2017/10/03 全株没収型のリストリクテッド・ストックを導入する際の留意点

【2017年7月の課題】「役員報酬のトレンド」でもお伝えしたとおり、ウイリス・タワーズワトソンと三菱UFJ信託銀行の共同調査によると、2017年6月総会で株式報酬を導入した企業83社のうち67社が業績に連動しないリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)を選択している。これに対しパフォーマンス・シェアは21社、パフォーマンス・シェア・ユニットは14社と、業績に連動する株式報酬を採用する企業は少数派にとどまっている。まずは(業績と連動しないという点で)無難で、かつ損金算入のハードル()が低いストリクテッド・ストックが選ばれた格好となっている。

リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式) : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬。
パフォーマンス・シェア : 中長期的な“業績目標の達成度合い”に応じて交付される株式報酬。ここでは、業績評価期間(待期期間)の当初株式が付与されるタイプのパフォーマンス・シェアを想定している。
パフォーマンス・シェア・ユニット : 当初から現物株式を付与するのではなく、まずは役位等に応じて一定数のユニット(単位)を付与し、一定の業績評価期間(待機期間)を経た後に、目標業績や株価等の達成度に応じてユニット数を上下させ、そのユニット数に応じた株式を付与するタイプの株式報酬。パフォーマンス・シェアは当初から株式が付与されるのに対し、パフォーマンス・シェア・ユニットで業績評価期間(待機期間)を経てから株式が付与されるという点で両者は異なる。

 ・リストリクテッド・ストックは、業績や株価によって譲渡制限が解除される株式数が変動しない限り、法人税法上、「事前確定届出給与」として損金算入が可能。
・パフォーマンス・シェアは損金算入が認められない。
・パフォーマンス・シェア・ユニットは「業績連動給与」として損金算入することが可能であるが、損金算入のためには、その具体的な算定方法(例:株式報酬のトータルの上限額、役位毎の株式数または額、具体的な評価指標、株式交付数の算定式等)を有価証券報告書で詳細に開示する必要があり、企業にとってハードルが高い。

事前確定届出給与 : いつ、どれくらい(確定額、確定した株式数・新株予約権など)支給するかを“事前に”確定した上で原則として税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの。
業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。

2017年6月総会での株式報酬の導入を見送った企業も少なくない中、今後株式報酬の導入を検討する企業にとって、当面はリストリクテッド・ストックがファーストチョイスとなることも予想される。

ただし、リストリクテッド・ストックを導入する際にもいくつか留意点がある。まず、・・・

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2017/10/03 全株没収型のリストリクテッド・ストックを導入する際の留意点(会員限定)

【2017年7月の課題】「役員報酬のトレンド」でもお伝えしたとおり、ウイリス・タワーズワトソンと三菱UFJ信託銀行の共同調査によると、2017年6月総会で株式報酬を導入した企業83社のうち67社が業績に連動しないリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)を選択している。これに対しパフォーマンス・シェアは21社、パフォーマンス・シェア・ユニットは14社と、業績に連動する株式報酬を採用する企業は少数派にとどまっている。まずは(業績と連動しないという点で)無難で、かつ損金算入のハードル()が低いストリクテッド・ストックが選ばれた格好となっている。

リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式) : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬。
パフォーマンス・シェア : 中長期的な“業績目標の達成度合い”に応じて交付される株式報酬。ここでは、業績評価期間(待期期間)の当初株式が付与されるタイプのパフォーマンス・シェアを想定している。
パフォーマンス・シェア・ユニット : 当初から現物株式を付与するのではなく、まずは役位等に応じて一定数のユニット(単位)を付与し、一定の業績評価期間(待機期間)を経た後に、目標業績や株価等の達成度に応じてユニット数を上下させ、そのユニット数に応じた株式を付与するタイプの株式報酬。パフォーマンス・シェアは当初から株式が付与されるのに対し、パフォーマンス・シェア・ユニットで業績評価期間(待機期間)を経てから株式が付与されるという点で両者は異なる。

 ・リストリクテッド・ストックは、業績や株価によって譲渡制限が解除される株式数が変動しない限り、法人税法上、「事前確定届出給与」として損金算入が可能。
・パフォーマンス・シェアは損金算入が認められない。
・パフォーマンス・シェア・ユニットは「業績連動給与」として損金算入することが可能であるが、損金算入のためには、その具体的な算定方法(例:株式報酬のトータルの上限額、役位毎の株式数または額、具体的な評価指標、株式交付数の算定式等)を有価証券報告書で詳細に開示する必要があり、企業にとってハードルが高い。

事前確定届出給与 : いつ、どれくらい(確定額、確定した株式数・新株予約権など)支給するかを“事前に”確定した上で原則として税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの。
業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。

2017年6月総会での株式報酬の導入を見送った企業も少なくない中、今後株式報酬の導入を検討する企業にとって、当面はリストリクテッド・ストックがファーストチョイスとなることも予想される。

ただし、リストリクテッド・ストックを導入する際にもいくつか留意点がある。まず、会計上のコストの問題だ。上述ののとおり、リストリクテッド・ストックは、業績や株価によって譲渡制限が解除される株式数が変動しない限り、法人税法上、「事前確定届出給与」として損金算入が可能とされる。逆に言うと、業績や株価によって譲渡制限が解除される株式数が変動する場合には損金算入は認められないことになるが、目標業績や株価に未達だった場合に“全て”の株式を没収するタイプの譲渡制限付株式報酬であれば、「業績や株価によって譲渡制限が解除される株式数が変動する」とまでは言えないことから、損金算入が可能との見解が税務当局から示されている。

もっとも、実際に全ての株式が没収された場合、そもそも役員に支払う報酬額はゼロであることから、損金算入額も発生しない。ところが、会計上は、全株式が没収された場合であっても、当初役員に交付した株式報酬額(実際に役員が手にするのは譲渡制限が解除された後であることから、役員に株式を交付した時点では、交付時点における株式の時価相当額を「前払費用」として資産に計上)のうち前払費用に残っている額を「特別損失」として認識することになる(会計上の処理の図解は経済産業省の解説「「攻めの経営」を促す役員報酬」の50~51ページ参照)。要するに、実際には役員に株式報酬を支払っていないにもかかわらず、会計上は損失が発生し、業績に影響を及ぼすということである。

もう一つの問題が、資本の安定性の問題だ。たとえ業績や株価要件を満たせず後で全額没収されることになったとしても、一旦リストリクテッド・ストックを付与された役員は、それが没収されるまでの間、議決権と配当を得ることになる。例えばはじめから達成の見込がないような非常に厳しい業績条件を課し、譲渡制限が解除される見込みがない中で大量の株式を付与するといった形で、リストリクテッド・ストックが議決権行使や配当を得るために悪用されることも考えられなくはない。また、一度付与した大量の株式を没収(=会社が取得)することになれば、上述したとおり前払費用(資産であり、自己資本の一部を構成)に残っている株式報酬額を一括して償却するため、その分自己資本が減少することになる。このような譲渡制限付株式報酬はそもそも報酬制度としての妥当性を欠いているため、報酬委員会(任意のものを含む)で容認されることはないと思われるが、投資家の中には、資本の安定性を気にする向きもある。リストリクテッド・ストックを導入する際にはこの点にも配慮する必要がありそうだ。

<取材にご協力いただいたウイリス・タワーズワトソン 櫛笥隆亮氏の連絡先>
ウイリス・タワーズワトソン ディレクター
コーポレートガバナンス・アドバイザリーグループ リーダー
櫛笥 隆亮
03-3581-6428
takaaki.kushige@willistowerswatson.com

2017/10/02 ESG情報の開示に必要な観点

GPIFから運用を受託する多くの運用機関がESG投資を標ぼうし始める中(2017年7月6日のニュース「GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)、企業側もESG情報の開示を迫られている。情報開示が少ないということは、投資家がESGの観点からの企業価値を評価をする際のディスカウント要因となるが(2017年5月11日のニュース「日本企業のESG対応、過小評価も」参照)、企業からは「ESGは範囲が広すぎて、どのような情報を開示すればよいのか分からない」という声も聞かれる。・・・

ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること

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2017/10/02 ESG情報の開示に必要な観点(会員限定)

GPIFから運用を受託する多くの運用機関がESG投資を標ぼうし始める中(2017年7月6日のニュース「GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)、企業側もESG情報の開示を迫られている。情報開示が少ないということは、投資家がESGの観点からの企業価値を評価をする際のディスカウント要因となるが(2017年5月11日のニュース「日本企業のESG対応、過小評価も」参照)、企業からは「ESGは範囲が広すぎて、どのような情報を開示すればよいのか分からない」という声も聞かれる。

ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること

この疑問に対し示唆を与えるのが、英国の大手機関投資家シュローダーがグローバル投資家を対象に実施した調査で示された結果だ。

この調査は22,000を超えるグローバル投資家を対象としたもので、1,000超の英国投資家が含まれている。英国の投資情報メディア「INVESTMENT WEEK」が9月28日に報じたところによると、ESG投資は投資家のポートフォリオを構成する要素の一部として定着しており、過去5年間で英国投資家の54%、グローバル投資家の64%がESG投資に振り向ける資金を増やしたという。さらに興味深い調査結果が、英国投資家の50%が自社の事業が環境や社会に及ぼす影響に対して積極的に取り組む企業に投資しており、40%は投資パフォーマンスよりもESGにベストな取り組みをしているかどうかを重視しているとしている点だ。

この調査結果からは、投資家は企業に利益獲得よりもESGの充実を求めているようにも見えかねないが、そうではない。INVESTMENT WEEKでは、「企業にとっていくらお金を稼ぐかと同じくらい、どうやってお金を稼ぐのかが重要である(How companies make money is as important as how much money they make.)」というシュローダーのスチュワードシップ責任者のコメントが紹介されている。すなわち投資家は、急速に社会や環境が変化する時代において事業構造を変革し、競争力・成長性を高める企業の「適応能力と繁栄能力」(シュローダーのスチュワードシップ責任者はこれを「companies’ abilities to adapt and thrive」と表現している)を測るための要素としてESG情報を重要視しているに過ぎない。

投資家にこれらの能力を理解してもらうためには、企業は、「いかに自社の事業を将来にわたって発展させるか」「いかに長期的に利益を獲得していくか」という観点から自社のESG情報を洗い出し、開示していくことが効果的と言えそうだ。例えば自社の事業に直接関わりの薄いESG情報は大胆にカットする一方で、事業を表現するビジネスモデルや事業に関わるリスクマネジメントを説明することを通じて、サステナブルな(持続性のある)成長性をアピールするのが望ましいだろう。

2017/09/30 【2017年9月の課題】非財務情報の準備

2017年9月の課題

スチュワードシップ・コードの改訂やGPIFがESG重視の運用委託方針を示していることなどを背景に、我が国の機関投資家は投資判断および議決権行使における非財務情報の重要度を高めています。
こうした中、投資家とのエンゲージメントを実りあるものとするため、企業側は非財務情報をどのような方針に基づき準備すればよいでしょうか? 有用と考えられる複数の方針を検討したうえで、自社に適したアプローチを考察してください。

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2017/09/30 【2017年8月の課題】取引相手の海外企業から保険の加入を要請されたら?:解答(会員限定)

取引相手に保険加入を求めることが“社内ルール”に

海外では、取引相手の賠償余力を担保するため、自社のリスクマネージャーや顧問弁護士が“社内ルール”として、契約書に基づき取引相手に保険加入を求めることが一般的な商習慣として定着しています。「保険」という項目自体が契約書に盛り込まれているケースも少なくありません。契約書で保険契約を求められる際には、一事故あたり(per accident / per occurrence)および保険期間中の支払限度額(annual aggregate)や、保険会社の格付け(A.M.Best社の格付けで『A-』以上等)を求められることもあります。

一方、日本企業同士のビジネスでは、例えば建設業界で、元請企業が下請企業に対し、建設現場での労災事故を補償する「労災上乗せ保険」や工事遂行中に通行人にケガを負わせたり近隣住民の財物を損傷させたことにより生じる損害賠償責任を補償する「第三者賠償保険」への加入を要請するケースや、食品会社が取引先である小売業者等からPL保険(生産物賠償責任保険)の加入を求められるケースがありますが、このような事例は特定の業界にとどまっており、一般的には、取引先から保険の加入を求められるケースはまだまだ少ないのが現状です。

PL保険(生産物賠償責任保険) : 自社の製品や商品が原因となり、他人にケガをさせる、あるいは他人の物を壊したことにより生じる損害賠償責任を補償する保険。

しかし近年、海外進出する日本企業が増加する中、様々な商取引において、海外の取引先企業から賠償責任保険をはじめとする保険への加入を要請されるケースが増加しています。このような要請に対し、日本企業はどう対応すべきでしょうか。以下で解説します。

どのような保険の契約が求められる?

まず、具体的にどのような保険の加入を求められることが多いのか整理しておきましょう。

海外企業から「契約書」によって加入求められる賠償責任保険としてよく見かけるのが、CGL(Comprehensive General Liability / Commercial General Liability)という総合企業賠償責任保険です。「Comprehensive(包括的な)」「 General(一般的な)」といった言葉のとおり、CGLは企業の事業活動に伴う広範囲な賠償責任リスクを補償する保険です。CGLの保険約款には、米国のI.S.O(Insurance Service Office=損保情報サービス機構)が提供する国際的に広く認められている標準約款(英文)が使われています。改定年によって約款の文言はもちろん補償内容も異なりますが(このため、契約書に約款の改定年の記載を求められるケースもあります)、CGLでカバーされる主な項目としては、Premises-Operation Liability(施設・業務遂行責任)、Product Liability(生産物責任)、Completed Operation Liability(完成作業責任)、Personal Injury Liability(人格権侵害責任)、Advertising Injury Liability(広告侵害責任)Contractual Liability(契約責任)、Automobile Liability(自動車賠償責任 ※後述)、Professional Liability(専門職業賠償責任・業務過誤責任 ※後述)、File-Legal Liability(失火責任)、Tenant’s Lease Liability(借家人責任)、Worker’s Compensation(労災保険)/ Employer’s Liability(使用者賠償責任 ※後述)、Additional Insured(追加被保険者 ※後述)などです。

Premises-Operation Liability(施設・業務遂行責任) : 企業が所有・使用・管理・賃借する施設に起因する事故や、企業の業務遂行に起因する事故などにより生じた賠償責任を対象とする。
Completed Operation Liability(完成作業責任) : 完成した事業や作業に基因して生じた身体障害または財物損害を対象とする。例えば、防水工事を完成させたものの工事のクオリティーの低さが原因で水漏れが生じ、工場が操業停止に追い込まれたといった場合である。
Advertising Injury Liability(広告侵害責任) : 例えば、広告内容が特定の人種差別につながってしまった場合や、誇大広告と受け取られてしまった場合により生じた賠償責任を対象とする。
Contractual Liability(契約責任) : 債務不履行による賠償責任を対象とする。
Tenant’s Lease Liability(借家人責任) : 大家に対する賠償責任を補償するもの。例えば、テナントとして入居している企業が火災を発生させてしまい、大家に賠償しなければならないケースなどが対象となる。

以下、これらのうちいくつかについて補足説明します。

Automobile Liability(自動車賠償責任)は、日本の自動車保険の対人・対物賠償と同じ補償内容となりますが、海外では企業総合賠償責任保険の一部を構成します。ただし、海外では、対人・対物賠償の限度額が「無制限」という補償は少なく、限度額も国によって異なります。ちなみに、日本でも企業総合賠償責任保険は販売されていますが、分野調整や保険商品としての認可の問題から、自動車賠償責任保険を企業総合賠償責任保険に組み込むことは難しく、自動車保険単独での販売が主流となっています。

Professional Liability(専門職業賠償責任・業務過誤)は、医療、設計、コンサルティング、ITなどの専門的な業務においてミス(業務過誤)を起こし、第三者に損害を与えたことによる賠償責任を補償するものです。E&O(Errors & Omission)保険とも呼ばれます。この保険は、文字どおり専門家の業務上のミスを補償するものです。例えば、ITシステムの開発事業者が開発したシステムにバグ等があり、それが原因でクライアントのビジネスが中断し損失が出た場合や、コンサルティング会社がクライアントから依頼を受けて実施した市場調査の内容に誤りがあったため、クライアントがビジネスをやり直すことになり、クライアントに損失が発生した場合などが補償対象となります。IT事業者向けの業務過誤保険は日本の保険会社のほとんどが取り扱っていますが、設計、コンサルティング向けの業務過誤保険は海外では一般的であるものの、日本の保険会社で取り扱っているところはまだ少ないのが現状です。

Errors : 過失
Omission : 怠慢

Worker’s Compensation(労災保険) / Employer’s Liability(使用者賠償責任)は、契約上の業務を行っている時に発生した労災事故に起因する賠償責任を補償する保険です。賠償責任額がWorker’s Compensation(労災保険)による支払額を上回る部分をEmployer’s Liability(使用者賠償責任)がカバーします。労災制度は国により異なるため、保険の内容も国によって異なることになります。最近は日本でも、精神障害がらみの労災請求件数が増加していることなどを背景に使用者賠償責任への関心が高まっており、使用者賠償責任保険に加入している企業が増えてきています。

Additional Insured(追加被保険者)とは、取引先やその関連企業、またはライセンサー等を被保険者に追加するものです。例えば日本の食品製造会社が米国で食品を販売しようとする場合、米国の食品販売会社から海外PL保険に加入するとともに、自社を補償の対象に加えるよう要請されることがあります。米国の食品販売会社を被保険者に追加することにより、その製品が原因で米国の食品販売会社が米国内で訴えられた場合、日本の食品製造会社の海外PL保険の補償対象となります。海外のPL保険では、国外の販売会社を追加被保険者として追加するのが一般的となっていますが、誰を追加被保険者とするかは、契約書で要請されている対象者との関係およびリスクの実態を把握し、さらに保険で対応が可能かどうかを個別に判断したうえで検討する必要があります。

ライセンサー : 知的財産権やノウハウなどを利用する許諾を与える者。逆に許諾を与えられる者はライセンシーという。

このほか、取引先の機密情報を扱う業務を行う場合などにおける情報漏えいによる損害を補償する保険、知的財産権の侵害を補償する保険、製品のリコールや盗難による損害を補償する保険への加入を要請されることもあります。

契約書で要請されている保険がない場合には?

では、これから取引をしようとしている海外企業からこのような要請があった場合、どう対応すればよいのでしょうか。

まず知っておきたいのは、日本と海外では保険の種類や商習慣が異なるため、海外企業から加入を要請された保険を日本の保険会社や保険代理店が扱っていないケースがあるということです。

初動対応としては、個別に保険会社や保険代理店に相談しつつ、日本国内での対応の可否を検討する必要があります。日本国内での対応が難しい場合、取引先への説明が必要になります。海外では当たり前になっている保険であっても、日本の保険会社や代理店に取扱いの経験がないor少なく、対応が難しいというケースはよくあります。特に専門職業賠償責任保険はまだ日本での取扱いがほとんどありません。もっとも、保険への加入を要請してきた海外企業も日本の保険事情に精通しているわけではないため、要請されている保険自体が存在しない場合にはその旨を伝えれば、理解してもらえることもあります。

冒頭でも触れたとおり、海外企業が取引先に保険の加入を要請する目的は、そのリスクを保険に転嫁するということに他なりません。例えば1億円の損害が発生する可能性がある場合、限度額1億円かそれ以上の限度額の保険に加入するために要する保険料は「ビジネス上のコスト」と考えているのです。実際に海外企業から要請される補償の限度額はUS$1million~$10millionが多くなっていますが、保険料はリスクや過去の事故歴、売上高等によって大きく異なります。最近では日本の保険会社も海外の保険会社の買収や提携を通じてノウハウを吸収してきているため、まずは法人の保険に詳しい保険会社や保険代理店に相談するようにしてください。

「リスクを保険に転嫁する」という発想は日本企業側にも必要です。ビジネス環境が日本よりも不安定であることが少なくない海外の企業では、思わぬ損害が発生するリスクが高いからです。今後日本企業が海外進出する際には、日本企業から取引先の海外企業に保険の加入を要請することがリスク・マネジメント、すなわち予想外の損失から自社を守るために必須の時代が来るでしょう。

2017/09/30 2017年9月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
監査等委員会設置会社のうち「取締役会の過半数が社外取締役で占めていること」との条件を満たした会社では、一部の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができます(すなわち、取締役会を通さなくてもよい)。問題文は「監査等委員会設置会社であれば、取締役会での社外取締役の比率に関係なく」という記述が誤りです。

こちらの記事で再確認!
2017/09/28 取締役会における決議事項減少に“過半数の社外取締役”要件のハードル(会員限定)

2017/09/30 2017年9月度チェックテスト

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【問題1】

事業報告と有価証券報告書の一体的開示を政府が推進しているのは、企業にとってメリットはないものの、投資家にとってのメリットが大きいことが理由である。


正しい
間違い
【問題2】

就業規則等に「部下が懲戒処分を受けたときはその上司も懲戒することがある」といった明文規定を置いていない企業であっても、部下の不祥事を起因として上司を懲戒処分に付すことは可能である。


正しい
間違い
【問題3】

コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11③(取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価、結果の概要の開示)を遵守する上場企業は、年々減っている。


正しい
間違い
【問題4】

新たに導入される収益認識会計基準の公開草案では、企業が収益を認識するのは「(財・サービスの)支配の移転」時になるため、「(財・サービスの)支配の移転」が起きていない出荷時に収益を認識することは認められなくなる。


正しい
間違い
【問題5】

役員退職慰労金は、トータルすれば同じ報酬コストでも貰い手に一時に渡る金額が大きいため、リテンションや長期インセンティブの観点からは会社にとってコスト効率の良いスキームと言える。


正しい
間違い
【問題6】

政策保有株式を持つ上場企業では、政策保有株式の議決権行使の基準をできるだけ具体的かつ詳細に定めて、コーポレート・ガバナンス報告書でその基準の内容を丁寧に開示すべきである。


正しい
間違い
【問題7】

英国では機関投資家のスチュワードシップ報告書のランク付けが公表されており、その結果を踏まえて、スチュワードシップ・コードの署名者リストから除名される機関投資家も出始めている。


正しい
間違い
【問題8】

監査報告書へKAM(Key Audit Matters)の記載を求める案に対して、監査人が訴訟に巻き込まれる可能性が高まるとして、すべての監査法人が反対している。


正しい
間違い
【問題9】

法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会は、社外取締役に認められていない「業務の執行」の範囲を明確にするための会社法改正を検討しているが、経済産業省産業組織課はそれに対して慎重な姿勢を求めている。


正しい
間違い
【問題10】

監査等委員会設置会社であれば、取締役会での社外取締役の比率に関係なく、一部の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる(=取締役会を通さなくてもよい)。


正しい
間違い

2017/09/30 2017年9月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
監査等委員会設置会社のうち「取締役会の過半数が社外取締役で占めていること」との条件を満たした会社では、一部の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができます(すなわち、取締役会を通さなくてもよい)。問題文は「監査等委員会設置会社であれば、取締役会での社外取締役の比率に関係なく」という記述が誤りです。

こちらの記事で再確認!
2017/09/28 取締役会における決議事項減少に“過半数の社外取締役”要件のハードル(会員限定)

2017/09/30 2017年9月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会は、社外取締役に認められていない「業務の執行」の範囲を明確にするための会社法改正を検討しています。この案に対して、経済産業省産業組織課は「かえって社外取締役の活動機会を制約する結果となる」ことのないよう慎重な姿勢を求めています。以上より、問題文は正しいです。

こちらの記事で再確認!
2017/09/21 社外取締役による取引先の紹介の是非(会員限定)