連日の暴騰で、一部ではもはや“バブル”とも評価されているビットコインを筆頭に、仮想通貨への注目が高まっている。
仮想通貨の最大の特徴と言えるのが送金コストの低さだ。円など通常の通貨を送金する場合、数百円のコストがかかるが、仮想通貨であれば取引所によっては無料のところもあるほどだ。
また、インターネットを用いた技術であるため、インターネット上のサービスとの親和性が高い。例えばメールやアプリを使って送金ができる。さらに、仮想通貨を付与することをウリにした新規顧客獲得キャンペーン、自社発行のポイントとの交換にも利用できる。このほか、クレジットカードの加盟店手数料に相当する手数料の率(取引所へ支払う手数料のレート)が低いことから、店舗やサイトでクレジットカード代わりに決済手段として利用するメリットもある。今年(2017年)の4月に一部の店舗限定でビットコインを取引手段に採用したビックカメラは、7月にはすべての店舗でビットコインを使えるようにし、最近になって取引上限額も従来の10万円から30万円に増額した(こちらを参照)。
取引所へ支払う手数料のレート : 後述するビットフライヤーの場合、1%が上限。クレジットカードの加盟店手数料率は業態にもよるが概ね3~7%となっている。
ちなみにビックカメラが利用しているのは、仮想通貨取引所のビットフライヤーのサービスである。ビットフライヤーが提供している企業向けの決済サービスには、利用企業が受け取ったビットコインをすぐに同社が運営する取引所で売却できる機能があり、その機能を利用することで、従来の日本円通貨による決済と同様に会計処理を変えることなく売上高を円で計上することができる(詳細はこちらのページの左下を参照)。ビットコインは時価が乱高下しやすいだけに、決済サービスを利用する企業にとって、ビットコインを抱えずに済むのはリスク・コントロールの観点から望ましいと言える。ビットコインの売却代金が円に転換されるのは最短で翌日。これであれば、決済サービスの利用企業はビットコインの価格変動リスクを負わずに「利益率の改善」や「運転資金の減少」を実現できる。エイチ・アイ・エス、メガネスーパー、丸井もビットコインを決済手段に導入(丸井は試験導入)しており、こうした流れはBtoC事業を中心に広がりを見せつつある。仮想通貨を決済手段として採用するのが“業界初”となれば、ニュースで取り上げられる機会も増え、先進的な企業イメージの形成効果も期待できる。
利益率の改善 : 決済手段をクレジットカードからビットコインに変更することによる手数料率の減少
運転資金の減少 : クレジットカードによる決済の場合、クレジットカード会社からの入金は取引から1月以上経過してからだが、ビットコインの場合は最短で取引の翌日に円に転換されるため、運転資金が少なくて済む。
もっとも、ビックカメラのように決済手段としての仮想通貨の利用に積極的な企業がある一方で、オンラインゲーム配信サービスのSteamを運営しているValve(米国)のようにビットコインによる決済を取りやめる企業(同社のリリースはこちら)も出てきている。Valveがビットコインによる決済を取りやめた理由は、取引所に支払う手数料の高騰(決済手段に採用した当時と比べて100倍)やビットコイン自体の価格の(急激な)変動リスクの高さにある。Steamではビットコイン入金後の価格変動リスクをゲームのユーザーが負う仕組みとなっていたため、ビットコインの価格高騰により追加入金が必要になるなどユーザーに不利益を強いる結果となった。これに対しビックカメラは、店舗も利用者もビットコイン入金後の価格変動リスクを負わない仕組みを採用している。自社の取引の決済に仮想通貨の導入を考えている企業は、ビックカメラと同様、自社および顧客が取引後に価格変動リスクを負わない仕組みを採用すべきだろう。
とはいえ、ICO(Initial Coin Offering)には金融詐欺、資金洗浄、テロリストの資金調達に利用されるリスクが高いとして中国・韓国のようにICOを禁止する国があったり、ビットコイン取引所のマウントゴックスが破たんしたりと、仮想通貨への不信感はぬぐい切れないのも事実であり、今のところ、自社の取引の決済に仮想通貨を導入するには時期尚早と判断している企業の方が多数派と言えよう。
ICO(Initial Coin Offering) : 新たに開発した仮想通貨を売り出すこと。新仮想通貨を開発した企業はICOで得た資金で、開発した仮想通貨の維持コストや新たな仮想通貨の開発コストを賄う。
こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は12月6日、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いを明らかにする実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表している(2018年2月6日までパブコメを募集)。
本公開草案によると、仮想通貨利用者の会計処理は「当該仮想通貨に活発な市場が存在するかどうか」により下表のように分かれることとなる。
| 活発な市場の有無 |
仮想通貨利用者の会計処理案 |
当該仮想通貨に活発な市場が
存在する場合 |
市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。 |
当該仮想通貨に活発な市場が
存在しない場合 |
当該通貨の取得原価をもって貸借対照表価額とする。
期末における処分見込価額(ゼロまたは備忘価額を含む)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。
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備忘価額 : 実質的価値がゼロになった資産について、ゼロ円で評価替えすると帳簿上存在しないことになるため、管理の観点から便宜上最小の価格として1円で評価替えした価額のこと
上表の上段の「活発な市場が存在する場合」とは、仮想通貨利用者が保有する仮想通貨について、「継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう」とされる。逆に言うと、上表下段のように「当該仮想通貨に活発な市場が存在しない場合」には、市場価格があるとは言えないことから、仮に含み益があっても利益は計上せず、貸借対照表に記載する金額は取得原価のまま据え置くことになる(反対に含み損がある場合は“収益性の低下”を反映させるため損失を計上する)。なお、仮想通貨利用者が仮想通貨を売却する場合には、売却収入から売却原価(簿価)を控除した金額を損益計算書に表示することになる(仮に「売却収入<売却原価」なら売却損が計上される)。また、期末日において保有する仮想通貨があれば、当該仮想通貨の貸借対照表価額の合計額のほか、「活発な市場が存在する仮想通貨」と「活発な市場が存在しない仮想通貨」に分類した上で、それぞれに属する仮想通貨の種類ごとの保有数量および貸借対照表価額を注記する案も示されている。これら仮想通貨に関する実務対応報告の適用開始日は「2018年4月1日以後開始する事業年度の期首」からが予定されているが、「公表日以後終了する事業年度および四半期会計期間」から早期適用も可能となっている。
仮想通貨は、訪日客の決済手段としても注目を集めている。現在は落ち着きを見せているインバウンド需要も、今後2020年の東京オリンピックに向けて再び高まることが予想される。会計処理・開示のルールも近く確定するということで、BtoC事業を営む企業は、仮想通貨を自社の決済手段として採用するかどうか、そろそろ検討を開始してもよいタイミングだろう。自社の投資家への説明責任を果たすことを考えると、「活発な市場が存在しない仮想通貨」を決済手段として採用するのは避けた方がよさそうだ。