会社法上、取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行うこととされているが(会社法369条1項)、最近の株主総会では取締役会への出席率が低い社外取締役の選任議案に反対票が投じられるケースが増えているように(2018年7月20日のニュース「社外役員選任議案に対する投資家の議決権行使スタンスが厳格化」参照)、コーポレートガバナンスの観点からは、全取締役が取締役会に出席するのが望ましいことは言うまでもない。とはいえ、コーポレートガバナンス・コード原則4-8が社外取締役の2名以上の選任を義務付けたことによる社外取締役の増加や、事業展開のグローバル化に伴う取締役の海外出張・赴任の増加などにより、毎月の取締役会の現場に全取締役が顔を揃えることは容易ではなくなりつつある。
こうした中、遠隔地からでも取締役会に参加できるようテレビ会議や電話会議システムを導入する企業は多い。取締役会の議事録の記載内容について定めた会社法施行規則に「取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」(会社法施行規則101条3項一号)とあるように、会社法は、取締役会の現場に全ての取締役がいることを求めているわけではない。この規定を前提に、法務省はTVや電話を使って取締役会に参加することを認めているのも周知のとおりだ(TV会議については法務省民事局参事官室が平成8年4月19日付で公表した「規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」、電話会議については平成14年12月18日付け民商3044号民事局商事課長回答「電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について」参照)。このうち電話会議システムでは、「出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態」であることが求められている。要は、取締役会の現場にいる取締役の一人がその場にいない取締役会に電話して意見を聞きながら議事を進めるのはNGだが(平成23年8月9日福岡地裁判決)、スピーカー機能を利用した電話会議であれば、この要件を満たすことになる(TV会議についても同様の要件が求められているが、通常は要件を満たすことになる)。また、TVや電話を使って取締役会を行う場合には、この要件が満たされていることを議事録でも表現する必要がある。例えば審議に入る前には「議長は、審議に先立ち、TV会議システム(or電話会議システム)により、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態にあることを確認した」、審議の終了時には「本日のTV会議システム(or電話会議システム)を用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了した」といった記載だ。
ここまでは既に多くの経営陣が知っているものと思わるが、会員企業から疑問の声が寄せられたのが・・・
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