2018/05/27 ケーススタディ「IR活動により適正な株価を形成したい」を更新しました。

ケーススタディ「IR活動により適正な株価を形成したい」を更新しました。

ケーススタディ「IR活動により適正な株価を形成したい」の「IR活動に必要なスキルとマインド」の最終段落および「チェックリスト」の一番最後に、コーポレートガバナンス・コードの補充原則5-1②(ⅳ)に規定する「対話において把握された株主の意見・懸念の経営陣幹部や取締役会に対する適切かつ効果的なフィードバック」に関する記載を追加しました。

こちらを参照してください。
→ケーススタディ「IR活動により適正な株価を形成したい」の「IR活動に必要なスキルとマインド」
→ケーススタディ「IR活動により適正な株価を形成したい」の「チェックリスト」(会員限定)

2018/05/27 セミナー『2018年6月株主総会分析』および『「改訂コーポレートガバナンス・コード」について』を2018年8月1日(水)に開催しました。

本セミナーはすでに開催済みですが、会員の方向けにWEBセミナーを配信中です。
WEBセミナー:2018年6月株主総会分析
WEBセミナー:「改訂コーポレートガバナンス・コード」について

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上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、2018年8月1日(水)の14時30分~17時40分に下記のセミナーを開催いたします。
詳細はこちらもご覧ください。

時 間 テーマ 講 師
第一部
14:30

16:00
~議決権行使結果の個別開示2年目における注目議案や賛否動向、
改訂CGコードの影響は?~
2018年6月株主総会分析
三菱UFJ信託銀行
証券代行部 次長
中川 雅博 様
第二部
16:10


17:40
~各原則の改訂趣旨、パブコメで寄せられた意見への考え方は?~
「改訂コーポレートガバナンス・コード」について
株式会社東京証券取引所
上場部 部長 林 謙太郎 様

■第一部の詳細

セミナー
の内容
3月決算会社にとって、2018年6月の定時株主総会は、機関投資家が議決権行使結果の個別開示を行ってから初めての定時株主総会となります。各社とも自社の議案に対する機関投資家の賛否動向に敏感になっており、これまで以上にISS等の議決権行使助言会社や各機関投資家の議決権行使基準を意識した議案の増加が予想されるところです。また、今6月総会でも、多くの会社が役員報酬制度の見直しを諮るものと思われますが、3月決算会社に次いで数の多い12月決算会社の3月総会では、報酬枠を大幅に拡大する取締役報酬額改定議案への賛成率が低位にとどまる会社が出るなど、気になる兆候も表れています。さらに、6月から実施される改訂コーポレートガバナンス・コードの内容を先取りする会社が現れるのかも気になるところです。
本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、上記の点などに加え、最近急増している株主提案や注目議案への賛否動向、株主からの特徴的な質問といった株主総会の中身について分析していただくほか、政府が推進する株主総会開催日の分散状況、株主総会来場者の動向、個人株主を集めるための工夫といった株主総会運営上の論点やデータについても解説していただきます。
講師の
ご紹介
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
大阪大学法学部卒、大阪大学大学院法学研究科(修士課程)修了。1990年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。以後、証券代行部門・法人ビジネス部門に所属し、一貫して会社法務に関するコンサルティングを行う。現在、三菱UFJ信託銀行(株)証券代行部次長、全国株懇連合会理事、東京株式懇話会常任幹事(研究部 研究第1部担当)。
ハンドブックシリーズ1「株主総会」(共著:2002年12月・商事法務)、ハンドブックシリーズ2「株式実務」(共著:2003年4月・商事法務)、「委員会等設置会社への移行戦略」(共著:2003年5月・商事法務)、「株券電子化と移行のポイント」(共著:2008年5月・商事法務)、「株券電子化-その実務と移行のすべて」(共著:2008年8月・きんざい)、「全株懇モデル[新訂2版]」(共著:2009年3月・商事法務)、「株式事務の基礎知識」(2009年11月・商事法務)、「株主総会の準備実務・想定問答」(共著:2015年2月・中央経済社)、「新株主総会実務なるほどQ&A」(共著:2015年3月・中央経済社)、「株主総会ハンドブック第3版」(共著:2015年3月・商事法務)、「株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成」(共著:2015年3月・清文社)、「監査等委員会設置会社の活用戦略」(共著:2015年9月・商事法務)など著書多数。

■第二部の詳細

セミナー
の内容
2015年6月に導入されて以来3年が経過し、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が初めて見直されています。改訂コーポレートガバナンス・コードは6月から適用され、上場会社各社は改訂CGコードに基づくコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)を今年末までに提出することが求められますが、改訂コードについてコンプライするにせよエクスプレインするにせよ、改訂の趣旨等を正確に理解しなければ、投資家を納得させるCG報告書を作成することは困難でしょう。CGコードの改訂を主導した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」も、形式的なコンプライは全く望んでいないものと思われます。
本セミナーでは、CGコードを所管する東京証券取引所の上場部で部長を務め、今回のCGコード改訂にも携わった林謙太郎様をお招きし、今回見直しの対象となった各原則の改訂の背景や趣旨、改訂を受け企業に期待される対応などについて、CGコード改訂と同時に公表された金融庁の「投資家と企業の対話ガイドライン」とあわせて解説していただくほか、主に経済界から寄せられたパブリックコメントに対する回答や考え方をお示しいただきます。また、CG報告書の提出や開示における実務上の留意点についてもお話しいただきます。
講師の
ご紹介
林 謙太郎(はやし けんたろう)様
1994年4月に東京証券取引所に入社後、債券部門、上場部門における勤務、証券保管振替機構への出向を経て、2009年6月から現職。証券保管振替機構への出向中には、株式のDVP決済、株券電子化の制度創設に携わったほか、上場部門配属後は、2010年における独立役員制度の導入、今般のコーポレートガバナンス・コードの導入から改訂に至る一連の取組みの企画・立案業務を担当。

なお、セミナー参加費につきましては、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員のみ無料、それ以外の方は22,000円(税込 ※)となっております。

※セミナーお申込み前に会員登録いただくと、セミナー参加費は無料となります。

会員登録はこちらから

非会員で視聴をご希望の方はjimukyoku@govforum.jpまでご連絡いただければメールにてお申し込み方法をお知らせいたします。

その他、ご不明な点等がございましたら、ご遠慮なく jimukyoku@govforum.jp までお問い合わせください。

<セミナー概要>

  • 第一部 2018年6月株主総会分析
  • 第二部 「改訂コーポレートガバナンス・コード」について
  • 【日時】2018年8月1日(水)14時30分~17時40分
  • 【会場】六本木ヒルズ森タワー22階 TMI総合法律事務所セミナールーム
  • 【受付】六本木ヒルズ森タワーLL階ロビー 14時より
  • 【講師】第一部 三菱UFJ信託銀行 証券代行部 次長 中川 雅博 様
        第二部 株式会社東京証券取引所 上場部 部長 林 謙太郎 様
  • 【セミナー参加費】当フォーラム会員は無料、それ以外の方は22,000円(税込)

セミナー参加費の請求書はこちらから

お申し込みはこちら

2018/05/25 【失敗学第48回】日本紙パルプ商事の事例(会員限定)

概要

日本紙パルプ商事(東証第1部)の非連結の完全子会社 JPシステムソリューション株式会社(以下、SS社)が棚卸資産の過大計上による売上原価の不正な先送りをしていた(過年度の決算訂正によりSS社の2017年3月期の期末純資産は465百万円減額された)。

経緯

日本紙パルプ商事が、2018年5月に「社内調査委員会の調査報告書」を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2007年
1月:SS社が設立される。設立当初から売上に対応する売上原価を本来計上すべき案件とは別の案件の売上原価と付け替えたり、売上原価を計上しなかったり(全額を棚卸資産に計上)して、利益を水増ししていた。

2010年
4月:SS社の営業担当のX取締役は取引先 C 社より実体のない架空仕入れを行い、その支払代金の一部につきキックバックを受けていた(2017年12月まで継続されていた)。

2012年
3月期:2012年3月期以降、SS社のX取締役はJ社等に依頼してスルー取引を継続して実施。
12月:SS社はF社に対する循環取引により架空売上を計上。

2013年
1月:SS社がE社に対して架空売上を計上。

2015年
3月期以降:SS社がA社およびB社からの要請により架空売上・架空仕入等を実施。

2017年
11月:日本紙パルプ商事はSS社に対して内部監査を実施(SS社の取引先に対する税務当局の調査の反面調査がSS社のX氏などに対して実施されたことが契機)

2018年
2月28日:日本紙パルプ商事は取締役会で社内調査委員会を設置することを決議し、「当社子会社における不適切な会計処理の可能性」と題する適時開示を行う。
5月18日:日本紙パルプ商事は「社内調査委員会の調査報告書」を公表。

内容・原因・改善策

日本紙パルプ商事が、2018年5月に公表した「社内調査委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

架空売上・架空仕入等の計上
内容 SS社のX取締役が架空売上や架空仕入を計上していた。
原因 (動機)
予算達成のプレッシャー。赤字回避。
(機会)
・SS社は日本紙パルプ商事の子会社といえども非連結子会社であったことから、日本紙パルプ商事の会計監査人による監査対象から外れており、社内規程や業務フローも他の連結子会社に比して十分には整備されていなかった。
・取引の実行者と承認者が同一であった。
・SS社のX取締役の不正取引の裏には外部業者の協力があり、不正が発覚しづらかった。
・SS社では役職員全般においてコンプライアンス意識が欠如していた。
・SS社では販売管理や財務会計のシステムとして安価なパッケージソフトを使用していたため、システム的な統制が十分でなく、原価の付け替えが用意であった。
(正当化)
SS社のX取締役は、不正取引はすべてSS社の売上および利益を上げてSS社を存続させ、ひいては従業員の雇用を守るための行為であると正当化していた。
(その他)
・グループ内部通報制度の周知が不十分
再発防止策 ・日本紙パルプ商事およびグループ子会社の法務・コンプライアンス担当者が集う全社コンプライアンス会議などを通じて、情報を横展開することで子会社支援の充実化を図り、グループ子会社全体の不正防止・業務改善に繋げる。
・子会社の貸借対照表や損益計算書上の情報に留まらず、収益性・効率性・健全性等の財務指標についてもシステム上で管理するとともに、財務指標の標準値を示す中長期の指標一覧を作成し、比較対照することで子会社の異常値を察知・情報共有できる仕組みの構築。
・グループ内部通報制度について役職員への定期的なコンプライアンス研修を実施する。また、同制度を周知するために社内の目立つ場所へポスターを掲示するとともに、PC起動時の画面に同制度を周知するための文言を定期的に表示する。
・日本紙パルプ商事から子会社幹部として出向する者へのコンプライアンス教育
・グループ子会社全体の人事政策の見直し
仕入先からのキックバック
内容 SS社のX取締役は、仕入先の協力のもと、SS社と仕入先との間で仕入取引があったかのように偽り、SS社が支払った代金の一部が当該仕入先からX取締役にキックバックされるようにしていた。
原因 (動機)
X取締役は最重要取引先であるA社を過剰接待し関係を強固なものとすることで自身の社内での立場を確保したかった。もっとも、交際費の枠を超えた分は経費で落とせなかったため、交際費の原資をねん出するために、仕入先を巻き込み架空仕入れによるキックバックを得て、交際費をねん出していた。
再発防止策 上記の「架空売上・架空仕入等の計上」参照
<この失敗から学ぶべきこと>

今回紹介した不祥事は上場会社の「非連結の子会社」で起きました。不祥事が起きた子会社が非連結であれば、当該不祥事が与える連結財務諸表への影響はないかのように思いがちです。しかし、当該子会社株式の減損(価値の低下に伴い簿価を落として損失を計上すること)や売掛金・貸付金などへの貸倒引当金の積み増しを通じて親会社の過年度決算の訂正が必要になる可能性があることには留意しておくべきです。

日本紙パルプ商事の「社内調査委員会の調査報告書」によると、SS社においてはX取締役に営業権限が集中しており、それは日本紙パルプ商事でSS社を「X商店」と呼ぶこともあるほどであったとのことです。このように強大な権限が特定人に集中すると、ガバナンスが不在になり不正を誘発しやすくなります。日本紙パルプ商事の経営陣は、SS社が「X商店」と呼ばれていることを耳にした時点で、SS社においてガバナンスが不在となっている可能性を考慮して、それを解消するための手を打つべきでした。上場会社の経営陣としては、特定人に権限が集中している子会社があれば、ガバナンスが効いておらず何らかの不正が行われている可能性が他よりも高いと考え、決して状況を放置することなく早急にガバナンスを構築するようにしなければなりません。

2018/05/24 デジタル・ディバイドへの配慮と経費削減の間で揺れる総会資料電子化議論

ICTの進化・普及はとどまるところを知らないが、これに伴い、ICTに関する知識の有無による情報格差や経済格差が広がっている。この格差は「デジタル・ディバイド」と言われ、ICT弱者に配慮することは政府の政策課題の一つになっている(例えば総務省では、「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発」の対象事業を公募している)。それは現在法務省で進行中の会社法改正議論においても例外ではなく、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(以下、中間試案)で示された「株主総会資料の電子提供を認める」案を巡っては、デジタル・ディバイドへの配慮の要否が論点化している。

ICT : Information and Communication Technologyの略で、情報・通信に関する技術の総称。ITと同義と考えてよい。近年はITよりICTの方が用語として一般的になりつつある。

中間試案では、株主総会参考書類、議決権行使書面、(連結)計算書類事業報告および連結計算書類(以下「株主総会資料」)を株主に電子提供する案が示されたところだが(中間試案1ページ参照)、(2018年)5月9日に開催された第11回会社法制(企業統治等関係)部会では、インターネット環境にないため株主総会資料の電子提供を受けられないといった株主への配慮の必要性について検討が行われている。中間試案の「株主総会資料の電子提供を認める」案自体には反対意見はなかったため、株主総会資料の電子提供制度の導入はもはや確定したと言って差し支えない。一方、上場会社に株主総会資料の電子提供を「義務付ける」かどうかでは意見が分かれているが、この問題の解消に一役買うことになりそうなのが・・・

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2018/05/24 デジタル・ディバイドへの配慮と経費削減の間で揺れる総会資料電子化議論(会員限定)

ICTの進化・普及はとどまるところを知らないが、これに伴い、ICTに関する知識の有無による情報格差や経済格差が広がっている。この格差は「デジタル・ディバイド」と言われ、ICT弱者に配慮することは政府の政策課題の一つになっている(例えば総務省では、「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発」の対象事業を公募している)。それは現在法務省で進行中の会社法改正議論においても例外ではなく、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(以下、中間試案)で示された「株主総会資料の電子提供を認める」案を巡っては、デジタル・ディバイドへの配慮の要否が論点化している。

ICT : Information and Communication Technologyの略で、情報・通信に関する技術の総称。ITと同義と考えてよい。近年はITよりICTの方が用語として一般的になりつつある。

中間試案では、株主総会参考書類、議決権行使書面、(連結)計算書類事業報告および連結計算書類(以下「株主総会資料」)を株主に電子提供する案が示されたところだが(中間試案1ページ参照)、(2018年)5月9日に開催された第11回会社法制(企業統治等関係)部会では、インターネット環境にないため株主総会資料の電子提供を受けられないといった株主への配慮の必要性について検討が行われている。中間試案の「株主総会資料の電子提供を認める」案自体には反対意見はなかったため、株主総会資料の電子提供制度の導入はもはや確定したと言って差し支えない。一方、上場会社に株主総会資料の電子提供を「義務付ける」かどうかでは意見が分かれているが()、この問題の解消に一役買うことになりそうなのがEDINETだ。

 日本商工会議所や経済同友会は、「株主数が数百から数千程度の二部や新興市場に上場している会社は電子提供制度のメリットを享受することができない」(日本商工会議所)、「会社法によって一律に強制すべきものではない」(経済同友会)などとして、「義務付け」には反対している。また、会社法学者からは「株主数の少ない上場会社については任意採用の余地があってもよい」(慶應義塾大学商法研究会)、「マザーズ、ジャスダック上場会社等への適用の是非について更に議論を行うことを希望する」(中央大学・商法研究者の会)といった慎重な意見も出ている『「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要』の4ページ~参照)。

株主総会資料の電子提供の方法としては、当フォーラムの2017年12月13日のニュース「実現すれば株主総会の後ろ倒し加速も 招集通知提出にEDINET利用案浮上」でもお伝えしたEDINETを利用する案(EDINETを利用して株主総会資料と有価証券報告書を一体化した書類を開示する案)に対し「積極的な意見が多数」(「株主総会に関する規律の見直しについての個別論点の検討」8ページ目参照)となっている。上述の日商の意見にあった「株主数が数百から数千程度の二部や新興市場に上場している会社」も現在EDINETを使って有価証券報告書を提出・開示していることから、電子提供「義務付け」への反対勢力がその根拠の一つに挙げる「小規模上場会社のコスト負担」という問題は、「電子提供の方法」にEDINETを認めれば解決することになる。今後の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、電子提供の方法にEDINETを認めつつ、上場会社への強制適用を図る方向で議論が進むという展開が有力視される。

もっとも、このように株主総会資料の電子提供を徹底すればするほど論点化しやすいのが、冒頭で述べたデジタル・ディバイドだ。すなわち、インターネットのみでしか株主総会資料を閲覧できないとなると、高齢者を中心にICTへの知識、環境が十分でない株主にとって議決権行使が困難になるという懸念である。

中間試案では、「定款で株主総会資料の電子提供を定めた株式会社の株主は、当該株式会社に対し書面(紙の株主総会資料)の交付を請求できる」とする案が提案され、これに対しては賛成意見が多数寄せられたものの、会社側のコスト負担という問題は残る。株主に紙の株主総会資料の交付請求を認めれば、交付を請求した株主に対しては、従来どおり株主総会資料を印刷・製本・郵送しなければならないが、印刷・製本コストには部数に比例しない固定費部分もあり、部数が減っても一定のコスト負担は避けられないからだ。株主数が多い電力会社を束ねる電気事業連合会は「デジタル・ディバイド解消のためと言いながら、デジタル・ディバイドの状況にない株主でも書面交付を請求することができるという建て付けの制度を作れば、結局、相当多数の交付請求がされるという事態を招くことを強く危惧する。また、書面交付請求を認めると、電子提供措置による実益が大きく減ずることとなり、むしろ現行制度よりも対応コストが増大する可能性もある。仮に認めるとしても、時限的措置とすべきである」旨主張し、書面交付請求を認めることに強く反対している。

このように経済界から書面交付請求に対する強い懸念が示される中で注目を集めているのが、中間試案でも示された「定款を変更し、株主の書面交付請求を封じる」案である。この案について経済界からは、「電子提供制度を導入するメリットとして、定款の定めにより書面交付請求を排除することを許容すべきである」(日本商工会議所)、「書面交付請求を認めない定款の定めにより、高齢者等が権利行使することができなくなるという意見があるが、インターネットが使用可能な第三者を介して権利行使をすることは可能であるし、「書面交付請求ができない」ということはその会社に投資をするかどうか考慮する上での要素の一つとも言える」(日本経団連)といった賛成のコメントが寄せられている。

一方で、「株主が議決権を行使する機会およびそのために必要不可欠な情報を入手する機会が、株主総会での多数決(による定款変更)によって奪われるべきでない」(東京証券取引所)といった意見も寄せられている。「デジタル・ディバイドの解消」と「コスト削減」のどちらが優先されるのか、今般の会社法会社の目玉である株主総会資料の電子提供制度の実効性を左右する問題でもあるだけに、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会での議論の行方が注目される。

2018/05/23 政策保有株式、「精査・検証結果」を個別企業ごとに開示する必要は?

6月から適用が開始される改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、改訂CGコード)の確定版の公表が間近に迫っている。現在は、4月29日に締め切られた改訂CGコード案へのパブリックコメントに対する回答の作成等、確定版の公表に向けた最終的な準備が行われているものとみられる。

今回の改訂CGコードの目玉の一つと言えるのが、政策保有株式に関する原則1-4の大幅な見直しだ。

※赤字が改訂部分
【原則1-4.いわゆる政策保有株式】
上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な個別の政策保有株式についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有の ねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

このうち後段の「政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準」として何を書くべきか企業は頭を悩ませているが(2018年4月4日のニュース「政策保有株式開示、何を書く?」参照)、もう一点、企業にとって大きな関心事となっているのが、「個別の政策保有株式」ごとの開示の要否だ。

改訂原則1-4の前段部分には、「毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」とある。「個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証する」ところまではあくまで“社内”の話だが、この精査・検証結果を(政策保有株式として)株式を保有している個別企業ごとに開示するのは避けたいというのが企業の本音であり、経済界も個別企業ごとの開示には強く反対している(2018年5月7日のニュース「改訂CGコードに対する経済界のコメント」参照)。「そうした検証の内容について開示すべきである」という記述からは、個別企業ごとの開示の要否が明確に読み取れないだけに、パブリックコメントでもその真意を問う質問も寄せられている模様だ。

そこで当フォーラムが当局に取材したところ、・・・

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2018/05/23 政策保有株式、「精査・検証結果」を個別企業ごとに開示する必要は?(会員限定)

6月から適用が開始される改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、改訂CGコード)の確定版の公表が間近に迫っている。現在は、4月29日に締め切られた改訂CGコード案へのパブリックコメントに対する回答の作成等、確定版の公表に向けた最終的な準備が行われているものとみられる。

今回の改訂CGコードの目玉の一つと言えるのが、政策保有株式に関する原則1-4の大幅な見直しだ。

※赤字が改訂部分
【原則1-4.いわゆる政策保有株式】
上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な個別の政策保有株式についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有の ねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

このうち後段の「政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準」として何を書くべきか企業は頭を悩ませているが(2018年4月4日のニュース「政策保有株式開示、何を書く?」参照)、もう一点、企業にとって大きな関心事となっているのが、「個別の政策保有株式」ごとの開示の要否だ。

改訂原則1-4の前段部分には、「毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に 伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」とある。「個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証する」ところまではあくまで“社内”の話だが、この精査・検証結果を(政策保有株式として)株式を保有している個別企業ごとに開示するのは避けたいというのが企業の本音であり、経済界も個別企業ごとの開示には強く反対している(2018年5月7日のニュース「改訂CGコードに対する経済界のコメント」参照)。「そうした検証の内容について開示すべきである」という記述からは、個別企業ごとの開示の要否が明確に読み取れないだけに、パブリックコメントでもその真意を問う質問も寄せられている模様だ。

そこで当フォーラムが当局に取材したところ、個別企業ごとの開示までは求められないことが確認されている。この点は、パブリックコメントへの回答としても示されることになろう。改訂原則1-4は個別企業ごとの開示を妨げているわけではないが、相手(株式の保有先企業)がある話である以上、そのような開示を行う企業はあったとしてもごく少数にとどまるものとみられる。企業にとっては、改訂CGコードに関する懸念の一つが解消したと言えそうだ。

2018/05/22 株式報酬を巡る機関投資家のジレンマ

株主との利害共有、株主と目線を合わせるといった観点から株式報酬の導入を推奨する機関投資家は多いが、株式報酬は機関投資家にとっては“痛し痒し”の面もある。なぜなら、株式報酬の支給には・・・

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2018/05/22 株式報酬を巡る機関投資家のジレンマ(会員限定)

株主との利害共有、株主と目線を合わせるといった観点から株式報酬の導入を推奨する機関投資家は多いが、株式報酬は機関投資家にとっては“痛し痒し”の面もある。なぜなら、株式報酬の支給により発行済株式数が増加すると、これにより一株当たりの価値が薄まる(希薄化する)からだ()。

 株式報酬の支給にあたり現金報酬を減額し、かつ現金報酬減額による純資産の増加率が希薄化率(後述)を上回るのであれば一株当たり株主価値は低下しないが、通常はそれほど現金報酬を減額することは考えにくいため、株式報酬に伴う発行済株式数の増加により一株当たり株主価値は低下するのが一般的である。

発行済株式数の増加率(希薄化率とも言われる)は「新規発行株式数 / 既発行株式数」によって計算されることになるが、希薄化すれば、既存株主である機関投資家にとっては一株当たり株主価値が低下するのみならず、議決権比率が低下し、投資先企業への影響力も薄まることになる。そこで、例えばある大手機関投資家は、株式報酬制度の導入に関する議案への賛成の条件として、「希薄化率が10%未満」であることを挙げている。

ここで気になるのは、「10%未満」という数値は単年度で見るのか、あるいは累積年度で見るのかという点だ。実際、上述の大手機関投資家も企業から同様の質問を受けたというが、結論から言えば、基本的には「単年度」で見ることになる。したがって、極端な話、例えば毎年 9%の希薄化率であれば、この機関投資家からはこの機関投資家からは株式報酬制度の導入議案に対して賛成を得られるということになる。

もっとも、機関投資家は希薄化(正確には完全希薄化(Fully Diluted)」の推移を常に気にかけているため、機関投資家が定める単年度の希薄化率を下回っていればそれでよいというわけではない。複数回の株式報酬の支給により希薄化率が高まれば、その支給議案に対して反対することもあり得る。

完全希薄化 : 発行済み株式数のみならず、今後実際の株式に転換される可能性のあるストックオプションや転換社債などまで含めた株式数をベースに計算された希薄化のこと。

こうした中、例えば株式報酬を役員のみならず従業員にも多⽤する米国企業では、毎回、希薄化を伴いながら株式報酬を支給するのではなく、自社株買いにより“在庫”として保有していた株式から株式報酬を支給するようにしているという。今後、株式報酬を積極的に取り入れていこうという日本企業は、併せて自社株買いも検討する必要があろう。