2017/12/15 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第七弾

当フォーラムでは、一橋大学の円谷准教授の協力を得て、有力企業の株主総会上程議案に対する主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析しているが、第7回目となる今回は・・・

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2017/12/15 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第七弾(会員限定)

当フォーラムでは、一橋大学の円谷准教授の協力を得て、有力企業の株主総会上程議案に対する主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析しているが、第7回目となる今回はりそなホールディングス(以下りそなHD)の株主提案議案を取り上げる。

主要国内機関投資家による議決権行使結果 第一弾(2017年11月6日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第二弾(2017年11月13日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第三弾(2017年11月22日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第四弾(2017年11月30日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第五弾(2017年12月4日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第六弾(2017年12月11日掲載)はこちら

りそなHDの2017年6月の株主総会では、「株主提案」として18個の議案が上程された。これらの議案は2名の株主によるもので(1名が1議案、もう1名が17議案を上程)、取締役会はこれら全ての議案に対して反対を表明していた。下表は特に賛成率が高かった議案とその賛成率である。なお、その他の株主提案に対する賛成率は2〜4%にとどまった。

議案 内容 賛成率
定款一部変更の件④ 役員報酬の個別開示 42.94%
定款一部変更の件⑤ 取締役会議長と最高経営責任者の分離 36.95%
定款一部変更の件⑦ 政策保有株式の議決権行使 33.48%

④の議案は、取締役の報酬について、個別の金額と内容を事業報告と有価証券報告書で開示することを義務付ける条項を定款に規定することを求めるもの。⑤は取締役会議長と最高経営責任者の兼任を原則禁止とし、議長は社外取締役でなければならないとすること、⑦は政策保有株式の議決権行使を、議決権行使助言会社の意見を聞くなどして適切に実施することを、それぞれ定款において定めることを提案している。

これら3つの株主提案に対して取締役会は、④の役員報酬の個別開示については、報酬委員会が客観性と透明性を確保していることなど、⑤の取締役会議長と最高経営責任者の分離については、議長(現在は社長が兼任)が全取締役から毎年評価を受ける仕組みがあることなど、⑦の政策保有株式の議決権行使については、既に議決権行使基準を定めて公表していることなどを、株主提案に反対する理由として株主招集通知において挙げている。

機関投資家の反応を分析すると、まず④役員報酬の個別開示に賛成した国内機関投資家としては、アセットマネジメントOne、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント、T&Dアセットマネジメント、東京海上アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、ピクテ投信投資顧問、三井住友アセットマネジメントなど、相当数が確認された。次に⑤取締役会議長と最高責任者の分離にはアセットマネジメントOneとT&Dアセットマネジメント、ピクテ投信投資顧問が、⑦政策保有株式の議決権行使にはアセットマネジメントOneとピクテ投信投資顧問がそれぞれ賛成していることが分かった。

3つの議案全てに賛成したアセットマネジメントOneの「国内株式の議決権行使に関するガイドラインおよび議案判断基準」は、株主提案について、株主価値向上に資する議案については原則として賛成すること、政治的問題解決や社会的問題解決などの目的を持つと推測される議案には原則反対であることを定めている(10ページ「(4)株主提案」参照)。同様に多くの投資家は、一般的な基準を設けた上で個別判断するとしており、各投資家によって「株主価値向上に資する」か否かの判断が分かれたということだろう。なお、アセットマネジメントOneは中部電力の株主提案には4議案全てに反対しているが、これは「社会的問題解決などの目的」とみなしたためだと思われる。

ところで、野村アセットマネジメントの「日本企業に対する議決権行使基準」では、原則賛成とする株主提案議案の具体例が示されている(13ページ15.株主提案(3)参照)。その中には「役員報酬の個別開示を求めるもの」「最高経営責任者が取締役会議長を務めることを禁止または排除するもの」「政策保有株式に関わる議決権行使方針の策定または開示または議決権行使結果の開示を求めるもの」が挙げられており、上述の3議案は全てこれらに該当するように見える。しかし、野村アセットマネジメントが実際に賛成したのは④の役員報酬の個別開示のみであった。逆に言うと、⑤の取締役会議長と最高経営責任者の分離、⑦の政策保有株式の議決権行使については、りそなHD取締役会の反対理由に説得力が認められたということかもしれない。

2017/12/14 企業の守秘・保管コストが大幅減へ

企業活動に大きな影響を与える来年度の税制改正の方向性をとりまとめた平成30年度(2018年度)税制改正大綱が本日公表された。

“賃上げ・投資減税”(70ページ「三 法人税 1.賃上げ・生産性向上のための税制」参照)、自社株対価TOBが行われた場合における被TOB会社の株主への課税の繰延べ措置(44ページ(8))など“派手”な改正項目(2017年12月12日のニュース「現預金不要のM&Aが容易に 賃上げ・設備投資へのプレッシャー高まる」参照)に比べると一見地味ながらも、実は企業にとって莫大なコスト削減につながる可能性が高い改正として注目を集めているのが、・・・

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2017/12/14 企業の守秘・保管コストが大幅減へ(会員限定)

企業活動に大きな影響を与える来年度の税制改正の方向性をとりまとめた平成30年度(2018年度)税制改正大綱が本日公表された。

“賃上げ・投資減税”(70ページ「三 法人税 1.賃上げ・生産性向上のための税制」参照)、自社株対価TOBが行われた場合における被TOB会社の株主への課税の繰延べ措置(44ページ(8))など“派手”な改正項目(2017年12月12日のニュース「現預金不要のM&Aが容易に 賃上げ・設備投資へのプレッシャー高まる」参照)に比べると一見地味ながらも、実は企業にとって莫大なコスト削減につながる可能性が高い改正として注目を集めているのが、企業が市区町村から書面(紙)で受け取る役職員の個人住民税額が明記された「特徴税額通知(特徴義務者用)」にマイナンバーが記載されないことになったという点だ(45ページ(13)参照)。

特徴税額通知には納税者(役職員)向けの「納税義務者用」と個人住民税の徴収義務者である企業(特別徴収義務者と呼ばれる)向けの「特徴義務者用」の2種類があるが、同じ特徴税額通知でも、マイナンバーの記載ルールは異なっている。

「納税義務者用」の特徴税額通知は「自治体→企業→納税者」という流れで最終的には納税者である役職員個人に交付されることになるが、最終的に個人の手に渡るだけに、仮にこの書類にマイナンバーが記載されるとなると、企業の守秘・保管コストは莫大なものとなりかねない。そこで個人住民税について規定する地方税法上、マイナンバーの記載は不要とされている。ちなみに、「納税義務者用」の特徴税額通知については、現状では全て“紙”で通知が行われていることによる事務負担(特徴税額通知の開封、確認、システムへの入力、役職員への配布、保管など)が問題となっており、2017年6月9日に閣議決定された「規制改革実施計画」には、特徴税額通知の電子化について「平成29年検討、結論を得次第速やかに措置」することが明記されていた(17ページ 2「住民税の特別徴収税額通知の電子化等」b参照)。しかし、そもそもマイナンバーの普及率が極めて低いことや、いまだ電子的送付に対応できる市区町村が半数にも満たないことなどから、平成30年度税制改正での導入は見送りとなった。

したがって、企業は「納税義務者用」の特徴税額通知については引き続き事務負担を負うことになるが、その一方で、企業にとって大幅なコスト削減につながりそうなのが、上述したとおり書面(紙)による「特徴義務者用」の特徴税額通知にマイナンバーが記載されないことになったということだ。「特徴義務者用」の特徴税額通知は「自治体→企業」に交付されるが、その後「役職員」に交付されることはない。市区町村の電子化の達成率は未だ低く、紙により「特徴義務者用」の特徴税額通知が行われることが少なくない。企業からすれば自社の従業者の個人番号はわざわざ市区町村から通知されなくても知っているのが通常であるにもかかわらず、マイナンバーが記載された紙の特徴税額通知が送られてくれば膨大な守秘・保管コストが発生することになる。「特徴義務者用」の特徴税額通知にはマイナンバーを記載することは現状では法律事項(地方税法321条の4、地方税法施行規則第3号様式)となっているが、産業界からは「個人番号の記載なしで統一して欲しい」との要望が上がっていた。

そこで平成30年度税制改正では、産業界の要望を受け入れる形で、特別徴収義務者用の通知を紙により行う場合には、当面マイナンバーを記載しなくてよいこととされた。特徴税額通知を電子的(具体的には「eLTAX」という地方税における手続きをインターネットを利用して電子的に行うシステム)に行う場合には引き続きマイナンバーが記載されるが、紙に比べれば保管コストは各段に低くなる。

上述のとおり、市区町村の電子化の達成率が低い状態が続く中でマイナンバーが記載された紙の特徴税額通知が企業に送付され続ければ、企業の守秘・保管コストも継続的に生じる恐れがあっただけに、平成30年度税制改正は企業にとって大幅なコスト低減につながるグッドニュースと言えよう。

2017/12/13 実現すれば株主総会の後ろ倒し加速も 招集通知提出にEDINET利用案浮上

コーポレートガバナンスに関係する会社法の改正に向けて議論を重ねている法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、株主総会資料(招集通知等)の電子提供制度の導入がテーマに上がっているのは周知のとおりだが(株主総会資料の電子提供制度については2017年6月15日のニュース『株主総会資料の電子提供制度、「招集の通知」は引き続き“紙”で』、2017年4月27日にニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、ここに来て株主総会資料の電子提供に・・・

株主総会資料(招集通知等)の電子提供制度 : 株主総会参考書類や、計算書類、事業報告等の株主総会の招集の通知に際して提供しなければならない資料を、インターネットを利用する方法により株主に提供すること

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2017/12/13 実現すれば株主総会の後ろ倒し加速も 招集通知提出にEDINET利用案浮上(会員限定)

コーポレートガバナンスに関係する会社法の改正に向けて議論を重ねている法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、株主総会資料(招集通知等)の電子提供制度の導入がテーマに上がっているのは周知のとおりだが(株主総会資料の電子提供制度については2017年6月15日のニュース『株主総会資料の電子提供制度、「招集の通知」は引き続き“紙”で』、2017年4月27日にニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、ここに来て株主総会資料の電子提供にEDINETを利用する(事業報告等の記載事項を含む有価証券報告書を、株主総会前に金融商品取引法上の書類としてEDINETで開示する場合についても、株主総会資料の電子提供として認められるようにする)という案が浮上している(2017年12月6日に開催された第8回会議の資料を参照)。

株主総会資料(招集通知等)の電子提供制度 : 株主総会参考書類や、計算書類、事業報告等の株主総会の招集の通知に際して提供しなければならない資料を、インターネットを利用する方法により株主に提供すること
EDINET : Electronic Disclosure for Investors’ NETworkの略。金融商品取引法に基づく有価証券報告書や臨時報告書等の開示書類を電子的に提出・縦覧するシステム。

元々、株主総会資料の電子提供制度に関する議論では、もっぱら企業のウェブサイト上で株主総会資料を提供することが前提となってきた。これは、2017年4月26日に開催された第1回目の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会で示された部会資料1「企業統治等に関する規律の見直しとして検討すべき事項」における株主総会資料の電子提供制度の補足説明のほか、第2回(2017年5月24日開催)の部会資料2「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討」や第6回(2017年10月4日開催)の部会資料8「株主総会に関する手続の合理化に関する論点の検討(2)」で、同制度について「インターネットを利用する方法」や「ウェブサイトに掲載」としか説明されていないことからもうかがえる。

今回、株主総会資料の電子提供制度にEDINETのプラットフォームを利用する案が急浮上した理由の1つに「システムの安定性」が挙げられる。万が一インターネット上にアップした株主総会資料がシステムトラブルによりインターネットを通じて閲覧できなくなった場合、閲覧できなかった時間の長さ次第でそれが株主総会決議の取消事由になり得るが()、国営のシステムであるEDINETであれば、定期保守を除き「24時間365日稼働」(第8回会議で金融庁が提出した資料より)しており、企業のウェブサイトよりシステム的にはるかに安定している。

 全株懇は、株主総会資料の電子提供制度を導入するのであれば、システム障害等によりウェブサイトの資料掲載が中断するリスクに備えたルール作りが必要であると提言している(全株懇の提言は2017年8月29日のニュース「全株懇、株主総会資料の電子提供義務付けを提言」を参照)。

また、EDINETの利用が可能となれば、各企業のコストで実施することが求められる電子提供措置の調査が不要になることも見込まれる。EDINETは「開示書類が継続して公衆縦覧に供されることが法令によって担保され、安定的に運用されているシステムであり、かつ、企業が一度開示した書類を任意に改変することはできない仕組みとなっている」(上記の第8回会議で金融庁が提出した資料より)からだ。また、現行の開示府令が、EDINETで有価証券報告書を開示する際に招集通知等の一部を構成する事業報告・計算書類を添付することを求めていることも、EDINET活用案を後押ししている。

電子提供措置の調査 : 株主総会資料が一定期間継続して公衆縦覧に供されていることを第三者が確認すること。株主総会資料の電子提供制度が導入された場合、併せて導入される可能性がある。

株主総会資料の電子提供制度にEDINETが利用されることとなった場合、株主総会後ろ倒し開催を加速させることになりそうだ(株主総会の後ろ倒し開催については2017年11月7日のニュース「株主総会日程の後ろ倒しに向けた“最後のボトルネック”が解消」を参照)。株主総会資料の電子提供制度がスタートすれば、「株主総会資料を電子提供した」というためには、従来の「招集通知の発送」のタイミングで有価証券報告書を財務局に提出する必要がある。すなわちこの場合、必然的に定時株主総会の開催は有価証券報告書提出“後”となる。3月決算企業の場合、有価証券報告書の提出は6月下旬になることが多いため、EDINETを利用した株主総会資料の電子的提供は、株主総会の後ろ倒し開催(例えば7月開催)になじむ。そう考えると、これも株主総会後ろ倒し開催に向けた制度整備の一環と見ることもできそうだ。

2017/12/12 現預金不要のM&Aが容易に 賃上げ・設備投資へのプレッシャー高まる

財務省の法人企業統計調査によると、企業の現金・預金等は2016年度に228.5兆円と過去最高を記録したという。こうした中、従来からの株主による株主還元(配当や自社株買い)要求に加え、政府からは積み上がった現預金を賃上げや設備投資に回すよう企業に圧力がかかっている。具体的には、・・・

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2017/12/12 現預金不要のM&Aが容易に 賃上げ・設備投資へのプレッシャー高まる(会員限定)

財務省の法人企業統計調査によると、企業の現金・預金等は2016年度に228.5兆円と過去最高を記録したという。こうした中、従来からの株主による株主還元(配当や自社株買い)要求に加え、政府からは積み上がった現預金を賃上げや設備投資に回すよう企業に圧力がかかっている。具体的には、平成30年(2018年)度税制改正により「賃上げや設備投資」に積極的な企業の法人税を減税する一方で、消極的な企業に対しては研究開発税制などの「租税特別措置」の適用を制限することで法人税の負担を重くする“賃上げ・投資減税”を導入する(2017年11月27日のニュース「税負担に雲泥の差も!税金を意識した設備投資や賃金の検討が必須に」参照)。

研究開発税制 : 例えば、試験研究費の総額に対し一定割合(複数の計算方法があるが、例えば、試験研究費の増減に応じて6~14%。増加率が高いほど控除率が高くなる)をその事業年度の法人税額から控除する。
租税特別措置 : 一定の条件を満たすことで税金が軽減される優遇措置のこと

ただ、こうした動きに対し、企業からは「成長投資に向けたM&Aの資金として手元現預金が必要」との声もある。こうした声を受け、同じく2018年度税制改正で実現することが確実となったのが、自社株対価TOBが行われた場合における被TOB会社の株主への課税の免除だ(2017年9月22日「自社株対価TOBが各段に実施しやすく」参照)。

自社株対価TOBが行われた場合、被TOB会社の株主は、被TOB会社の株式をTOBを行う会社に引き渡す必要があり(その代わり、TOBを行う会社の株式を入手)、この場合、被TOB会社の株主に課税が生じる可能性がある((「入手したTOB会社の株式の時価>引き渡した被TOB会社の株式の時価」の場合。詳細は自社株対価TOBの3段落目参照)。これがこれまで自社株対価TOBが利用されてこなかった最大の理由だが、2018年度税制改正では、当該TOBが産業競争力強化法による認定を受けることを条件に、被TOB会社の株主に生じる被TOB会社株式の渡損益を繰り延べる。すなわち、自社株対価TOBが行われた時点では(被TOB会社の株主に生じる譲渡益に対し)課税せず、将来、TOB会社の株式(自社株TOBを通じ、被TOB会社の株主が、被TOB会社株式と引き換えに取得したもの)を売却した際まで“先送り”するということだ。

産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律

今回の措置について政府関係者は、「自社株対価TOBに関する税制措置を認めることによって、M&Aには必ずしも現預金は必要なくなる。したがって、現預金は賃上げ・設備投資の原資として使用できる余地が増える」と話す。企業に対する賃上げ、設備投資へのプレッシャーは益々強まる可能性もあろう。

この自社株対価TOBに関する税制措置のほか、政府はある事業を売却したことにより売却益が生じたとしても、別事業をセットで購入する場合にはその売却益を“圧縮”する(その結果、税負担も減る)という特例措置の導入も検討していたが(2017年8月30日のニュース「事業の売却に伴う税金が先送りも」参照)、こちらは企業が過去最高収益を計上する中、大規模な課税繰延べ措置を講じることに政策的意義が見出せないとして、財務省が早い段階で難色を示していたこともあり実現しなかったことが当フォーラムの取材により確認されている。

2017/12/11 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第六弾

当フォーラムでは、一橋大学の円谷准教授の協力を得て、有力企業の株主総会上程議案に対する主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析しているが、6回目となる今回は・・・

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2017/12/11 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第六弾(会員限定)

当フォーラムでは、一橋大学の円谷准教授の協力を得て、有力企業の株主総会上程議案に対する主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析しているが、6回目となる今回は三井住友トラスト・ホールディングス(以下SMTB)と本田技研工業(以下ホンダ)の定款一部変更議案を取り上げる。

主要国内機関投資家による議決権行使結果 第一弾(2017年11月6日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第二弾(2017年11月13日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第三弾(2017年11月22日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第四弾(2017年11月30日掲載)はこちら
主要国内機関投資家による議決権行使結果 第五弾(2017年12月4日掲載)はこちら

2017年6月の株主総会において、両社は定款の一部を変更する議案を上程した。SMTBの議案の内容は指名委員会等設置会社への移行、事業目的の変更および株主総会招集権者の変更であり、ホンダの議案の内容は監査等委員会設置会社への移行である。結果はいずれの議案も過半数の賛成を得て可決された。それぞれの議案への賛成率は以下のとおり。

社名 議案 賛成率
三井住友トラスト・ホールディングス 定款一部変更の件 92.34%
本田技研工業 定款一部変更の件 94.28%

いずれの議案も賛成率90%を確保しており、一般的な見方としては“圧倒的な信任”を得たに等しい。ただし、両社が上程した他の議案の賛成率と比較すると、必ずしも全ての機関投資家が賛成したとは考えにくい。SMTBは剰余金処分案と取締役15名の選任議案を併せて上程したが、いずれも賛成率は93〜98%で定款変更議案よりも高い支持を受けている。ホンダの剰余金配当、取締役14名(監査等委員5名を含む)選任、そして取締役報酬額決定の閣議案は91〜96%の賛成率で、定款変更議案はそれらの中位にとどまることから、やはり若干の否定的な見解があったものと推測できる。

SMTBの定款変更議案に反対した国内機関投資家としては、大和住銀投信投資顧問とT&Dアセットマネジメントの2つが確認された。同社は、指名委員会等設置会社への移行に伴う一連の定款変更として「取締役会決議により取締役および執行役の責任を免除できる」旨の規定を新設している。大和住銀投顧の「議案別議決権行使ガイドライン」では責任減免議案について、「社外取締役・監査役のみを対象とする場合は原則賛成」としている(「(キ)定款変更に関する議案 (b)コーポレート・ガバナンス構造に関する議案」の上から5つ目参照)。同社の議案は社内取締役および執行役も対象としているため、反対に至ったと考えられる。一方、賛成した大和証券投資信託委託の「議決権行使の賛否判断基準」では、「取締役・監査役・会計監査人」の責任限定に賛成すると明記されている(「(19) 定款変更⑯」参照)。

ホンダの定款変更議案に対しては、T&Dアセットマネジメントが反対している。その「個別の議案に対する考え方」では、定款変更について、「剰余金処分の決定機関として株主総会を排除する場合」および「取締役の定員が企業規模に照らして適正でない場合」の2パターンのみ反対するとしている(「5. 定款変更」参照)。同社議案では取締役を「20名以内」(変更前は15名以内)としており、これが「適正でない」と判断されたのかもしれない。なお、大和住銀投顧の前出ガイドラインには取締役の定員見直しについて、「20名以上」への増員には反対すると記載されているが(「(キ)定款変更に関する議案(b)コーポレート・ガバナンス構造に関する議案」の上から8つ目参照)、同社議案に対しては賛成している。監査等委員会設置会社への移行に伴うものとして、「該当せずと」判断した可能性がある。監査役に代わり監査等委員として取締役を選任することによる取締役の増加は止むを得ないとも言える中で反対票を投じたT&D アセットマネジメントの判断の方が厳しいと言えそうだ。