました。

上場会社における内部通報制度の導入は早くから進んでおり、すでに2012年の時点で上場会社の97.5%が内部通報制度を導入していました(日本監査役協会が実施したアンケート調査結果の問13-3「内部通報制度の有無」を参照)。その後、本則市場の上場会社に対してコーポレートガバナンス・コード(原則2-5や同補充原則2-5①)での内部通報制度の整備と適切な運用が明文化されたこともあり(2018年11月15日のニュース「内部通報制度をいかにして機能させるか」を参照)、内部通報制度がある上場会社は99.4%(1,832社)に達し、制度を導入していない会社を探す方が困難と言えるほどです(日本監査役協会が実施した2017年アンケート調査結果)。

そうなると次に焦点が当たるのは、内部通報制度の利用状況です。制度を作ったはいいものの、利用が必要な状況でも利用されないようでは意味のない制度となるからです。不正が発覚した企業の多くで調査報告書に「内部通報制度が機能しなかった」という問題点が指摘されているのを良く見かけますが、内部通報制度の不機能と不正の発生(あるいは発覚の遅れ)には相当の因果関係があるものと思われます。

それでは、どのようにしたら内部通報制度の利用を高めることができるのでしょうか?まず注意を払うべきは、制度の認知率です。内部通報制度が知られていなければ、利用されようがありません。2018年11月15日のニュース「内部通報制度をいかにして機能させるか」にあるとおり、社内報で告知する程度では不十分であり、社長メッセージ、社内研修、一斉メール、社内ポスターの掲示など様々な告知方法を実行するとともに、定期的にアンケートを実施して、告知効果を測定することも欠かせません。告知効果は認知率として、内部通報制度の管轄部署のKPIにすべきです。

消費者庁が2016年度に実施した「労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査 報告書」によると、内部通報をしようと思う理由は「不正行為を早期に明らかにして適切に対処することが、国民の生命、身体、財産などへの被害を防止することになり、最終的には労務提供先の利益になる」「公益通報者保護法や労務提供先が定める内部通報制度により、解雇や降格、減給、配置転換等の不利益な取扱いを受けるおそれがない」「労務提供先が設置している内部通報・相談窓口が信頼できる」「職場内に不正行為は積極的に通報しようという意識が浸透している」といった理由が並んでいます(「労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査 報告書」の25ページの図表14から引用)。

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ここで掲げられている理由は、まさに内部通報制度が機能していないことに悩む企業にとっては、対策の宝庫と言えます。社内研修で、内通制度の利用イコール悪(同僚や上司への裏切り)という観念が誤りであり、「不正行為を早期に明らかにして適切に対処することが、国民の生命、身体、財産などへの被害を防止することになり、最終的には労務提供先の利益になる」旨を説くことで、内部通報制度の利用件数が伸びることが考えられます。また、「公益通報者保護法や労務提供先が定める内部通報制度により、解雇や降格、減給、配置転換等の不利益な取扱いを受けるおそれがない」ことは制度として整えるだけでなく、社内研修で繰り返し説明する必要があります。また、一方で、不正を行った者に対して温情をかけることなく厳罰に付することで、「通報したところで何も変わらない」という諦観を払しょくさせる効果が期待できます。さらに「職場内に不正行為は積極的に通報しようという意識を浸透させる」ことで、従業員間の慣れや甘えをなくし、いい意味で緊張感を持った職場の雰囲気づくりに資すると言えます。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら
社外取締役C:「当社の内部通報制度の存在や利用方法は、従業員に対して十分に周知されているのでしょうか。内部通報制度に関してKPIを設置するのであれば、『制度の利用件数』ではなく『制度の認知率』ではないでしょうか?」
コメント:『制度の利用件数』をKPIにすべきでない理由は取締役Bの発言に対するコメントを参照してください。社内アンケート等で『制度の認知率』を定期的に集計し、認知率向上に向けての諸施策の実施に知恵を絞るべきです。取締役Cの発言はKPIの設定ミスを指摘したGood発言です。
社外取締役D:「内部通報制度の認知率が高いだけでもダメです。制度利用をためらわせる“障害物”を取り除いてあげる必要があります。」
コメント: いくら内部通報制度の認知率が高くても、制度利用をためらわせる何かが存在するのであれば、まったく意味がありません。誰も使いたがらない制度の認知率が高くてもしかたがありません。認知率の向上に加えて、制度や組織風土等の改革も並行して実施すべきです。それを指摘した取締役Dの発言はGood発言です。
BAD発言はこちら
取締役A:「この1年間の内部通報制度の利用は、お陰様でゼロ件でした。当社の法令順守体制がしっかりとできていることの表れだと思っています。」
コメント:取締役Cの発言にあるように、内部通報制度の利用件数がゼロであったのは、社内の法令順守体制がしっかりとできているからではなく、単に制度が周知されていなかっただけかもしれません。また、内部通報制度が利用されないのは、社内の風通しが悪いことから、従業員が内部通報制度の利用に対して心理的障壁が大きいからかもしれません。従業員が2000人規模の企業で内部通報制度の利用件数が0件というのはあまりに少なすぎであり、制度設計を問題視すべきであるにもかかわらず、手放しで喜んでいる取締役Aの発言はBad発言です。
取締役B:「内部通報制度の利用件数をKPIとして設定したのが良かったのかもしれませんね。来年もこの調子でお願いします。」
コメント:内部通報制度の利用件数をKPIとして設定するのは不適切です。内部通報制度の周知徹底に手を抜く可能性もありますし、通報に対して圧力をかけて取り下げさせるパワハラが発生する可能性もあるからです。

2018/12/27 【役員会 Good&Bad発言集】内部通報制度の利用状況

製造業のN社(従業員約2,000人)では、15年前に内部通報制度を導入しました。定例の取締役会では総務担当の取締役Aがこの1年間の内部通報制度の利用状況を報告中です。これに対し、他の取締役B・C・Dが次の発言をしました。4人の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「この1年間の内部通報制度の利用は、お陰様でゼロ件でした。当社の法令順守体制がしっかりとできていることの表れだと思っています。」

取締役B:「内部通報制度の利用件数をKPIとして設定したのが良かったのかもしれませんね。来年もこの調子でお願いします。」

社外取締役C:「当社の内部通報制度の存在や利用方法は、従業員に対して十分に周知されているのでしょうか。内部通報制度に関してKPIを設置するのであれば、『制度の利用件数』ではなく『制度の認知率』ではないでしょうか?」

社外取締役D:「内部通報制度の認知率が高いだけでもダメです。制度利用をためらわせる“障害物”を取り除いてあげる必要があります。」

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2018/12/27 2018年12月度チェックテスト

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【問題1】

上場会社がESGに取り組むのは純粋に企業としての社会的責任を果たすためであり、売上の維持・拡大による業績向上を図ることは理由になり得ない。


正しい
間違い
【問題2】

NET DER(ネット有利子負債対株主資本倍率)は値が大きいほど財務的に安全と言える。


正しい
間違い
【問題3】

法人税には「受取配当益金不算入制度」と呼ばれる仕組みがあるため、「政策保有株式として保有している企業を経由して投資家が配当を受け取る場合」(A社→B社→投資家)と「投資家が当該政策株式を直接保有して直接配当を受け取る場合」(A社→投資家)とを比べても税引後の実質的な配当額に変わりはない。


正しい
間違い
【問題4】

ACGAが2018年12月5日にリリースした最新コーポレートガバナンス・ランキングによると、日本は前回調査(2016年)の「4位」から「7位」に後退している。


正しい
間違い
【問題5】

議決権行使助言会社大手・グラスルイスの「日本向け2019年版ガイドライン」によると、グラスルイスは2019年から東証一部上場企業を対象として、女性役員が全くいない場合、責任を負うべきと考える取締役の選任議案に反対を助言する方針である。


正しい
間違い
【問題6】

メインバンク出身の監査役の選任議案に対して、ローンの出し手としてのガバナンスに期待して賛成の意を示す機関投資家が大半である。


正しい
間違い
【問題7】

英国では2020年から一定条件を満たす大企業は、たとえ非上場であっても、“コーポレートガバナンス・コード”の適用の有無、適用している場合にはその順守状況などを報告することが法律で義務付けられた。


正しい
間違い
【問題8】

ACGAが2018年12月5日にリリースした最新コーポレートガバナンス・ランキングで日本が前回調査(2016年)の「4位」から「7位」に後退した背景には、日本企業における財務諸表の注記の英文開示や相談役・顧問等の開示が十分でないことも指摘されている。


正しい
間違い
【問題9】

金融庁が2018年12月21日に公表した「記述情報の開示に関する原則(案)」がそのまま確定すると、上場会社は「企業の経営資源の最大限の活用に向け、成長投資・手許資金・株主還元や資本コストに関し、どのような議論が行われているか」について取締役会や経営会議において議論をすることを求められるようになる。


正しい
間違い
【問題10】

自己株式取得には、企業の長期的な経営のフレキシビリティが失われかねないという問題がある。


正しい
間違い

2018/12/27 2018年12月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
自社株買いは一見すると企業や株式市場にとってプラスになる面が多いように見えるが、実はそうとも言い切れません。問題文の「企業の長期的な経営のフレキシビリティが失われかねない」も自己株式取得のマイナスの効果の一つと言えます(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2018/12/25 自社株買いの功罪(会員限定)

2018/12/27 2018年12月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
自社株買いは一見すると企業や株式市場にとってプラスになる面が多いように見えるが、実はそうとも言い切れません。問題文の「企業の長期的な経営のフレキシビリティが失われかねない」も自己株式取得のマイナスの効果の一つと言えます(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2018/12/25 自社株買いの功罪(会員限定)