上場会社で不祥事などが起これば、役員は株主や株主以外の第三者または会社から損害賠償責任を問われる可能性がある。そのリスクに備えて、上場会社の9割以上で役員をD&O保険へ加入させている。特に社外取締役や社外監査役(社外役員)は、就任の条件としてD&O保険への加入を求めるのが一般的だ。
このように上場会社ではもはや当たり前となっているD&O保険だが、意外なことに・・・
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「租税特別措置」と呼ばれる税金の優遇措置(一定の条件を満たすことで税金が軽減されるもの)があるが、その中で・・・
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「租税特別措置」と呼ばれる税金の優遇措置(一定の条件を満たすことで税金が軽減されるもの)があるが、その中で多くの上場企業に利用されているのが研究開発税制だ。これは、試験研究費の総額に対し一定割合(複数の計算方法があるが、例えば、試験研究費の増減に応じて6~14%。増加率が高いほど控除率が高くなる)をその事業年度の法人税額から控除するというもの。研究開発税制は、これまでは基本的に製造業のモノづくりを支援するための制度として存在してきたが、2017年4月1日以降に開始する事業年度(3月決算企業であれば今期)からは、研究開発税制の対象に新たに「サービス開発」が追加されている(研究開発税制の詳細は経済産業省の資料参照)。サービス業を営む企業の経営陣としては、法人税負担を引き下げる(その結果、ROE(税引後当期純利益/自己資本)は上がる)効果が大きい研究開発税制の活用は検討に値する。
研究開発税制の適用対象として想定されているのは、IoT、ビッグデータ、AI等を活用した “第4次産業革命型” のサービスであり、研究開発税制の適用を受けるためには、これらのキーワードを絡めたサービス開発を意識する必要がある。ビッグデータなどは既に多くの企業が活用しているところ。自社で新サービスを開発している、あるいは開発する予定があるという場合には、それが研究開発税制の対象になる内容となっているか、チェックしておきたいところだ(対象となるサービスの例示は上記経済産業省の資料の10ページ参照)。
企業側から懸念の声が聞かれるのは、研究開発税制の対象が「“新たな”役務の開発に係る試験研究」に限定されている(租税特別措置法42条の4⑧一)という点。次々に新たなサービスが生まれる時代、世の中に存在しない「新たな役務」を生み出すのは容易ではない。しかし、ここでいう「新たな役務」とは、「その役務を提供する法人にとって」新しいサービスであればよい(租税特別措置法通達42 の4(1)-1)。つまり、他社が既に販売しているサービスであっても、その法人にとっては初めてのサービスであれば、「新たな役務」に該当することになる。また、従来から提供しているサービスであっても、新たな内容が追加されているものや、サービスの内容自体は変わらなくても、「提供方法」が従前と異なっていれば、「新たな役務」に該当することになる(同通達42 の4(1)-2)。
このように、研究開発税制の適用のハードルはそれほど高くなく、多くの企業が適用を受けられる可能性がありそうだ。
野村総合研究所
上級研究員 三井千絵
最近ある上場企業のIR担当者の話を聞いて驚かされたことがあった。
決算短信では冒頭に連絡先や決算説明会開催の有無を記載することになっているが、今年それらの項目を削った企業があり、その是非を投資家や企業のIR担当者を含め何人かで議論していたところ、IR担当者から「何が悪いのですか?そもそもあんなところに電話番号を書いて、自分に連絡されても困るんですよね」との発言があった。
上場企業のなかには決算短信に記載する電話番号をIR担当の番号ではなく代表番号にしているところもあり、アナリストや記者が電話をしても、あちこちたらい回しにされることもあると聞く。投資家側からすればとんでもないことだろうが、確かに企業側の立場に立つと、窓口を決めることはできたとしても、開示書類をもとに投資家や記者の問い合わせに責任を持って回答することや回答の権限を明確にすることは意外と簡単ではないのかもしれない。
これに対し、英国などでは「カンパニー・セクレタリー制度」というものがあり、投資家などへの問い合わせにもこのカンパニー・セクレタリーが対応している。
カンパニー・セクレタリーとは、年次報告書を編纂や株主総会の開催のほか、企業のガバナンスに関する活動に責任や、投資家(株主)に対する説明責任を負う役職のことで、英国では会社法によりすべての上場企業にカンパニー・セクレタリーを置くことが義務付けられている。大規模な企業になると、50人以上のチームになることもあるという。カンパニー・セクレタリー制度は、英国のほかにも、英国の会社法の影響を受けたカナダやオーストラリアなどの英連邦、東南アジアなど、日本と米国を除く多くの国で導入されている。
カンパニー・セクレタリーの職に就くには、カンパニー・セクレタリーの資格者団体であるICSA(Institute of Chartered Secretaries and Administrators)という協会が実施する一定の教育を受けて試験に合格し、同協会に所属する必要がある。カンパニー・セクレタリーは、資格取得後もICSAが提供する教育を継続して受け、資格を維持し続ける必要がある。英国の場合、FRC(財務報告評議会:Financial Reporting Council)がコーポレートガバナンス・コードを改定したりすると、ICSAはその都度、会員向けに教育を行う。FRC側からすれば、各企業への制度改正情報等の浸透はICSAを通じて保証されていると言ってもよい状況にある。
カンパニー・セクレタリー達も、自らの仕事にプライドを持っている。FTSE250に選定されているある企業のカンパニー・セクレタリーを務める女性は机の上に常に「GUIDANCE ON BOARD EFFECTIVENESS」(FRCが2011年に発行した実効性のある取締役会を実現するためのガイダンス)を置き、「ボードの役割とは何か、株主との関係はどうあるべきかを振り返るようにしている」と話す。この発言が示すのは、取締役(会)がどうあるべきかを理解したうえで、取締役が投資家・株主に対し「何を」「どの程度まで」説明すべきかを考えることもカンパニー・セクレタリーの職務になっているということだ。彼らのプロ意識は高く、FRCが定める開示の要求に対し「負担が重いので開示の量を軽減して欲しい」などとは言わない。前述の女性は、2015年にFRCが「クリア・コンサイス」という年次報告書を簡潔に記載するためのガイドラインを出したことに対し「投資家側も多くの企業の情報を見るのは大変だろう」と理解を示しつつも、「FRCが求める年次報告書のフレームは素晴らしいが、環境に関する開示が足りない」と指摘する。そこで、自主的に「サステナビリティ」というセクションを追加、当局が求める以上の対応を行っている。
FTSE250 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位250銘柄による時価総額加重平均型の株価指数。 文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム
また、社内・社外を問わず対応しなければならない範囲が広いのもカンパニー・セクレタリーという職務の特徴と言える。年次報告書などのレポートを作るためにはアカウンティング、HRセクション・・・等々、すべての部門とコミュニケーションをとらなければならないため、社内のことを熟知している必要がある。組織が大きくなれば部門の数も増えるため、カンパニー・セクレタリーの仕事も増える。また株主も多くなり、その変動も大きくなるため、対外的な対応業務も増加する。そして、その責任範囲は、コーポレートガバナンス・コードなどの影響により、資料作りが中心だった時代からここ20年ほどで各段に大きくなったという。「我々はビジネスとコーポレートガバナンス・コードを理解し、マネジメントと一緒にどういう情報がボードに伝わるべきか、またボードは何を知るべきか考えなければならない」と前述の女性は話す。
一方、英国ではIRのミッションは「株価を安定させること」であり、自社の理論株価と株価がかい離すれば、プレスリリースなどでそれを調整する。カンパニー・セクレタリーがこのようなミッションを担当することはない。英国では通常、IRとカンパニー・セクレタリーは別の部門となっており、IR部門のレポーティングラインはCFOであるのに対し、カンパニー・セクレタリーのレポーティングラインはCEOとなっている。
カンパニー・セクレタリーの職務の一つである株主総会の開催は、日本企業では伝統的に総務部の仕事となってきた。しかし多くの企業では、総務部の役割や担当者に求められる専門性についての明確な定義や共通の認識はないのが現状だろう。資格職であること、言い換えれば資格がなければその職務ができないということは、カンパニー・セクレタリーの仕事の権限と責任を明確にするとともに、その職務に就く者のモチベーションに大きな影響を与えているようだ。
コーポレートガバナンス・コードが導入された現在、日本の上場企業の多くで新しい役割が生まれている。各社の経営陣は彼らを尊重し、必要な教育を受ける機会を与え、権限を持たせているだろうか。彼らは「全社を代表して投資家に対応してください」と明確に用命され、リスペクトされているだろうか。日本企業の経営陣は、投資家への対応に従事する従業員、さらにはコーポレートガバナンス・コードや株主総会への対応、有価証券報告書作成などに従事する従業員の処遇や環境が十分であるか、一度考えてみるべきではないだろうか。
上場会社役員ガバナンスフォーラム編集部
決算短信・四半期決算短信については、企業と投資家の建設的な対話を促進する観点から「開示の自由度」を高めるとともに「速報」としての役割に特化するための見直しが実施され、2017年3月期、12月決算会社の第1四半期から適用が開始されている。
上場会社としては、今回の改正を踏まえ、他社が決算短信の開示内容をどのように見直したのか、気になるところだろう。
そこで本特集では、決算短信の改正内容を紹介しながら、各改正ごとに各社の開示状況や特徴的な開示事例を紹介する。
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(1)改正の概要
開示の自由度を高める観点から、従来は使用が“強制”されていた東京証券取引所が定める決算短信の様式である「サマリー情報」は「参考様式」として位置付けられ、使用を“要請”するにとどまることとされた。
【有価証券上場規程第404条】
| 改正後 | 改正前 |
| 第404条 上場会社は、事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計年度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、直ちにその内容を開示しなければならない。 |
第404条 上場会社は、事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計年度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、当取引所所定の「決算短信(サマリー情報)」又は「四半期決算短信(サマリー情報)」により、直ちにその内容を開示しなければならない。 |
(2)平成29年(2017年)3月決算会社の開示状況
すべての上場会社が参考様式をベースとした決算短信を開示しており、独自の決算短信を開示する上場会社はなかった。
ただし、以下のとおり、参考様式をベースとしつつも、一部項目を追加または削除して開示する上場会社があった。また、会計基準で定義または特定化されていない独自の財務指標(いわゆるNon-GAAP 指標)を追加して開示している会社では、その理由・意図や算出方法が説明されている。
GAAP : Generally Accepted Accounting Principlesの略で、「一般に公正妥当と認められた会計原則」と訳される。要するに日本を含む各国の会計基準のことであり、IFRSもGAAPの一つである。
①EBIT(下記の※2参照)および経常的な業績を示す指標として、非経常的な項目を調整した独自の利益を開示した会社
■日立製作所:2017年3月期 決算短信〔IFRS〕

日立ハイテクノロジーズ、日立物流においても、EBITおよび経常的な業績を示す指標として非経常的な項目を調整した独自の利益が開示されていた。いずれもIFRS採用会社であった。
②重要な経営指標であることを理由として、参考様式で例示されている「総資産経常利益率」に代えて「総資産当期純利益率」を開示した会社
■セガサミーホールディングス:平成29年3月期決算短信〔日本基準〕

総資産経常利益率 : 「利益/総資産」によって算出されるROA(Return On Assets=総資産利益率)の一つ。企業がすべての資産を利用して、どれだけの利益を上げているのかを示す。「利益/総資産」によって算出されるが、ここでは分子の利益に「経常利益」が用いられているが、「当期純利益」や「営業利益」が用いられる場合もある。
総資産当期純利益率 : 「利益/総資産」によって算出されるROA(Return On Assets=総資産利益率)の一つ。企業がすべての資産を利用して、どれだけの利益を上げているのかを示す。ここでは分子の利益に「当期純利益」が用いられているが、「経常利益」や「営業利益」が用いられる場合もある。
③自社の配当の基本方針として参考様式で例示されている「純資産配当率」に代えて、「株主資本配当率」(下記の(注)参照)を開示した会社
■ジャフコ:2017年3月期 決算短信〔日本基準〕

純資産配当率 : 「配当総額/純資産」で計算され、DOE(Dividend on Equity)とと呼ばれることも多い。純資産配当率は、分子・分母に当期純利益を乗じることで、「(配当総額/当期利益)×(当期利益/純資産)」、すなわち「配当性向」×「ROE」と分解できる。したがって、純資産配当率が高い企業とは、配当性向かROE、あるいはその両方が高いということになる。
(1)改正の概要
「一律に記載を要請する事項」「投資判断に有用な情報の追加の要請」の区分が撤廃され、決算短信で記載が要請される事項は、原則として「速報性が求められる情報のみ」となった。具体的には以下のとおり。「経営方針」や「投資判断に有用な追加情報」など、必ずしも速報性が求められない情報の記載は要請されないこととなり、「経営方針」は有価証券報告書における記載事項とされた。
ただし、「投資判断に有用な追加情報」の記載は要請されなくなったとはいえ、投資者等との対話を通じて決算短信において必要な記載内容を判断し、開示することは可能である。
<決算短信の要請事項(網掛け部分が2017年2月改正における項目名等の変更箇所)>

(2)平成29年(2017年)3月決算会社の開示状況
①経営成績に関する定性情報の項目名を「経営成績に関する分析」から「経営成績の概況」に変更した会社数は1,848社(78.8%)、「経営成績に関する分析」のままとした会社数は286社(12.2%)であった。

②経営方針
経営方針の開示が要請されなくなったことを受けて開示を取り止めた会社は全体の83.3%(1,940社)であった。

③証券取引所から開示が要請されていない項目(非要請項目)の開示
非要請項目(改正前は東京証券取引所の「投資判断に有用な情報の追加に係る要請」により開示が求められていた)の開示状況は以下のとおりであり、非要請項目の開示は減少している。ただし、開示項目の減少にもかかわらず、決算短信開示の所要日数に大きな変化は見られなかった(詳細は後述)。
| 主な非要請項目 | 平成29年3月期 | 前年同期 | |
| サマリー情報 | (参考)個別業績の概要(*) | 1,760社 (75.1%) |
1,823社 (80.4%) |
| 添付資料 | (参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移 | 1,073社 (45.8%) |
1,543社 (65.4%) |
| 連結貸借対照表関係(貸借対照表関係)注記 | 465社 (19.8%) |
912社 (40.2%) |
|
| 連結損益計算書関係(損益計算書関係)注記 | 469社 (20.7%) |
940社 (41.5%) |
|
| 連結包括利益計算書関係注記 (連結会社のみ) |
260社 (12.5%) |
591社 (28.2%) |
|
| 連結株主資本等変動計算書関係(株主資本等変動計算書関係)注記 | 378社 (16.7%) |
881社 (38.9%) |
|
| 連結キャッシュ・フロー計算書関係(キャッシュ・フロー計算書関係)注記 | 409社 (18.1%) |
875社 (38.6%) |
|
| 関連当事者情報注記 | 125社 (5.3%) |
341社 (14.5%) |
|
| 個別財務諸表 (連結会社のみ) |
550社 (26.4%) |
873社 (41.6%) |
* 個別業績の概要は、上場会社が投資者のニーズを踏まえたうえで、投資判断情報としての有用性が乏しいと判断した場合には、表題を含めて記載を省略することが可能とされている。
「3.「連結財務諸表及び主な注記」の開示時期」へ(会員限定)
(1)改正の概要
「連結財務諸表及び主な注記」は「サマリー情報」との同時開示が要請されてきたが、改正により、投資判断を誤らせるおそれがない場合には、決算短信の開示を早期化するため「サマリー情報」および「経営成績等の概況」を先行して開示し、準備が整い次第直ちに「連結財務諸表及びその注記」を開示すればよいことになった。具体的には、企業の状態を適切に理解するために有用な数値情報など、投資者が必要とする財務情報を開示することになる。
(2)平成29年(2017年)3月決算会社の開示状況
・「連結キャッシュ・フロー計算書」および「キャッシュ・フロー計算書関係注記」を除いた決算短信を先行して開示した会社
■テラプローブ
| 日付 | 開示書類 |
| 平成29年5月12日 | 平成29年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) |
| 平成29年5月22日 | (追加・数値データ追加)平成29年3月期 決算短信[日本基準](連結)の連結キャッシュ・フロー計算書について(以下参照) |

(注)当フォーラムの調査によると、「サマリー情報」および「経営成績等の概況」を先行して開示し、後から「連結財務諸表及びその注記」を開示した会社は上記1社のみ。
(1)改正の概要
東京証券取引所の上場規則は、決算情報の開示について、「決算の内容が定まった場合」には直ちにその内容を開示することを求めており、監査の終了は開示の要件とはされていない。これは、決算短信等には、事業報告等や有価証券報告書などの法定開示に先立って決算情報を迅速に開示する“速報”としての役割が求められるためである。
これを明確化するため、従来は決算短信サマリー情報の様式において「監査手続の実施状況に関する表示」とされていた部分が、参考様式では「決算短信は監査の対象外です」との記載に改められた。
(2)平成29年(2017年)3月決算会社の開示状況
参考様式のとおりに「決算短信は監査の対象外です」と記載した会社は2,204社(94.0%)、「監査手続の実施状況に関する表示」という改正前の様式の見出しを記載していた会社は22社と少数であった。

(1)改正の概要
サマリー情報の業績予想記載欄には「投資者が通期業績を見通す際に有用と思われる情報」を記載することとされ、従来の表形式・自由記載形式の区分が撤廃された。決算短信・四半期決算短信作成要領には、多様化が進む実際の記載例が数多く示されており、多様かつ柔軟な開示が可能であることがより明確化された。これらの記載例の中には、短期的な業績予想を開示せずに、中長期的な業績予想のみを開示するものも含まれている。
(2)平成29年(2017年)3月決算会社の開示状況
①業績予想の予想対象期間・開示形式
「第2四半期および通期」の予想の開示から「通期」の予想のみの開示に変更した会社が6%ほどあった。
| 平成29年3月期 | 前年同期 | |||
| 表形式 | 第2四半期および通期の予想を開示 | 特定値 | 1,668社 (73.7%) |
1,813社 (80.0%) |
| レンジ | 2社 (0.1%) |
2社 (0.1%) |
||
| 通期の予想のみを開示 | 特定値 | 571社 (25.2%) |
427社 (18.8%) |
|
| レンジ | 8社 (0.4%) |
8社 (0.4%) |
||
| その他 | 特定値 | 7社 (0.3%) |
8社 (0.4%) |
|
| レンジ | - | - | ||
| 記述形式(*) | 8社 (0.4%) |
9社 (0.4%) |
||
| 合計 | 2,264社 | 2,267社 | ||
レンジ : 「〇〇億円~〇〇億円」といった形で、幅をもって業績予想を示す場合
* 記述形式については、通期の予想のみ特定値で開示した会社が4社、通期の予想のみレンジで開示した会社が3社、第2四半期および通期の予想を特定値で開示した会社が1社であった。
②業績予想の項目名
参考様式では、「ここには投資者が通期業績を見通す際に有用と思われる情報をご記載ください。」と記載されている。具体的な項目名について明示されていないが、改正前の「平成〇年〇月期の業績予想」といった開示を踏襲するケースがほとんどであった。一方、「投資者が通期業績を見通す際に有用と思われる情報」という項目名を掲げた会社が5社あった。

③従来の表形式では見られなかった指標を追加した会社
(a)「EBITDA」
サマリー情報の業績予想において「EBITDA」を開示した会社は、オイシックス社を含め4社あった(脚注における記載を含む)。ちなみに、「EBIT」を開示していた会社は3社(全てIFRS採用会社)であった。
EBIT : 利払前・税引前利益(Earnings Before Interest and Taxes)のこと。借入れによる支払利息の影響を除いた収益力を見るために用いる。利払前・税引前の「利益」としては、営業利益、経常利益、(税引前)当期純利益などが用いられる。
(b)脚注に「ROE」
■丸井グループ:平成29年3月期決算短信〔日本基準〕

(c)中長期的な業績予想
中長期的な業績予想を開示した会社はなかった。ただし、「短期的あるいは投機的な視野に陥ることなく、中長期的な企業価値の向上を重視している」旨を記載した会社があった。
■ニッコー:平成29年3月期 決算短信〔日本基準〕

速報性を実現するため、東京証券取引所からの開示要請事項は減少したものの、改正初年度においては開示までの所要日数に大きな変化は見られなかった。ただし、今回の決算短信制度の改正のタイミングが平成29年2月と期末に近かったことから、当初から決めていた決算発表日を変更できなかった会社が相当数存在していたと思われる。来年は所要日数が短縮される可能性がありそうだ。
・平成29年3月期決算発表所要日数(東証公表資料より)
| 平成29年3月期 | 前年同期 | |
| 所要日数 | 39.3日(△0.3日) | 39.6日 |
2017年6月総会で株主提案による議案が付議された会社は40社、総議案数は212議案で、前年比ではそれぞれ3社、45議案増加となり、いずれも過去最高となったようだ。
可決に至ったのは、村上ファンド系の投資会社による株主提案ということで話題を集めた黒田電気のケース(2017年6月29日のニュース「黒田電気で株主提案の社外取が選任されるも委員会には属さず」、2017年7月3日のニュース「黒田電気と川崎汽船の明暗を分けたもの」参照)にとどまるが、黒田電気以外の会社でも、もう少し賛成票が集まれば可決された可能性のある株主提案も見られる。否決された株主提案で賛成率が40%以上のものを賛成率の高い順にあげると下表のとおりである。
〔賛成率が40%を超える株主提案の内容〕
| 会社 | 株主提案の内容 | 賛成率 |
| JPホールディングス | 取締役の任期を2年から1年に短縮する定款変更 | 62.09% ※定款変更には特別決議が必要 |
| JPホールディングス | 監査役1名選任 | 47.48% |
| スパンクリートコーポレーション | 監査役1名選任 | 45.85% |
| スパンクリートコーポレーション | 監査役1名選任 | 45.82% |
| スパンクリートコーポレーション | 監査役1名選任 | 45.77% |
| みずほフィナンシャルグループ | 剰余金の配当等の決定機関に関する定款変更 | 43% |
| りそなホールディングス | 役員報酬の個別開示に関する定款変更 | 42.94% |
特別決議 : 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の多数による決議。
(各社の臨時報告書を元に作成)
JPホールディングスとスパンクリートコーポレーションの議案が上位に来ているのは、いずれも大株主による株主提案であるため。ただ、JPホールディングスの定款変更議案と監査役1名選任議案の賛成率の15%程度の差異はこれだけでは説明できない。定款変更議案により多くの賛成票が集まっているということは、株主提案をした大株主以外の機関投資家も少なからず定款変更議案に賛成したことを示している。
ISSの「2017年版 日本向け議決権行使助言基準」を見ると、株主提案については、「合理的なコストの範囲内で、コーポレートガバナンスの改善が期待できる株主提案については、原則として賛成を推奨する。事業活動や範囲を制約するような提案や、実行に多大なコストを伴う株主提案については、原則として反対を推奨する。」としている(6ページ参照)。この助言基準からすると、ISSはJPホールディングスの株主提案のうち定款変更議案については賛成を推奨した可能性が高い。
さらにISSの助言基準では、取締役選任について、「少数株主にとって望ましいと判断される株主提案が過半数の支持を得たにもかかわらず、その提案内容を実行しない、あるいは類似の内容を翌年の株主総会で会社側提案として提案しない場合、経営トップである取締役の選任議案に対し、原則として反対を推奨する」としている。このため、JPホールディングスが来年の株主総会で、会社側提案として取締役の任期を2年から1年に短縮する定款変更議案を付議しない場合には、ISSは、経営トップの選任に反対推奨する可能性がある。
JPホールディングスとスパンクリートコーポレーションに次いで賛成率が高かったみずほフィナンシャルグループの定款変更議案の内容は、剰余金の配当等を取締役会決議で行うとする現行の定款規定を、株主総会でも決議することができるよう変更を求めるもの。この株主提案についても、ISSは賛成推奨した可能性が高く、機関投資家から多くの賛成票が投じられたものと推測することができる。
みずほフィナンシャルグループでは、合計17の株主提案(複数の株主または株主グループからの提案で、いずれも定款変更議案)が提出されているが、個別に賛成率を見ていくと、賛成率が25%以上と相対的に高いものと賛成率が10%に満たないものの2つに大きく分けることができる。賛成率が10%に満たない株主提案には、個別の取引に関連したものも散見される(例えば、下表の⑮や⑯)。コーポレートガバナンスの改善が期待できる株主提案を織り交ぜつつも、実は個別の取引等に関する意見を会社に対して訴えたいという本音も透けて見える。
〔みずほフィナンシャルグループの株主提案の内容と賛成率〕
| 株主提案(定款変更議案)の内容 | 賛成率 |
| ① 剰余金の配当等の決定機関 | 43% |
| ② 政策保有株式の議決権行使 | 27% |
| ③ 役員報酬の個別開示 | 35% |
| ④ 取締役会議長と最高経営責任者の分離 | 25% |
| ⑤ 当社従業員が国政選挙や地方議会・首長選挙等に出馬しながらも復職ができる制度の創設 | 6% |
| ⑥ 役員研修の方針と実績の開示 | 7% |
| ⑦ 株主と取締役との連絡と対応に関する規定 | 6% |
| ⑧ 株主が指名委員会に取締役候補を推薦できる仕組みと平等な取り扱いに関する規定 | 6% |
| ⑨ 100を少なくとも上限とした株主提案の招集通知等への掲載について | 6% |
| ⑩ 監査委員会における告発窓口の設置 | 6% |
| ⑪ 代表執行役を交えない社外取締役だけの経営会議開催 | 6% |
| ⑫ 出産や子育てでキャリアを中断した女性等に対する第二「新卒採用」と総合職・幹部社員等への採用枠の実施 | 6% |
| ⑬ アクティビスト投資家に対する差別的な取り扱いの禁止 | 6% |
| ⑭ 法務大臣の一連の行動に対する当社としての意見表明に関する特別委員会の設置 | 6% |
| ⑮ 石神井支店における口座凍結問題に関する特別調査委員会の設置 | 6% |
| ⑯ 特定の融資に関する特別調査委員会の設置 | 6% |
| ⑰ 日本銀行にマイナス金利政策を深堀しないように要望書の提出 | 6% |
(臨時報告書を元に作成)
さらに調査すると、みずほフィナンシャルグループの株主提案は、りそなホールディングスや三菱UFJフィナンシャル・グループにおける株主提案と類似または共通する内容が多く含まれている。すなわち、同じ株主または株主グループが複数の会社に対して、多数の類似または共通する株主提案を行っているものと見られる(*)。
このように見ていくと、2017年6月総会で株主提案を受けた会社とその議案数が過去最高を記録したといっても、株主提案権を行使する株主の裾野が広くなったわけではなく、特定の株主または株主グループが提案する対象会社さらには提案議案数を増加させたことが影響しただけとも言える。
法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、次の会社法改正に向けて、株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備が審議されている。具体的には、株主が提案することができる議案の数の制限や不適切な内容の提案の制限、株主提案権の行使要件の見直しの要否などである。制度を見直してみたものの「絵に描いた餅」に終わったということにならないよう、同部会では、現実に行われている株主提案の態様も踏まえた議論を望みたい。
2017年6月総会で株主提案による議案が付議された会社は40社、総議案数は212議案で、前年比ではそれぞれ3社、45議案増加となり、いずれも過去最高となったようだ。
可決に至ったのは、村上ファンド系の投資会社による株主提案ということで話題を集めた黒田電気のケース(2017年6月29日のニュース「黒田電気で株主提案の社外取が選任されるも委員会には属さず」、2017年7月3日のニュース「黒田電気と川崎汽船の明暗を分けたもの」参照)にとどまるが、黒田電気以外の会社でも、もう少し賛成票が集まれば可決された可能性のある株主提案も見られる。否決された株主提案で賛成率が40%以上のものを賛成率の高い順にあげると下表のとおりである。・・・
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