2015/03/31 【予算・事業計画】業績予想を公表したい(会員限定)

 

将来予測情報は業績予想だけに限られない!?

証券取引所に上場している会社は、投資家の投資判断に資するために過去の財政状態や経営成績などの情報を投資家に開示することが必要になります。もっとも、投資家としては「過去の実績」だけでなく、「今後この会社がどのように成長していくのだろうか」という将来の動向も気になるところです。実際のところ、株価には過去の業績に加えて将来の利益動向の見込みも織り込まれています。もちろん上場会社が自社の将来を正確に予知できる訳はないのですが、少なくとも投資家よりは将来見通しの根拠となる情報を多く保有しています。そこで、証券取引所の要請に基づき、ほとんどの上場会社が、「決算短信(サマリー情報)」の「次期の業績予想」および「配当の状況」にて将来予測情報を開示しています()。東京証券取引所が平成27年6月15日に公表した「平成27年3月期決算短信発表状況等の集計結果について」によると、「次期の業績予想」の開示がある上場会社は東京証券取引所の全上場会社のうち96.7%、予想値が算出可能となった時点で開示する旨を記載している上場会社は1.2%、予算の算出が困難である旨のみの記載をしている上場会社は1.7%となっています。このことから、多くの上場会社が投資家の投資意思決定に資する情報として業績予想を重視していることが伺えます。

 業績予想を公表しないことも認められています。詳細は「将来予測情報の開示方法に複数の選択肢」を参照してください。

2011年7月29日に公表された「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」(公益財団法人日本証券経済研究所)を受け、各証券取引所では上場会社に対して、将来予測情報の開示を従来決算短信で開示されてきた「次期の業績予想」(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、1株当たり当期純利益、1株当たり配当金の予想)の形式に限定することなく、それぞれの実情に応じて積極的な開示に取り組むことを要請しています。例えば、ROEやROAなどの主要な経営指標の見込みや、設備投資額や研究開発費など将来の経営成績に影響を与える負担額の見込みといった将来の見通しに係る情報の開示が考えられます。

将来予測情報の開示方法に複数の選択肢

「決算短信(サマリー情報)」の「次期の業績予想」は、自社の実情に照らして、次のいずれかを選択できます。
・「次期の業績予想」を「表形式」で開示する
・「次期の業績予想」を「自由記載形式」の様式で開示する
・「次期の業績予想」自体を行わない

「次期の業績予想」を「表形式」で開示する方法とは、通常は次期の第2四半期(累計)および通期(*1)における「売上高」「営業利益」「経常利益」「親会社株主に帰属する当期純利益」「1株当たり当期純利益」の予想値を表組みにより公表する開示スタイルのことです。この点、「表形式」の開示様式は固定されているわけではなく、例えば、外部環境等の変動が大きく年次の見通しが困難な場合や、全部または一部の項目について合理的な予想を算出していない場合など、個別の実情に応じて、開示対象項目、開示形式(*2)または開示対象期間の追加、変更といったカスタマイズを行うことができます。

親会社株主に帰属する当期純利益 : 連結財務諸表の最終利益。「当期純利益」から「非支配株主に帰属する当期純利益」(連結子会社の利益や損失のうち親会社株主以外の株主に帰属する分)を控除して算定する。

*1 開示対象期間は、後述の「開示対象期間とタイミングは?」を参照してください。
*2 特定値による開示が多く見受けられますが、上限および下限を示したレンジの形式でも構いません。もっとも、レンジ形式の開示をしている上場会社は、ごくわずかに留まります(後述の「開示対象期間とタイミングは?」を参照)。

また、「自由記載形式」の様式の場合、例えば、決算内容の開示または四半期決算内容の開示に際して、「決算短信」等の添付資料、決算補足説明資料または決算説明会資料において、将来の予測情報の開示を行っている場合には、その概要(例えば、前年度比の出荷成長率、減価償却費、販売費及び一般管理費、設備投資額など)を記載することが考えられます。なお、将来の業績を予想するのに有用と思われる情報として、定性的な記述を行うことも認められています。例えば、投資事業を行っている場合、複数の投資先がIPOを予定している旨、株式市況やIPO動向に影響を受けるため業績を見通すことが困難な旨を記載することが考えられます。

一方、「「次期の業績予想」自体を行わない」ことも認められています()。その際、業績予想を公表しない理由の記載は求められていません。また、業績予想を開示しないことについて証券取引所の承認や事前相談も必須とはされていません。

 上場会社が業績予想を開示しない場合でも、社内で「次期の業績予想」に相当する情報を管理していると、その情報が流出してインサイダー取引を引き起こしてしまう危険があります。また、機関投資家やアナリスト等につい情報をもらしてしまう(選択的開示)こともあるかもしれません。「次期の業績予想」が社内に滞留すればするほどインサイダー取引や選択的開示といった事態を引き起こす可能性が高まることになります。そこで、業績予想を公表しなかった場合であっても、業績予想を立てることができる状況になったタイミングで業績予想を公表することが望ましいです。
開示対象期間とタイミングは?

業績予想の開示対象期間(どの期間について業績予想を開示するか)に決まりはありません。各社の実情に応じて、通期のみ、通期および四半期、さらに四半期の中でも特定の四半期のみを選んで業績予想を開示することも可能です。

この点、上述の東京証券取引所が公表した「平成27年3月期決算短信発表状況等の集計結果について」によると以下の通りになっています。

第2四半期および
通期の予想を開示
特定値 1,892社
(82.7%)
レンジ 2社
(0.1%)
通期の予想
のみを開示
特定値 369社
(16.1%)
レンジ 7社
(0.3%)
第2四半期の予想
のみを開示
特定値 4社
(0.2%)
レンジ
第1四半期の予想
のみを開示
特定値 6社
(0.3%)
レンジ
第1四半期および
通期の予想を開示
特定値
レンジ 1社
(0.0%)
記述形式(自由記載) 7社
(0.3%)

業績予想の開示は、一般的には「決算発表時」に一緒に行うことが多くなっています。また、連結財務諸表作成会社では、連結財務諸表ベースで業績予想の開示を行います(個別財務諸表ベースでの業績予想を追加的に開示しても構いません)。

信頼性のある将来予測情報の算出のために必要な内部統制とは?

上述したとおり、多くの上場会社が業績予想を通じて将来予測情報を投資家に提供していますが、会社が提供する将来予測情報に“信頼性”がなければ、それは投資家にとって役に立たないどころか、投資判断を誤らせてしまうおそれすらあります。例えば、社長がトップダウンで決めた「合理的な基準に基づかない」「実現可能性の乏しい」業績予想をそのまま公表するようなケースです。そのような業績予想を信じて投資をした投資家は、実績値の公表を受け落胆を余儀なくされます。一方、会社は信用を無くし、株価は大きく下落することになります。もちろん将来のことなので予測情報に“確実性”を求めることはできませんが、最低限の“信頼性”の確保は必須です。

そこで、開示担当の取締役は信頼性のある将来予測情報を公表するための内部統制を構築しなければなりません。その一環として、多くの上場企業で導入されているのが、予算単位(例えば事業部)ごとに「合理的な基準」に基づいて作成された予算を積み上げることにより、会社全体としての総合的な予算(“総合予算”と言います)を編成する仕組みです。

以下、総合予算を編成するにあたって、取締役が留意すべき点を解説します。

1.総合予算の編成方法
総合予算の編成の方法には、以下の方法があります。

・トップダウン方式:トップマネジメントが各部門の予算をすべて決める方式
・ボトムアップ方式:部門別に予算を積み上げ、総合予算を作成する方式
・折衷方式:トップダウン方式とボトムアップ方式の折衷方式

予算をトップダウンで編成した場合、予算の編成作業が相対的に楽になる半面、現場の意見が反映されずに実態にそぐわない予算になるおそれがあります。一方、予算をボトムアップで編成した場合、トップマネジメントの方針が反映されず現状追認型の予算になるおそれがあります。そこで、トップダウン方式とボトムアップ方式の長所を取り入れた折衷方式が望ましいです。折衷方式に基づく予算編成にあたっては、トップマネジメントの意思が予算編成方針として提示され、各部門はこの方針に従い部門予算を立案し、トップマネジメントと各部門の調整を経て総合予算を策定することになります。

2.総合予算の編成手順
総合予算は各部門の予算がそれぞれ複雑に関連しあっていることから、編成手順にも工夫が必要になります。

まず、経営陣が総合予算の編成ガイドラインに基づき予算の基本方針を策定します。予算の基本方針は、会社の経営方針および総合予算の編成ガイドラインに整合するように策定する必要があります。

次に、開発・営業・生産・管理部門等の部門別に予算を策定します。その際、各部門の予算の合算が会社全体の観点から最適なものになっているかどうか検討し、会社全体の観点から最適なものになっていない場合にはトップマネジメントが部門間の調整を行う必要があります。たとえば、部門予算では部分最適(*1)であっても全体最適(*2)とは限りません。予算は全体最適となるように編成する必要があります。

*1 部門別の予算としては最適な状態であっても、それを統合した場合に全社的に最適かどうかは不明な状態を言います。
*2 会社全体の予算として最適な状態を言います。


3.予算の編成単位と利益の管理区分
予算は、各部門の目標であるとともに、各部門の業績評価の指標にもなるため、予算管理を有意義に実施するためには予算の責任の所在を明確にしておくことが必要となります。予算の編成単位は、通常、会社の組織の単位ごと、例えば、部、課単位で予算管理責任単位となります。そして、その長(部長、課長等)が予算の責任者になります。予算管理責任単位の責任者が予算の遂行に責任を持つということは、予算未達の場合に責任を負うことを意味します(予算未達時の責任については「予算が未達となってしまった」を参照してください)。なお、販売部門等のプロフィットセンターであれば、会社の利益の源泉の明確化の観点から事業別や製品・サービス、顧客別・販路別、営業担当者等の単位にブレークダウンしておく必要があります。

プロフィットセンター : それ自体で利益を生み出すことについて権限と責任を有する単位。費用にのみ権限と責任を有するコストセンターに対比される。

4.予実分析
予算は編成して終わりではありません。月次決算が締まった後に予算と実績(月次および累計)との比較分析を行い、増減理由を究明します。これを予実分析と言います。そして、予実分析の結果を、翌月以降の経営資源の配分に反映させます。具体的には、販売の落ち込みがあれば広告費を増やしたり、経費が予算を超過しそうであれば、経費削減に取り組んだりします。

在庫の増減の判断やROE・ROAの動向把握、資金繰りの分析等のために、予算損益計算書だけでなく、予算貸借対照表や予算キャッシュフロー計算書等も作成しておく必要があります。その前提として、予算の編成単位ごとに実績が集計されるとともに、財務会計と有機的に連動した管理会計の体制が整備されていなければなりません。

実績の着地見込が公表済みの業績予想と大きくかい離することが判明した場合は、業績予想の修正を公表することが必要になります(業績予想の修正については「業績予想を修正したい」を参照してください)。

監査役は、予算が会社の規程に則り策定されているか、予実分析が効果的に行われているかどうかなどをモニタリングします。具体的には、取締役会で報告される月次の業績報告や予実分析結果の内容を吟味し、必要に応じ関連部門を管掌している取締役等へのヒアリングを実施していくことになります。

業績予想と経営目標の違い

業績予想はあくまで「予想」に過ぎません。一部の投資家の間には、「業績予想は必ず達成されるべきコミットメントである」との誤解がありますが、そもそも業績予想は経営者がコミットすべきものではありません。経営者がコミットすべきは事業計画の遂行です。上場会社は、株主からの強いプレッシャーにさらされることから、事業計画を公表するとともに高い経営目標を掲げることを求められます。高い経営目標には、従業員のモチベーションを高めるという効果もあります。ただ、経営目標はあくまで社内管理のツールの一つとして社内で利用されるものであり、この“目標”を業績予想と混同しないよう注意する必要があります。

経営目標が社内向けの情報であるのに対し、上述のとおり、業績予想とは、投資家の投資判断のために提供される社外向けの情報です。経営目標を高く持ったとしても、業績予想の数値は合理的に算出されなければなりません(上述の「信頼性のある将来予測情報の算出のために必要な内部統制とは?」を参照してください)。

このように、高い経営目標を掲げるのは会社の自由ですが(ただし、あまりに目標が高すぎると、従業員の不正を誘発するおそれがあります。この点については、「予算が未達となってしまった」を参照してください)、これを業績予想値として公表したとなれば、大きな問題が生じる可能性があります。

仮に経営者が株価を変動させるなどの不正な目的で実際の予想値とは異なる虚偽の業績予想数値を公表すれば、例えば有価証券上場規程第405条に違反することとなり、その結果「上場契約違約金」(有価証券上場規程509条)を納付しなければならない、という事態を招きかねません。

また、このように業績予想を不正利用した場合には、金融商品取引法上“風説の流布”(金融商品取引法第158条)、“相場操縦行為”(同159条)に該当し、行政罰として課徴金を課されるおそれがあること(同173条、174条、174条の2、174条の3)に加え、刑事罰として、行為者には10年以下の懲役または/および1000万円以下の罰金(同197条)、法人には7億円以下の罰金(同207条)が科されるおそれがあります。

業績予想の伝達がインサイダー情報とならないための方策とは?

業績予想を伝達する際に、まず気をつけなければならないのが「インサイダー情報」です。例えば、業績予想を誤って特定の者にメールを誤送信した場合や、役員秘書がその家族に業績予想のドラフトの内容を伝えた場合など、「特定の投資家」のみに業績予想を伝達した場合、インサイダー取引等を招くおそれがあります。開示担当取締役は、業績予想情報にアクセスできる者に対して、インサイダー取引を防止するための教育を継続して実施するとともに、業績予想情報の取扱いについてマニュアルを整備して、遵守させる必要があります。

数字の“独り歩き”を防ぐには?

また、業績予想ではどうしても数字が独り歩きしてしまいがちです。そこで上場会社は、業績予想の開示に際しては、当該情報の「背景」や「前提条件」、当該情報の自社における位置付け(高めの予想なのか、保守的な予想なのか、あくまで客観的な予想なのか、)を投資家に適切に理解してもらう必要があります。

まず、将来予測情報の利用に関する注意文言()を投資家向けに分かりやすく記載します。

 例えば、「本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。」といった付記が考えられます。

また、将来予測情報の前提条件(為替レート、原油価格等の定量的情報)の変動により開示された「次期の業績予想」等の将来予測情報の値が大きく変動する可能性がある場合には、決算短信の添付資料の「経営成績・財政状態に関する分析」にて、その前提条件そのものや前提条件の変動による業績への影響度合い(感応度)を開示することで、投資家による将来予測情報の分析に資する情報の提供が可能になります。

さらに、業績予想の公表の際は、当該業績予想が監査対象になっているとの誤解を与えないような配慮が必要です。業績予想も含めて決算短信自体が、監査対象ではありません。仮に、業績予想が監査対象になっているとの誤解を与えてしまうと、情報の受け手は当該業績予想の達成を監査法人が保証しているかの誤解を与えることになります。例えば、「当該業績予想は監査法人による監査証明を得ておりません。」と記載し誤解を回避することが考えられます()。

 決算短信(四半期決算短信)の場合、監査手続の実施状況に関する表示欄が設けられており、そこで「この決算短信(四半期決算短信)は、金融商品取引法に基づく監査手続(レビュー手続)の対象外である」旨開示することが考えられます。

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2015/03/31 チェックリスト:業績予想を公表したい(会員限定)

■チェックリスト:業績予想を公表したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
将来予測情報の開示を決算短信で従来より開示されてきた「次期の業績予想」の形式に限定することなく、それぞれの実情に応じて積極的な開示に取まり組んでいるか。 主要な経営指標(ROEやROAなど)の見込みや、将来の経営成績に影響を与える財務指標(設備投資や研究開発に係る支出など)の見込みといった将来の見通しに係る情報の開示が考えられる。
開示担当の取締役は信頼性のある将来予測情報の算出のために必要な内部統制を構築しているか。 予算単位ごとに合理的な基準に基づいて作成された予算を積み上げ、折衷方式により総合予算を編成することが考えられる。
また、業績予想の修正を適時に行う体制の構築も必要になる。
経営陣は予算の基本方針を、会社の経営方針および総合予算の編成ガイドラインと整合するように策定しているか。
経営陣は部門予算が会社全体として最適なものになっているかどうかを検討し、調整を図っているか。
予算の責任の所在を明確にしているか。 予算管理責任単位の責任者が予算の遂行に責任を持つということは、予算未達の場合に責任を負うことを意味する。
販売部門等のプロフィットセンターであれば、事業別や製品・サービス、顧客別・販路別、営業担当者等の単位にブレークダウンした予算を策定しているか。 会社の利益の源泉の明確化の観点から必要になる。
月次決算が締まった後、予算の責任単位ごとに月次の予実分析を実施しているか。 分析結果は部門単位に統合され、取締役会で報告される。
予実分析の結果を、翌月以降の経営資源の配分に反映させているか。
予算の編成単位とに実績を集計しているか。 財務会計と有機的に連動した管理会計の体制の整備が必要になる。
予算損益計算書だけでなく、予算貸借対照表や予算キャッシュフロー計算書等も作成しているか。 在庫の増減の判断やROE・ROAの動向把握、資金繰りの分析等のために必要になる。
実績の着地見込が公表済みの業績予想と大きくかい離することが判明した場合は、業績予想の修正を公表する仕組みを構築しているか。 業績予想の修正については「業績予想を修正したい」を参照
監査役は、予算が会社の規程に則り策定されているかどうか、予実分析が効果的に行われているかどうかなどをモニタリングしているか。 取締役会で報告される月次の業績報告や予実分析結果の内容を吟味し、必要に応じ関連部門を管掌している取締役等へのヒアリングを実施する。
業績予想を立てることができないため公表しなかった場合であっても、業績予想を立てられる状況になったタイミングで業績予想を公表することを検討したか。 上場会社が、業績予想を開示しない場合でも、社内で「次期の業績予想」に相当する情報を管理していると、その情報が流出してインサイダー取引を引き起こしてしまう危険がある。
トップマネジメントは経営目標と業績予想を峻別しているか。 経営目標はあくまで社内管理のツールの一つとして社内で利用されるものである。一方、業績予想とは、投資家の投資判断のために提供される社外向けの情報である。経営目標を高く持ったとしても、業績予想の数値は合理的に算出されなければならない。
株価を変動させるなどの不正な目的で実際の予想値とは異なる虚偽の業績予想数値を公表していないか。 業績予想を不正利用した場合には、上場契約違反を問われ、違約金の納付を求められるおそれがある。また、金融商品取引法上“風説の流布”、“相場操縦行為”に該当し、行政罰として課徴金を課されるおそれがあることに加え、刑事罰として、行為者には10年以下の懲役または/および1000万円以下の罰金、法人には7億円以下の罰金が科されるおそれがある。
開示担当取締役は、業績予想情報の取扱いについてマニュアルを整備して、社内の関係者に遵守させているか。 インサイダー取引の回避
業績予想の開示に際しては、当該情報の「背景」や「前提条件」、当該情報の自社における位置付け(高めの予想なのか、保守的な予想なのか、あくまで客観的な予想なのか、)を投資家に適切に理解してもらうような工夫をしているか。 将来予測情報の前提条件(為替レート、原油価格等の定量的情報)の変動により開示された「次期の業績予想」等の将来予測情報の値が大きく変動する可能性がある場合には、決算短信の添付資料の「経営成績・財政状態に関する分析」にて、その前提条件そのものや前提条件の変動による業績への影響度合い(感応度)を開示することが考えられる。
業績予想の公表の際は、当該業績予想が監査対象になっているとの誤解を与えないように配慮しているか。

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2015/03/31 労働者代表選出の際にやってはいけないこととは?

 年度替わりのこの時期、「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(労働基準法第36条に基づく協定であるため「三六協定」とも呼ばれる)や、「1年間の変形労働時間制に関する労使協定」を締結する会社も多い。

 労働基準法は、労使協定を「過半数労組がある場合はその組合、過半数労組が無い場合は労働者の過半数を代表する者」と締結することを求めているが、過半数労組のない会社では代表者の選出方法がしばしば問題となるので要注意だ。しかも、この問題は「残業代の不払い」などトラブルに伴って表出してくることが多いので、たとえ労使関係が円満な会社であっても、協定締結時には慎重を期しておきたい。

 労働者代表を選ぶ際に最もやってはいけないのが、・・・

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2015/03/31 労働者代表選出の際にやってはいけないこととは?(会員限定)

 年度替わりのこの時期、「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(労働基準法第36条に基づく協定であるため「三六協定」とも呼ばれる)や、「1年間の変形労働時間制に関する労使協定」を締結する会社も多い。

 労働基準法は、労使協定を「過半数労組がある場合はその組合、過半数労組が無い場合は労働者の過半数を代表する者」と締結することを求めているが、過半数労組のない会社では代表者の選出方法がしばしば問題となるので要注意だ。しかも、この問題は「残業代の不払い」などトラブルに伴って表出してくることが多いので、たとえ労使関係が円満な会社であっても、協定締結時には慎重を期しておきたい。

 労働者代表を選ぶ際に最もやってはいけないのが、経営者や人事担当者が特定の従業員を指名することだ。誰が見ても、それが「労働者の代表」でないことは明らかだろう。では、会社が特定の従業員を「候補」として推薦して過半数労働者の信任を得ればよいかというと、これも行政通達(H11.1.29基発45号)にいう「使用者の意向によって選出された者」に該当することになるため、労働者の代表としての要件を欠く。労働者代表は、従業員間で民主的に(従業員が一堂に会しての挙手や投票でなくても、「回覧方式による投票」や「社内ネットを用いた投票」でもOK)選ばれる必要がある。

 労働者が自ら代表を選出することで、従業員の経営への参加意識を高める効果もある。これは、会社が労働者に対して期待することでもあるはずだ。

2015/03/30 長期の個人投資家増加のために運用会社に求められる役割

 投資の原理原則の1つに、「自分が分かっているモノしか投資してはいけない」というものがある。ただ、個人投資家が投資信託を購入した場合には、ある種の“ブラックボックス”にお金が入り、個人投資家には分配金の額しか見えないということになりかねない。どの会社にどれくらい投資しているのかということは報告するにせよ、数字だけ示しても個人投資家には響きにくい。

 そこで個人から投資を集める運用会社に期待されるのが、・・・

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2015/03/30 長期の個人投資家増加のために運用会社に求められる役割(会員限定)

 投資の原理原則の1つに、「自分が分かっているモノしか投資してはいけない」というものがある。ただ、個人投資家が投資信託を購入した場合には、ある種の“ブラックボックス”にお金が入り、個人投資家には分配金の額しか見えないということになりかねない。どの会社にどれくらい投資しているのかということは報告するにせよ、数字だけ示しても個人投資家には響きにくい。

 そこで個人から投資を集める運用会社に期待されるのが、投資先の企業と個人投資家とのインターフェイスを作る役割だ。運用会社は、個人投資家が投資したお金がどのような会社に投資されているのかを見える化するとともに、個人投資家がその会社に対して “手触り感”を持てるように努める必要がある。

 そのためには企業の協力が欠かせない。ところが、運用会社が投資先の企業に対して個人投資家向けのセミナーやフォーラムへの参加を依頼すると、積極的に応じてくれる企業がある一方で、断られるケースも少なくないという。断る理由としては、単に「個人投資家向けの対応はやっていない」、あるいは「情報開示の平等性の観点から問題があるので」といったものが多いようだ(言うまでもなく、インサイダー情報を話して欲しいと求めているわけではない)。

 日本版スチュワードシップ・コードや伊藤レポート、コーポレートガバナンス・コードにいう「建設的な対話」は、通常は「運用会社と企業の間の対話」を指しているが、運用会社が間に入って企業の考えを個人投資家に代弁するよりも、企業に直接自分の言葉で話してもらった方が個人投資家には伝わりやすい面もある。この場合、運用会社は企業と個人投資家の対話を促進するファシリテーターになればよい。

 個人投資家対応をやってくれないからという理由だけで、運用会社がその会社の株式を売却することにはならないが、個人投資家と接点を持つことを厭わない企業を優先的にポートフォリオに組み込んでいる運用会社もある。先般も、トヨタ自動車が初めて個人投資家向けの説明会を開催する(2015年3月29日開催)ことになり話題を呼んだが、今後は、長期投資家としての個人投資家を重視する動きが上場企業の間で広がっていくだろう。

 とはいえ、自社単独で個人投資家説明会を実施するとなればそれなりのコストもかかるため、個人から投資を集める運用会社を活用する(例えば、運用会社の開催するセミナーに登壇する)のも一手と言えそうだ。

2015/03/27 技術情報流出防止のカギとなる「抑止力」

 メーカーをはじめ技術力を売りにする企業にとって、技術情報流出の問題は悩みのタネとなっている。こうした中、今月9日には、東芝から技術情報を不正に開示した不正競争防止法違反に問われた元技術者に対し、東京地裁は「懲役5年、罰金300万円」の判決を言い渡している(求刑懲6年、罰金300万円)。裁判の行方に注目していたメーカー等の役員も多いものと思われるが、役員としてこの判決をどう評価し、社員にどう伝えるべきか考えてみたい。

 この事件は、東芝と業務提携しているサンディスクに勤務していた元技術者(日本人社員)が、NAND型フラッシュメモリ(携帯電話等の記憶媒体。小型化をめぐり国際競争が激化している)の仕様およびデータ保持に関する検査方法等の機密情報を無断に複製し、韓国の半導体製造会社であるSKハイニックスに不正に開示したというもの。この事件を受け、東芝は2014年3月にSKハイニックスに対して損害賠償(約1100億円)を求める訴えを提起する一方、元技術者は逮捕され、刑事裁判にかけられることとなった。

 東芝側の怒りは察するに余りあるが、実は損害賠償を求める訴訟提起から9か月後の2014年12月には両社は和解している。SKハイニックスが東芝に支払う和解金額は約330億円であり、賠償請求金額には遥かに届かなかったものの、日本企業が和解金として取得する額としては非常に高額である。和解に至った背景には、・・・

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2015/03/27 技術情報流出防止のカギとなる「抑止力」(会員限定)

 メーカーをはじめ技術力を売りにする企業にとって、技術情報流出の問題は悩みのタネとなっている。こうした中、今月9日には、東芝から技術情報を不正に開示した不正競争防止法違反に問われた元技術者に対し、東京地裁は「懲役5年、罰金300万円」の判決を言い渡している(求刑懲6年、罰金300万円)。裁判の行方に注目していたメーカー等の役員も多いものと思われるが、役員としてこの判決をどう評価し、社員にどう伝えるべきか考えてみたい。

 この事件は、東芝と業務提携しているサンディスクに勤務していた元技術者(日本人社員)が、NAND型フラッシュメモリ(携帯電話等の記憶媒体。小型化をめぐり国際競争が激化している)の仕様およびデータ保持に関する検査方法等の機密情報を無断に複製し、韓国の半導体製造会社であるSKハイニックスに不正に開示したというもの。この事件を受け、東芝は2014年3月にSKハイニックスに対して損害賠償(約1100億円)を求める訴えを提起する一方、元技術者は逮捕され、刑事裁判にかけられることとなった。

 東芝側の怒りは察するに余りあるが、実は損害賠償を求める訴訟提起から9か月後の2014年12月には両社は和解している。SKハイニックスが東芝に支払う和解金額は約330億円であり、賠償請求金額には遥かに届かなかったものの、日本企業が和解金として取得する額としては非常に高額である。和解に至った背景には、両社が技術研究開発について提携していたということがある。激化する国際競争の中で、長く訴訟で争うことによるリスクが懸念されたのだろう。両社は今後提携分野を拡大することも発表、SKハイニックスとの民事的な争いは終結した形となっている。

 一方、対元技術者の刑事裁判は上述のとおり今月9日に判決が出たものの、元技術者は判決を不服として即日控訴しており、裁判はまだ当分続くものと見られるが、ひとまず「懲役5年、罰金300万円」という判決について評価してみたい。

 現行の不正競争防止法が定める刑は「懲役10年以下、罰金1000万円以下(個人の場合)」となっている。これは他の経済犯罪と比べてもバランスのとれたものだが、今回の判決では裁判長が「極めて悪質な営業秘密の開示」としたにもかかわらず、懲役も罰金も上限が適用されたわけではない。ただ、これまでの不正競争防止法違反の判例を見ると、実刑判決が出ること自体極めて稀であり、罰金の過去最高額も200万円にとどまっている。その意味では、今回の「懲役5年、罰金300万円」という判決は異例と言える。

 では、今回の判決は「厳しすぎる」のだろうか?元技術者が情報を開示した見返りとして受け取ったとされる報酬は年間数千万円にのぼり、別途高級マンションや車も与えられていたという。また、量刑は「被害額」をベースに検討されるのが一般的であり、SKハイニックスが支払う和解金額が330億円であることに照らしても、300万円という罰金額が不当に高いとは考えられず、執行猶予が付かないことも、量刑相場から考えれば何ら不思議はない。要するに、今回の判決は「決して厳しすぎるものではない」と評価してよい。

 むしろ、東芝が被った損害を考えれば、1000万円という罰金の上限額は低すぎるようにも見える。今回の事件に限らず、日本企業のエンジニアが新興国の企業に情報を開示した際の報酬は「数千万円~数億円」とも言われる中、個人への損害賠償請求が現実には難しく、現在の状況はいわゆる“やり得”の状態にあるのではないかとの指摘もある。

 こうした中、昨年から不正競争防止法の見直し議論が行なわれており、今月(2015年3月)には、刑罰を大幅に引き上げる改正法案が閣議決定され、国会に提出されている。具体的には、罰金は「2000万円以下」に倍増、技術が海外に流出した場合にはより悪質性が高いとして「3000万円以下」となる。また、情報の開示先等から受領した不当な収益・報酬も没収される。罰金額の引き上げにとどまらず、報酬等の没収の規定を新設したことで、抑止力の大幅な向上が期待される(なお、懲役刑は変更なし)。

 どんな人間にも「魔が差す」ということはあり得る。技術情報流出を防ぐには、それが発覚した場合に負う責めの重さを社員に認識させることが大きな効果を持つ。今回の実刑判決と不正競争防止法の罰則強化はその絶好の機会であり、社内研修を実施するなどして、社内でしっかり情報共有しておきたいところだ。

2015/03/26 (新用語・難解用語)デュポン式

 ROEの分解式。米国の化学会社デュポンが経営分析に使っていたためこう呼ばれる。

 ROE(Return On Equity=株主資本利益率)は「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるが、デュポン式ではこれを下記のように分解する。

ROE=(純利益/売上)×(売上/資産)×(資産/自己資本)

 ※「売上」と「資産」は分母と分子に1つずつあるため、これを相殺すれば「純利益/自己資本」が残り、一般的なROEの計算式と等しくなる。

 伊藤レポートで、グローバルな投資家と対話する際の最低ラインとして、「8%」を上回るROE(Return On Equity=株主資本利益率)に各企業はコミットすべきとされたことなどにより、ROEの目標値を設定する上場企業が相次いでいるが、こうした中、「ROEを高めるには分母を小さくすればいい」という声をよく耳にするようになった。

 確かに、配当を増やすか自己株式を取得することにより自己資本を減少させれば、ROEは上昇することになる。ただ、そもそもROE向上に関する最近の議論の趣旨は日本企業の「稼ぐ力」のアップにあるはずであり、株主還元のみによってROEが上昇したとしても、稼ぐ力が変わっていなければ本末転倒と言える。

 このように株主還元に注目が集まるのは、上述のとおりROEが「純利益 ÷ 自己資本」という“割り算”によって算出されるとの理解が一般的になっているためである。しかし、株主還元ばかりに頼ったROEの向上という思考に陥らないためにも、経営陣にはデュポン式、すなわち“掛け算”によるROEの算出をお勧めしたい。

 デュポン式における「純利益/売上(売上高純利益率)」は稼ぐ力(売上に対してどれくらい利益があるか)を示す(東証第一部・第二部の平均は・・・

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2015/03/26 (新用語・難解用語)デュポン式(会員限定)

 ROEの分解式。米国の化学会社デュポンが経営分析に使っていたためこう呼ばれる。

 ROE(Return On Equity=株主資本利益率)は「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるが、デュポン式ではこれを下記のように分解する。

ROE=(純利益/売上)×(売上/資産)×(資産/自己資本)

 ※「売上」と「資産」は分母と分子に1つずつあるため、これを相殺すれば「純利益/自己資本」が残り、一般的なROEの計算式と等しくなる。

 伊藤レポートで、グローバルな投資家と対話する際の最低ラインとして、「8%」を上回るROE(Return On Equity=株主資本利益率)に各企業はコミットすべきとされたことなどにより、ROEの目標値を設定する上場企業が相次いでいるが、こうした中、「ROEを高めるには分母を小さくすればいい」という声をよく耳にするようになった。

 確かに、配当を増やすか自己株式を取得することにより自己資本を減少させれば、ROEは上昇することになる。ただ、そもそもROE向上に関する最近の議論の趣旨は日本企業の「稼ぐ力」のアップにあるはずであり、株主還元のみによってROEが上昇したとしても、稼ぐ力が変わっていなければ本末転倒と言える。

 このように株主還元に注目が集まるのは、上述のとおりROEが「純利益 ÷ 自己資本」という“割り算”によって算出されるとの理解が一般的になっているためである。しかし、株主還元ばかりに頼ったROEの向上という思考に陥らないためにも、経営陣にはデュポン式、すなわち“掛け算”によるROEの算出をお勧めしたい。

 デュポン式における「純利益/売上(売上高純利益率)」は稼ぐ力(売上に対してどれくらい利益があるか)を示す(東証第一部・第二部の平均は4.3%)。「売上/資産(総資産回転率)」はどれくらいの資産を使ってその売上をあげているかという、いわば“回す力”を示している(東証第一部・第二部の平均は1.1回)。最後の「資産/自己資本(財務レバレッジ)」は、自己資本の何倍の資産を有しているのか(東証第一部・第二部の平均は3.3倍)、すわなちいかに負債をうまく使って事業規模の拡大を図っているかを示す。つまり、ROE(東証第一部・第二部の平均は7.4%)は、「稼ぐ力」「回す力」「レバレッジ」の掛け算によっても計算できるということだ。

 稼ぐ力を高めるという視点を持てば、値引き合戦による売上拡大にブレーキがかかり、回す力を高めようとすれば、売上拡大効果が弱い非効率な投資は減るであろう。また、レバレッジを意識すれば適正なDEレシオについて真剣に検討することになるだろう。このように、“掛け算”によるROEの算式の構成要素はそれぞれが経営上重要な意味を持っている。ROEに関する議論は常にこの算式を念頭に置いて行えば、経営陣の意識改革にもつながるはず。一度実践してみてはいかがだろうか。

DEレシオ : 「デット(Debt=負債)エクイティ(Equity=株主資本)レシオ」「負債資本倍率」とも言われ、有利子負債÷株主資本により算出される。負債(Debt)が株主資本(Equity)の何倍あるのか(有利子負債等がどれだけ株主資本でカバーされているか)を示し、財務健全性の分析に活用される。一般的には1倍以下(つまり、有利子負債等の全額を株主資本がカバーしている状態)を下回ると財務健全性が高いとされる。