2018/10/17 売上のみをKPIとするインセンティブ報酬のデメリット

インセンティブ型報酬の導入を図ろうという企業にとって悩ましい問題の一つが、インセンティブ型報酬の金額の算出根拠となる指標(KPI)として何を選ぶのかという点だ。

2018年7月26日のニュース「役員報酬の根拠となるKPIを巡る投資家と経営陣の“好み”の違い」では、インセンティブ型報酬は経営者が自分でコントロールできない要素が入れば入るほど納得感がなくなることから、経営者にとっては、自身の頑張りと成果との因果関係が明確なうえコントロールしやすい「売上」のような指標を好む傾向があることをお伝えしたが、実際、今だに売上増加率を予算や事業計画上の最重要目標に掲げる経営者は少なくない。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

確かに損益計算書のトップにある「売上高」が伸びなければボトムの「当期純利益」も伸びないという主張にも一理あるが、インセンティブ型報酬の金額の算出根拠となる指標として「売上」のみを採用すれば、会社がデメリットを受ける場合があるということは覚えておきたい。・・・

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2018/10/17 売上のみをKPIとするインセンティブ報酬のデメリット(会員限定)

インセンティブ型報酬の導入を図ろうという企業にとって悩ましい問題の一つが、インセンティブ型報酬の金額の算出根拠となる指標(KPI)として何を選ぶのかという点だ。

2018年7月26日のニュース「役員報酬の根拠となるKPIを巡る投資家と経営陣の“好み”の違い」では、インセンティブ型報酬は経営者が自分でコントロールできない要素が入れば入るほど納得感がなくなることから、経営者にとっては、自身の頑張りと成果との因果関係が明確なうえコントロールしやすい「売上」のような指標を好む傾向があることをお伝えしたが、実際、今だに売上増加率を予算や事業計画上の最重要目標に掲げる経営者は少なくない。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

確かに損益計算書のトップにある「売上高」が伸びなければボトムの「当期純利益」も伸びないという主張にも一理あるが、インセンティブ型報酬の金額の算出根拠となる指標として「売上」のみを採用すれば、会社がデメリットを受ける場合があるということは覚えておきたい。

現在政府は、利益のほか株価や売上に連動して報酬額が決まる法人税法上のインセンティブ型報酬(法人税法上の名称は「業績連動給与」。以下、業績連動給与)を損金に算入するために求められる「報酬委員会(任意のものを含む)のメンバー“全員”が社外取締役などの非業務執行役員でなければならない」という要件の緩和を検討しており(2018年9月11日のニュース「業績連動報酬の導入に拍車も」参照)、これが実現すれば業績連動給与を採用する企業が増えるのではないかと言われているが、実は「売上」のみを算出根拠とする業績連動給与は損金算入が認められていない。売上が業績連動給与の算定指標として認められたのは2017年度税制改正時だが(【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント「2.損金算入要件の変化」の「(4)利益連動給与の要件緩和等」参照)、「売上」は「利益」や「株価」等と同時に算定指標とすることが求められており、売上高のみを算定指標とする業績連動給与は損金算入が認められない。これは、経営者が「売上至上主義」に走ることを防止するために他ならない。一連のコーポレートガバナンス改革によりROEなどの利益指標の向上が求められる中、もし売上を単独で業績連動給与の算定指標とすることを認めれば、利益を犠牲にしてでも売上高を増やそうとする経営者が出てくる恐れがあるというわけだ。

業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。
損金 : 法人税計算の基礎となる法人所得を減らす性質の支出等のこと。損金は企業会計上の費用とおおむね一致するが、役員賞与や固定資産の減損損失など「損金には該当しない費用」もある。
ROE : Return On Equity=自己資本利益率(当期純利益/株主資本

このように、売上至上主義は投資家からも評価されない上に自社の税負担も増やすことにもつながりかねない。売上を上げることが最も評価された時代を生き抜いてきた経営者も、その考えを改める時期に来ている。

2018/10/16 社外取選任のための員数拡大と責任限定契約導入議案は“一の議案”か?

近年、一部の会社の株主総会で、1人の株主がほぼ“株主提案権の濫用”と言えるような形で膨大な数の議案を提案するといった事例が見られることを踏まえ、コーポレートガバナンス関係の会社法の見直しを検討している法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、株主提案権の濫用的な行使の制限が大きなテーマとなっているのは既報のとおり(2018年1月19日のニュース「株主提案議案数を制限する会社法改正案 「数」と「数え方」が焦点に」参照)。

具体的な制限の方法としては、提案できる議案数の「数」の上限を決めることが検討されている。今年2月に公表された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」では、「5」または「10」を上限とする2つの案が提示されていたが(2018年3月2日のニュース『ガバナンス関連の会社法改正「中間試案」公表、株式交付制度創設へ』の表の上から二段目参照)、改正会社法(改正時期は未定)では「10」が採用される方向となっている。

提案できる議案数の上限が「10」とされれば、株主提案権の濫用的な行使はかなり抑制されることになるだろう。ただ、議案数の数え方によっては制限が過度なものとなり、結果的に株主提案権を相当程度奪うようなことにもなりかねない。例えば複数人の取締役を選任する議案を提案する場合、仮に「取締役の人数=議案数」とみなされれば、複数人の取締役の選任議案を提出するだけで「10」という提案枠の多くを使ってしまうことになる。

そこで改正会社法では下記のようなルールを設ける方針だ。・・・

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2018/10/16 社外取選任のための員数拡大と責任限定契約導入議案は“一の議案”か?(会員限定)

近年、一部の会社の株主総会で、1人の株主がほぼ“株主提案権の濫用”と言えるような形で膨大な数の議案を提案するといった事例が見られることを踏まえ、コーポレートガバナンス関係の会社法の見直しを検討している法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、株主提案権の濫用的な行使の制限が大きなテーマとなっているのは既報のとおり(2018年1月19日のニュース「株主提案議案数を制限する会社法改正案 「数」と「数え方」が焦点に」参照)。

具体的な制限の方法としては、提案できる議案数の「数」の上限を決めることが検討されている。今年2月に公表された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」では、「5」または「10」を上限とする2つの案が提示されていたが(2018年3月2日のニュース『ガバナンス関連の会社法改正「中間試案」公表、株式交付制度創設へ』の表の上から二段目参照)、改正会社法(改正時期は未定)では「10」が採用される方向となっている。

提案できる議案数の上限が「10」とされれば、株主提案権の濫用的な行使はかなり抑制されることになるだろう。ただ、議案数の数え方によっては制限が過度なものとなり、結果的に株主提案権を相当程度奪うようなことにもなりかねない。例えば複数人の取締役を選任する議案を提案する場合、仮に「取締役の人数=議案数」とみなされれば、複数人の取締役の選任議案を提出するだけで「10」という提案枠の多くを使ってしまうことになる。

そこで改正会社法では下記のようなルールを設ける方針だ。

(1)取締役、会計参与、監査役又は会計監査人(以下、役員等)の選任に関する議案は、選任される役員等の数に関係なく、一つの議案と数える。
(2)役員等の解任に関する議案も、解任される役員等の数にかかわらず、一つの議案と数える。
(3)会計監査人の不再任に関する議案は、不再任とされる監査人の数()にかかわらず、一つの議案と数える。
(4)複数の事項にわたる定款変更に関する議案は、「当該複数の事項が別個に可決又は否決されたとすれば提案の理由との整合性を欠く」おそれがある場合にはまとめて一つの議案と数え、それ以外の場合に各事項ごとに一つの議案と数える。
 会計監査人は一企業当たり一会計監査人であるのが通常だが、会計監査人の異なる企業同士が合併した際にそれぞれの監査法人が共同で監査をする場合など一企業に複数の会計監査人が選任されるケースがある。

このうち最も分かりにくいのは(4)だろう。以下、頭に入りやすいようクイズ形式で見ていこう(法制審議会会社法(企業統治等関係)制部会資料23「第2 株主提案権」(6ページ~)をベースに当フォーラムが作成)。

Q1
「監査等委員会の設置」と「監査役及び監査役会の廃止」の2つの議案が提案された場合、これらはまとめて一つの議案と見るか?

A まとめて一つの議案と見る。
会社法上、監査等委員会設置会社は監査役を置いてはならないこととされている(会社法327条4項)。このため、仮に「監査等委員会の設置」議案が可決され、「監査役及び監査役会の廃止」議案が否決されるようなことがあれば、会社法上、整合性を欠くことになる。したがって、両者は「一つの議案」と見ることになる。

Q2
A社は、貸金業及び不動産管理業を行うB社を吸収合併することになった。そこでA社の株主は、A社の定款の事業目的に
(1)貸金業を追加する旨の提案
(2)不動産管理業を追加する旨の提案
を行った。これらはまとめて一つの議案と見るか?

A まとめて一つの議案と見る。
会社法上、吸収合併においては、存続会社(A社)は消滅会社(B社)の権利義務を包括的に承継することになる(会社法2条27号)。このため、仮にA社の定款の事業目的にB社の貸金業を追加する議案のみが可決され、不動産管理業を追加する議案が否決されたとすれば、「消滅会社(B社)の権利義務を包括的に承継する」ことにならず、会社法上、整合性を欠くことになる。したがって、両者は「一つの議案」と見ることになる。

Q3
取締役の員数の枠に余裕がない会社で、将来、有能な社外取締役を新たに外部から招へいすることができるように環境を整備するため、株主が
(1)取締役の員数の枠を拡大する旨の提案
(2)社外取締役と責任限定契約を締結することができるという定めを設ける旨の提案
を行った。これらはまとめて一つの議案と見るか?

A 別個の二つの議案と見る。
一見すると、取締役の員数の枠に余裕がない会社が社外取締役を新たに招へいするには取締役の員数の枠を拡大する必要があり(提案(1))、しかも「有能な」人材に社外取締役になってもらうためには、責任限定契約を用意することも必須となるため、両議案は同時に成立させる必要があるように見える。

しかし、これらの提案は、あくまで「将来的に」有能な社外取締役を外部から招へいすることができるように環境を整備することを目的とする提案であり、仮に一方の議案が可決、もう一方の議案が否決されたとしても、「意味がない」または「支障を来す」というほどのものではない。したがって、両者は別個の二つの議案と見ることになる。

2018/10/15 セミナー「サイボウズ社の働き方改革」および「近時の事例から得られる不祥事防止のポイントと不祥事発生時の対応」を2018年11月20日(火)に開催しました。

本セミナーはすでに開催済みですが、会員の方向けにWEBセミナーを配信中です。
WEBセミナー:サイボウズ社の働き方改革
WEBセミナー:近時の事例から得られる不祥事防止のポイントと不祥事発生時の対応

────────────────────────────────────────

上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、2018年11月20日(火)の14時30分~17時40分に下記のセミナーを開催しました。
詳細はこちらもご覧ください。

時 間 テーマ 講 師
第一部
14:30

16:00
~先進的でユニークな働き方改革の
これまでの効果と今後の計画は?~
サイボウズ社の働き方改革
サイボウズ株式会社
執行役員 関根 紀子 様
第二部
16:10

17:40
~不祥事がなくならないのは何故か?
不祥事発生時に講じる方策は?~
近時の事例から得られる不祥事防止のポイントと不祥事発生時の対応
TMI総合法律事務所
パートナー 弁護士
田代 啓史郎 様

■第一部の詳細

セミナー
の内容
2018年6月29日に国会で成立した働き方改革関連法の施行が2019年4月1日に迫る中、上場企業各社にとって働き方改革は喫緊の経営課題となっていますが、いまだ自社の働き方改革については模索中というところも多いようです。
本セミナーでは、在宅勤務や副業の許可、選択型人事制度、さらに選択した働き方とは異なる働き方を単発することを認める“ウルトラワーク”の導入など先進的でユニークな働き方改革をいち早く打ち出し続け、一時期は3割近くあった高い離職率を4%程度にまで抑えることに成功したサイボウズ株式会社で執行役員を務める関根紀子様をお招きし、これまで同社が実施してきた働き方改革とその効果、社員の反応、今後の計画、働き方改革を進める上での同社のポリシーなどについて語っていただきます。これから働き方改革を進めようという企業にとって参考になるお話が聞けるはずです。
講師の
ご紹介
関根 紀子(せきね のりこ)様
1984年〜小松製作所、ナショナーレネーデルランデン生命保険会社(現エヌエヌ生命)でソフトウエア開発業務に7年間従事。1991年〜米国会計ソフトIntuit社(現弥生株式会社)にてQuickBooksのプロダクトマネージャーなどマーケティング業務に10年間従事。2001年〜サイボウズ入社 メールワイズのプロダクトマネージャー、新規事業部長、マーケティング部長を経て、2015年執行役員カスタマー本部長に就任。サイボウズのファンづくりのためのマーケティングに取り組む一方、プライベートではロードバイクとスキーを趣味とし、毎年ホノルルセンチュリーライドで160kmにチャレンジするのを楽しみにしている。

■第二部の詳細

セミナー
の内容
検査データ改ざん、不適切融資、料金の過大請求等々、ここ最近、大手名門企業での不祥事が相次いで明るみに出ています。外部に出ていないものも含めれば、上場企業で発生する不祥事は毎年相当数に上るものと思われます。世間を騒がす大型の企業不祥事が発生するたびに不祥事防止のための“ケーススタディ”が積み上げられているにもかかわらず新たな不祥事が続々と発生するという事実は、企業が現在講じている不祥事防止策にも見直し・改善の余地があることを示唆しているものと考えられます。
本セミナーでは、訴訟紛争処理や不祥事対応を得意とするTMI総合法律事務所 パートナーの田代啓史郎弁護士をお招きし、最近の不祥事事例に基づき、どのような不祥事防止策が効果的なのかを解説していただきます。また、万が一不祥事が発生してしまった場合、その後の裁判等において、いかにして自社に不利な事態を回避し、回復困難な損害が生じないようにするか、不祥事発生後の情報コントロールや証拠となり得る資料の管理など、不祥事発生後の対応についても最近の事案を踏まえて解説していただきます。これらの解説の中では、海外子会社も対象にした内部通報制度や今年(2018年)6月1日から施行された改正刑事訴訟法により実現した司法取引の活用についても取り上げていただきます。
講師の
ご紹介
田代 啓史郎(たしろ けいしろう)様
一橋大学法学部法律学科卒業。2005年10月 第一東京弁護士会登録とともにTMI総合法律事務所に入所。 2013年5月 デューク大学ロースクール卒業(LL.M.)、同年9月から紛争処理対応等に定評があるロサンゼルスのクイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所に勤務。2014年5月 ニューヨーク州弁護士資格取得。2014年7月にTMI総合法律事務所復帰、2017年1月にパートナー就任。コーポレートガバナンス、IT、知的財産等の企業法務一般を手掛け、その中でも訴訟紛争処理や不祥事対応を得意とする。著書に『IT・インターネットの法律相談』、『知的財産判例総覧2014 Ⅰ』(いずれも青林書院刊)などがある。

なお、セミナー参加費につきましては、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員のみ無料、それ以外の方は22,000円(税込 ※)となっております。
※セミナーお申込み前に会員登録いただくと、セミナー参加費は無料となります。

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非会員で視聴をご希望の方はjimukyoku@govforum.jpまでご連絡いただければメールにてお申し込み方法をお知らせいたします。

その他、ご不明な点等がございましたら、ご遠慮なく jimukyoku@govforum.jp までお問い合わせください。

<セミナー概要>

  • 第一部 サイボウズ社の働き方改革
  • 第二部 近時の事例から得られる不祥事防止のポイントと不祥事発生時の対応
  • 【日時】2018年11月20日(火)14時30分~17時40分
  • 【会場】六本木ヒルズ森タワー22階 TMI総合法律事務所セミナールーム
  • 【受付】六本木ヒルズ森タワーLL階ロビー 14時00分より
  • 【講師】第一部 サイボウズ株式会社 執行役員 関根 紀子 様
        第二部 TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士 田代 啓史郎 様
  • 【セミナー参加費】当フォーラム会員は無料、それ以外の方は22,000円(税込)
お申し込みはこちら

2018/10/15 女性役員(候補)いない企業の指名委員会の構成メンバー全員に反対票

既報のとおり、世界第3位の運用機関である米国のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(以下、SSGA)は「ジェンダー・ダイバーシティ指針」を打ち出し、2017年にまず米・英・オーストラリアから適用を開始したうえで、2018年には日本・カナダ・欧州本土へと適用範囲を拡大、今年日本では、取締役会に女性役員または女性役員候補がいないTOPIX500採用企業の経営トップの再任議案に反対票が投じられている(2018年1月16日のニュース「世界的運用機関が日本企業500社に女性取締役の選任を要求も」参照)。

そのSSGAは(2018年)10月1日付のリリースで、同指針を核とした「恐れを知らぬ少女(Fearless Girl)」キャンペーンが成果を挙げていることを報告している。

2017年3月、ニューヨークのウォール街に「ブル(強気)相場」の象徴として知られる牛の銅像「チャージングブル」に対峙する形で、両腕を腰にあてて立ち向かう「恐れを知らぬ少女(Fearless Girl)」像が出現し、今や観光名所と化しているが、この像を設置したのが他ならぬ・・・

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2018/10/15 女性役員(候補)いない企業の指名委員会の構成メンバー全員に反対票(会員限定)

既報のとおり、世界第3位の運用機関である米国のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(以下、SSGA)は「ジェンダー・ダイバーシティ指針」を打ち出し、2017年にまず米・英・オーストラリアから適用を開始したうえで、2018年には日本・カナダ・欧州本土へと適用範囲を拡大、今年日本では、取締役会に女性役員または女性役員候補がいないTOPIX500採用企業の経営トップの再任議案に反対票が投じられている(2018年1月16日のニュース「世界的運用機関が日本企業500社に女性取締役の選任を要求も」参照)。

そのSSGAは(2018年)10月1日付のリリースで、同指針を核とした「恐れを知らぬ少女(Fearless Girl)」キャンペーンが成果を挙げていることを報告している。

2017年3月、ニューヨークのウォール街に「ブル(強気)相場」の象徴として知られる牛の銅像「チャージングブル」に対峙する形で、両腕を腰にあてて立ち向かう「恐れを知らぬ少女(Fearless Girl)」像が出現し、今や観光名所と化しているが、この像を設置したのが他ならぬSSGAだ(ちなみに、少女像の設置は短期間の予定だったが、設置の恒久化を求める署名運動が広がり、今年末までにニューヨーク証券取引所の近くに移転されることが決まっている)。少女像は「働く女性の地位向上の象徴」にしようと設置されたものだが、この少女像人気の高まりに呼応するように、「恐れを知らぬ少女」キャンペーンも順調に進んでいるようだ。

SSGAは日本企業については、女性取締役が1人もおらずエンゲージメント対象となった281社のうち40社が女性取締役を新たに選任、11社が女性取締役の起用を約束するなど「早い段階から企業の反応が見られた」として高く評価している(同社のリリース参照。以下同)。

そして、SSGAはリリースの中で、ジェンダー・ダイバーシティ指針をさらに強化する方針を明らかにしている。具体的には、これまでは再任議案に反対票を投じる対象を「役員選任に責任を持つ取締役」に限定してきたが、今後はこれを「指名委員会を構成する全ての取締役」にまで拡大する。まず2020年から米・英・オーストラリアで、次いで2021年には日本・カナダ・欧州本土で適用を開始する。これは、各地域でSSGAがキャンペーンを開始して以来、3年連続で未だ成果が見られない企業に対し、エンゲージメントの効果を高めることを目的としているという。

ただ、ここで一つの疑問が浮かぶ。指名委員会等設置会社であれば「指名委員会を構成する全ての取締役」が反対票を投じられる対象になるのは明らかだが、監査役会設置会社および監査等委員会設置会社では、そもそも(任意の)指名委員会を設置していないケースもあれば、設置していたとしてもメンバーが明確でないケースもある。こうしたケースでは、取締役会メンバーの全員(社内および社外)の再任議案に反対票が投じられる恐れがあるという点には留意する必要がある。

なお、従来反対票を投じられる対象となってきた「役員選任に責任を持つ取締役」すなわち経営トップについては、引き続き対象となるのか現段階では不明。指名委員会がある以上、経営トップに独占的な人事権は認められていないことからすると、経営トップが同委員会のメンバーでない限りは対象外になるということも考えらえる。ただ、指名委員会の仕組みが確立している米英においても、これまでは経営トップが対象とされてきたことを考えると、引き続き経営トップは対象とされる可能性は低くないと言えそうだ。

2018/10/12 確約手続対応方針は概ね原案どおり、「証拠化」リスクへの懸念も消えず

公正取引委員会は先月(2018年9月)26日、独禁法上の新たな仕組みである「確約手続に関する対応方針」(以下、成案)を公表したが(公正取引委員会のリリースはこちら)、パブリックコメントに付されていた原案(以下、パブコメ案)からの変更点は僅かにとどまっている。これは、企業側の要望の多くが成案に反映されていないということを示しており、企業側からは確約手続を利用するリスクを懸念する声も上がっている。

確約手続とは、独占禁止法違反の疑いがある場合に、事業者(企業)が公正取引委員会に対し、当該疑いを排除するための措置(以下、確約措置)の実施を“確約”することで、問題の解決を事業者の自主的な取り組みに委ねるもの。TPP(環太平洋経済連携協定)の発効(2019年2月頃の見込み)と同時に、独占禁止法上の新たな仕組みとして導入される予定となっている(確約制度の詳細は2018年8月7日のニュース「確約手続制度のガイドライン案、企業に制度利用を躊躇させる内容も」参照)。

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今回公表された成案のパブコメ案からの主な変更点は次のとおり。・・・

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2018/10/12 確約手続対応方針は概ね原案どおり、「証拠化」リスクへの懸念も消えず(会員限定)

公正取引委員会は先月(2018年9月)26日、独禁法上の新たな仕組みである「確約手続に関する対応方針」(以下、成案)を公表したが(公正取引委員会のリリースはこちら)、パブリックコメントに付されていた原案(以下、パブコメ案)からの変更点は僅かにとどまっている。これは、企業側の要望の多くが成案に反映されていないということを示しており、企業側からは確約手続を利用するリスクを懸念する声も上がっている。

確約手続とは、独占禁止法違反の疑いがある場合に、事業者(企業)が公正取引委員会に対し、当該疑いを排除するための措置(以下、確約措置)の実施を“確約”することで、問題の解決を事業者の自主的な取り組みに委ねるもの。TPP(環太平洋経済連携協定)の発効(2019年2月頃の見込み)と同時に、独占禁止法上の新たな仕組みとして導入される予定となっている(確約制度の詳細は2018年8月7日のニュース「確約手続制度のガイドライン案、企業に制度利用を躊躇させる内容も」参照)。

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今回公表された成案のパブコメ案からの主な変更点は次のとおり。

まず、企業側の要望が反映された格好となったのが、公正取引委員会に対する確約措置の履行状況の報告義務だ。確約手続では、「事業者」または「事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者」が公正取引委員会に対し、確約措置の履行状況を報告することが必要になる。この点についてパブコメ案では「定期的な報告」を求めることとしていたが、企業側から「負担が過度である」との意見が寄せられたことを踏まえ、報告は「1回」でもよいことが明記された(公正取引委員会のリリース別紙4「意見の概要及びそれに対する考え方」の39番の右列参照)。

パブコメ案と成案との対照表(下線部が見直し箇所)
変更箇所 成案 パブコメ案
6 確約計画 確約措置が措置内容の十分性を満たす場合であっても、実際に確約措置が履行されないのであれば、競争秩序の回復が確保できない。
このため、確約措置の履行状況について、被通知事業者又は被通知事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者(公正取引委員会が認める者に限る。)が公正取引委員会に対して報告することは、措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つである。
なお、報告の回数は、確約措置の内容に応じて設定する必要がある
確約措置が措置内容の十分性を満たす場合であっても、実際に確約措置が履行されないのであれば、競争秩序の回復が確保できない。
このため、確約措置の履行状況について、被通知事業者又は被通知事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者(公正取引委員会が認める者に限る。)が公正取引委員会に対して定期的に報告することは、措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つである。
なお、確約措置の内容によっては、公正取引委員会に対する1回の報告で措置実施の確実性を満たす場合も想定される

一方、上記以外では、パブコメ案に寄せられた企業側の意見は成案にはほとんど反映されていない。

パブコメ案の「7 意見募集」では、「公正取引委員会は、申請を受けた確約計画が認定要件に適合するか否かの判断に当たり、広く第三者の意見を参考にする必要があると認める場合には、・・・中略・・・ウェブサイト等を通じて、申請を受けた確約計画の概要について第三者からの意見を募集する場合がある」とされていたが、成案では末尾の「場合がある」が削除されている。これは、この記述は「広く第三者の意見を参考にする必要があると認める場合」であっても、第三者からの意見募集を行わないことがあるかのような誤解を生みかねないため(公正取引委員会のリリース別紙4「意見の概要及びそれに対する考え方」の47番の右列を参照)。

パブコメ案と成案との対照表(下線部が見直し箇所)
変更箇所 成案 パブコメ案
7 意見募集 公正取引委員会は、申請を受けた確約計画が認定要件に適合するか否かの判断に当たり、広く第三者の意見を参考にする必要があると認める場合には、原則として 30 日以内の意見提出期間を定め、ウェブサイト等を通じて、申請を受けた確約計画の概要について第三者からの意見を募集する。 公正取引委員会は、申請を受けた確約計画が認定要件に適合するか否かの判断に当たり、広く第三者の意見を参考にする必要があると認める場合には、原則として 30 日以内の意見提出期間を定め、ウェブサイト等を通じて、申請を受けた確約計画の概要について第三者からの意見を募集する場合がある

逆に言えば、「広く第三者の意見を参考にする必要があるとは認められない場合」には意見募集は行わないという点はパブコメ案から変わっていない。とはいえ、「広く第三者の意見を参考にする必要があるかどうか」を判断するのは公正取引委員会であり、その決定に事業者(企業)が関与することはできない。これに対し、確約計画が第三者の目に触れることにレピュテーションリスクを感じる企業側からは「意見募集にあたり事業者の事前の同意を必要とすべき」との要望が寄せられていたが、成案には反映されなかった。

また、確約計画が公正取引委員会によって認定された場合にも、同委員会はこれを公表することになっている。この点について企業側からは、「公表の方法によってはレピュテーションリスクに対する懸念は払拭できず、企業秘密等の漏洩も懸念される」として、「確約計画の公表に先立って事業者の事前の同意を必要とすべき」との意見が寄せられていたものの、やはり成案には反映されなかった。もっとも、企業秘密の漏洩については、独占禁止法43条で「公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる」とされており、公正取引委員会が「事業者の秘密」まで公表することは法律上許されていない。こうした中、公正取引委員会は、「確約計画の認定に関する公表については、事業者との間で意思疎通を図りながら、独占禁止法43条の規定を踏まえ、御懸念の事態が生じないよう適切に対応」するとしている(公正取引委員会のリリース別紙4の「意見の概要及びそれに対する考え方」の64の右列を参照)。

企業側から修正を求める声が強かったのが、確約措置の典型例である「契約変更」の期限だ。企業が確約計画の認定申請をする場合、公正取引委員会より確約手続の申請に係る通知(本ページの一番上の図の「独禁法の規程に違反する疑いのある行為の概要・法令の条項を通知」)を受け取ってから60日以内に公正取引委員会に対して確約計画の認定を申請(確約認定申請)する必要があるところ、パブコメ案では「公正取引委員会は、確約措置が実施期限内に確実に実施されると判断できなければ、確約計画の認定をすることはない」としたうえで、「例えば、確約措置の内容が契約変更を伴うなど第三者との合意が必要な場合には、当該第三者との合意を確約認定申請時までに成立させなければ、原則として、措置実施の確実性を満たすと認めることはできない」としており、これに対して日本経団連は「60日以内で契約変更にこぎつけるのは困難」として修正を求めていた(2018年8月7日のニュース「確約手続制度のガイドライン案、企業に制度利用を躊躇させる内容も」を参照)。これに対し公正取引委員会は、『「合意の成立」には契約変更の実施が必要ということではなく、例えば、確約計画が認定された場合に契約変更を行うことについて第三者からの事実上の了解を得ることなどが考えられる』としている(公正取引委員会のリリース別紙4の「意見の概要及びそれに対する考え方」の28の右列を参照)。必ずしも契約変更が完了していなくても確約計画の認定が受けられるとの考え方が示された点は評価できるが、「60日以内」というスケジュール自体に変更はないため、企業が確約認定申請を行い場合には確約手続の申請に係る通知を受け取った後迅速に契約変更の交渉に入らなければならないことに変わりはない。

ここまで述べてきたとおり、独占禁止法違反に問われることを回避するための仕組みであるはずの確約制度の中身は、必ずしも企業にとってベストのものとはなっていない。さらに懸念されるのが、企業が確約認定申請にあたって公正取引委員会に提出した資料が、確約手続ではなく、通常の独禁法違反を問う手続(上図の下の流れ)の証拠として使用される可能性もあるという点だ。つまり、企業は通常手続に移行するリスクを考えながら、確約認定申請をせざるを得ないことになる。こうした中、企業側が予見可能性を高める観点から少なくとも確約手続の対象となり得る行為とは何かを事前に明らかにして欲しいと考えるのは当然であり、パブコメ案に対しても「確約手続の対象となり得る行為について、公正取引委員会が確約手続に付すことが適当と判断する際の基準や、確約手続の対象となりやすいと考えられる行為類型、具体的な事例を明示することで、企業の予見可能性を確保するとともに、制度運用の透明性を高めるべきである」といった意見が寄せられていた。しかし、公正取引委員会は「対象となりやすい行為類型があるというものではない」旨回答するにとどまり、結局事例は示されなかった(公正取引委員会のリリース別紙4の「意見の概要及びそれに対する考え方」の9の右列を参照)。企業としては、今後いずれかの企業から出てくるであろう確約計画とそれに対する公正取引委員会の対応事例の集積に期待せざるを得ないのが現状と言えそうだ。

2018/10/11 アムンディ、全投資先の議決権行使でESG実績を考慮

欧州トップの資産運用会社で(資産運用残高約190兆円)、日本にも100%子会社のアムンディ・ジャパンを置くフランスのアムンディ・アセットマネジメントは今月(2018年10月)8日、責任投資(Responsible Investment =RI)の強化を目的とした3か年計画「2021アクションプラン」(以下、アクションプラン)を公表した。

責任投資(Responsible Investment =RI) : 投資判断プロセスにESG(環境、社会、ガバナンス)を反映すること

アクションプランの中で注目されるのが、・・・

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